着ぐるみの中
@J2130
第1話 売り切ります!
着ぐるみの中に入ったことはありますか…
私が勤めていたベビー用品メーカーでは当時、年に一度ファミリーセールをやっていました。
退職してから数年たちますが、今はやっていないみたいです。
旧品とかね、東京モノレールの流通センター駅近くの倉庫で販売をしていました。
社員総出で、僕もシステム室時代にはレジ打ち、袋詰めとかやっていました。
商品説明は営業さん、開発さんが担当します、難しいですから。
事務方の我々は誘導とか受付とか大半はレジ担当でした。
物流に移ってからは搬入搬出担当で、会場にはほぼ入りませんでした。
かなり安く販売をしていましたので一般の方にも人気の企画でしたね。
僕も娘が小さかったころ
「このジュニアシート欲しい」
「おもちゃ欲しい」
「この服欲しい」
「風船ほしい」
と言っておくと
「はい堀ちゃん持ってきな」
とっておいてくれます。
お代…払ったりもらってくれなかったり…。
かわいいさかりの娘を連れていくともっとあからさまです。
「堀さん! これ娘さんにあげて!」
「お嬢さんかわいいね! この服似合うよ! 袋につめておくからね」
「おいでおいで…、ほ~らお姉さんがこれあげるね」
とひとまわりもすると娘の小さい両手にはおもちゃやら服やら帽子やら…。
お代…払ったりもらってくれなかたり…。
物流に行ってからはなんとなくわかります。
売れ残りを持って帰るのは大変なんです。
搬入も搬出も物流がトラックを手配しますが、搬出がよめないのです。売れ残りがよめないのです。
「ねえ、帰りさ…何台手配する…?」
今回のファミリーセールの担当者、村上さんに訊いてもね、彼は勇ましいので
「売り切りますよ! 大丈夫っすよ!」
としか言いません。
僕がシステム室時代にも、そして物流に異動してからも付き合いのある営業さんだけど、
「なあ、村上さんが大丈夫って言って大丈夫だった記憶がないんだがな…」
と応えても
「大丈夫っす、でも什器やプラカードやそういったものを積むトラックだけ手配してください」
なんて言います。
「堀…! 什器用と返品分、4tトラック2台用意しておけ…」
物流のベテランの野沢さんに指示されました。
結果としてはね、それで正解でした。
村上さん、勢いはいいんだけれどね。
持って帰るより、売り切りたいのです。
もしどこかのファミリーセールに行かれるのでしたら、
物を選びたいなら早めに
安く買いたいなら
晩めがねらい目です。
投げ売りします。
「これ、2個で300円、3個で300円、4個で300円!」
レジで
「これ4個300円て言われました…」
と閉店間近にお客様に言われます。
「は~いわかりました!」
僕も調子がいいのでね。
隣にいた開発のTさん
「このおもちゃ…4個で300円…。俺が開発したのに…」
小さい声で嘆いていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます