第4話 競魔会一回戦第三試合
《一回戦第三試合、久遠悠馬君と
アナウンスに従い悠馬は歩き出す。
(勝てるかな…)
悠馬と幸がフィールドに姿を表した瞬間スタンド席から歓声が上がる。
しかしその歓声が自分に向けられた物ではない事に悠馬は気づいていた。
(…やっぱり俺の事応援してくれる奴なんて…)
しかし
「悠馬ぁっ‼︎ファイトー!」
驚いて声がした方を見ると茜がぴょんぴょん跳ねながら必死に声を出していた。
───そっかー、まあ私に協力出来ることあったら言ってよ。
───私が…貴方の事、強くしてあげる。
(そっか、そうだよな…)
脳裏に浮かぶ2人の言葉。
茜が、遥が、自分の事を応援してくれている事に今更ながら気づき悠馬は気を引き締める。
(勝てたらいいなじゃない…、勝つ!)
悠馬が入場して来た時、久遠遥は解説席に座っていた。
解説席からはフィールドが斜め上から一望でき、そんな特等席に遥が座る事が出来ているのは前の年の総合優勝者が今年の1、2年生の部の試合解説担当になっているからであった。
(ユウ君…)
遥が心配そうに悠馬を見ていると隣から声をかけられた。
「遥さん…悠馬君なら、きっと大丈夫ですよ。」
「あ、蒼歌ちゃん」
遥が隣を見ると声の主は2年生の
遥が蒼歌の名前を知っていたのは蒼歌が悠馬の幼馴染、千島茜の姉であるから。
そして、「遥が去年の競魔会2年生の部決勝戦で戦った相手」だからだ。
遥の固有魔法と蒼歌のソレは相性最悪だったとは言え、遥が当時一年生だった蒼歌に追い詰められたほどの実力者で、遥と蒼歌は友達でありライバル関係である。
(もし蒼歌ちゃんと今年戦ったら…勝てないかもね…)
「蒼歌ちゃんも解説に呼ばれたの?」
「いえ、私は放送部の仕事で実況ですね。ここからはよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。」
蒼歌のここからはよろしくには「今年も勝ち上がってそっちに行くからよろしく」という意味も込められており、それを正確に読み取った遥も「解説も試合もよろしくね」という意味を込めてこちらこそよろしくと返す。
蒼歌がニコッと微笑むと遥も微笑み返す。
「では…そろそろ試合も始まりそうなので私達も始めましょうか。進行は私がするので遥さんは主に試合が始まってからをお願いしますね?」
「うん、私達も楽しもうね!蒼歌ちゃん!」
「もちろんです!では…行きますよ?」
そう言うと蒼歌は放送機器を操作し、マイクの電源を入れ…
《「大変お待たせしました。ここからの実況は私、千島蒼歌と解説は…」
「私、久遠遥が務めさせていただきます。」
「「よろしくお願いします!」」》
「うおおおっ‼︎マジか⁈ミネ高ツートップが実況解説やるとか…」
「遥先輩⁈本物だぁ‼︎‼︎」
会場が今日一番の歓声に包まれる。
《「では遥先輩、第三試合の組み合わせですが…久遠悠馬君!先輩の弟さんですね。」
「そうですね、自慢の弟です!!」
「手元のデータによると悠馬君は固有魔法が無いという事ですが…」
「……大丈夫だと思いますよ?ユウ君…コホン、悠馬君は強いですから。」》
自慢の弟の辺りで会場に笑いが起こるが、固有魔法がないという情報に別の意味でざわつく会場。
蒼歌がやってしまった…と世界の終わりの様な顔をしながら遥を見ると、遥は大丈夫だよとジェスチャーで返事をする、しかしその顔は笑っていなかった。
《「えーっと、では蒼歌ちゃん、もう1人の紹介をよろしくお願いします。」
「そ、そうですねっ!悠馬君の対戦相手は桜田幸君ですね、データによると…風以外の3属性の属性魔法を使えるみたいです、今の段階で3属性は多いですね〜」
「合成魔法を使えるかどうかで強さは天と地ほど違いますから、その点も楽しみですね。」
「では、紹介も終わったところで、フィールドの方の準備も終わったようです!それでは」
「「第三試合、スタート‼︎‼︎」》
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