第5話 秘策

「フレイムッ‼︎」


「…っ‼︎⁈ま、魔力障壁っ!」


試合開始の合図と同時に幸は下がりながら火属性魔法を放ち、それを悠馬が魔力障壁で防ぐ。

障壁は襲い来る炎を数秒押しとどめるが徐々にひび割れ始める。


(不味い…っ──回避っ‼︎)


悠馬が横に跳ぶと同時に障壁が砕け、先刻まで悠馬がいた場所を炎が通り過ぎる。


《「桜田君は立ち回りが上手いですねー、魔法を放つと同時に久遠君から大きく距離を取りました。遥先輩、解説を…」

 

「了解です、基本的に魔法は遠距離攻撃が多いですから相手と距離を取らないと魔法本来の威力を引き出せません。普通は魔法の撃ち合いになるのを嫌って適度に距離を取るのが一般的ですが、桜田君は自分の方が久遠君より総合的な魔法技能は上だと判断し、仮に魔法の撃ち合いになっても勝てると思った為大きく距離をとったのでしょう。」》


「アイスショット!」「ランドショット!」


「くっ…!」


幸が次々と魔法を放ち、それを悠馬が紙一重で交わし続ける。

お互いに未だ有効打はなく一見勝負は均衡しているように思えるが、どちらが有利なのかは誰の目にも明らかだった。


《「久遠君、避けますねぇ…!しかし桜田君が距離を取り続けるせいで攻撃に移る事ができません‼︎このまま終わってしまうのか⁈」

 

「ユウく…久遠君の魔力障壁が通じない事はもう分かっているので避け続けるしかないのですね…久遠君も一応魔力弾丸を使えはしますが、なんとかして距離を詰めたい所ではありますね。」》


「あーっ、ちょこまかと逃げやがって…これで終わりにしてやらぁっ‼︎」


痺れを切らした幸はそう叫ぶと両手を前に突き出し、集中し始める。

すると左手には炎が、右手には氷が渦巻き始め、超高出力のエネルギーへと変わっていく。


(くそっ…、これは…‼︎)


《「「合成魔法⁈」」》


合成魔法とは異なる2属性の属性魔法を同じ威力で同時に発動する事で2つの属性を併せ持つ魔法を発動する高等技術である。


(アレを使えば…でもっ…)


合成魔法の準備をする幸の姿を見て、悠馬は焦っていた。

悠馬には遥も知らないがある。

ソレを使えばこの試合は乗り切れるかもしれない。

だが悠馬の秘策は蓋を開けてしまうとただの初見殺しなのでここで使えば次の試合からはきっと対策されてしまうだろう。


(でも俺は、勝つって決めたんだ…!まずここで勝たないと次に進めない‼︎)


悠馬は覚悟を決めた。

何をしたのか出来るだけ知られたく無い為小声で詠唱を済ませる。

本来こういう場合は詠唱破棄をするのだが悠馬にはまだその技術がなかった。


「吹き飛べぇっ‼︎ブリザードフレイ…」


火と水、多少手間取りながらも2つの属性の合成を終えた幸が魔法を発動する事は無かった。

否、発動する事ができなかった。

魔法は遠距離攻撃、と言われる理由は遠距離の方が本来の威力を出す事が出来るからだけでは無い。至近距離の敵に対して高威力の魔法を発動してしまうと、術者自身も巻き込まれてしまう可能性が高いからだ。


幸が魔法を発動出来なかった理由は──敵が至近距離にいるからだった。

今この瞬間、悠馬は幸の目の前にいた。


(何が起きた⁈なんでアイツは俺の目の前にいるんだ‼︎⁈先刻まで…70mは離れてただろうが…‼︎)


《「な、何が起きたんでしょうかっ⁈久遠君が桜田君の目の前にいる⁈は、遥先輩、何か知ってるなら教えてくださいよ⁉︎」


 「…知らない。」


 「は…⁇」


 「私もあんなの知らない!」》


突然攻勢に出た悠馬にざわつくスタンド席と解説席。


(固有魔法…?いや、悠馬君に固有魔法がないのは確実…なら…いや、まさか…)


(ユウ君…まさか貴方、アレを…会得してたの⁈)


それぞれ悠馬が一瞬で距離を詰めた方法を考える遥と蒼歌。


(いける…っ!このまま…押し切る‼︎)


そして2人がその答えに辿り着いた瞬間、悠馬は攻撃体勢をとりながら再び秘策を発動した。





「身体強化、













(作者)予約投稿してた筈なだけどな…でもミスはミスなので二話投稿です、、

    気づくのが遅かったのは本当にすみません…

    再発防止に努めます‼︎





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