初恋について
「金色の鳩」で中学生の初恋を書きましたが、わたしは大人になってからいくつ恋を重ねても、そのたびごとに「初恋だわ」と思っておりました。
だって、そのひととは、あらゆることが初めてだから。
そして、過去の恋愛は消去して新しい恋を始めることにしていたから。
恋の始まりはいつも、全部吸い込まれてしまうような胸が鷲掴みにされるような、そういう感覚があった。あの感覚は恋でしか得られない。あの感覚のたびに「初恋」認定していた。それはとても幸福な感覚だった。
しかし、中学生の本物の(!)初恋を描いて、そうそう、こういうのがほんとうの初恋だよな、としみじみ思い、何度目の恋でも「初恋」だの「処女の気持ち」だの言っていた、自分を殴りたい気持ちになった。過去の恋愛を消去した気持ちになっていても、それはあくまでも蓋をして鍵をかけただけのことで、完全なる消去はありない。したがって、こころも軀もその先の記憶があるのだから、完全なる初恋にはなるはずもないのである。
初恋、いいなあ。
あの感覚はもう感じることはない。
ある年齢でしか得られない感情ってあるんだな。
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