第16話 思惑(感染する『どうしてこうなった!?』)
日本の
その大通りから二つも三つも離れた通りを、たった一人の女性が歩いていた。
周りは背の高い灰色の外壁に囲まれ、夕方に近い今は日の光さえ満足には届かない。そして入り組んだ構造や繋がる道の少なさから、人の気配や機械さえ全くと言っていいほど存在を感じられない。
まるで世界から切り離されたが如く、そこは侘しい通りであった。
そんな中、女性は一つのビルの前で足を止めた。
周囲にあるのは高層ビルばかりだというのに、そのビルは四階までしか作られていない。そのデザインは古めかしく、周りとのギャップが大きく感じられる。特にドアなどは、信じられない事に木材が使われているようだ。それはもう古めかしいなんてものではない、骨董品の類である。
そんなドアを、女性は何の躊躇いもなく手前に開き、カランとベルが鳴るのを聞きながらビルに入った。
「予定より8分早いですね。
「あらー、おばあさまだってわかってるくせに。私だって気持ちが逸る事はあるのよー」
薄暗い室内にはカウンターといくつかの机が置かれ、カウンターの奥には酒瓶の並んだ棚が備え付けられていた。
その内装は、所謂バーと言われるものだ。尤も、客が入ることはそうそうないだろうが。
「おばあさま、ですか。一応私は貴方の母親なのに」
「あらー? 私の約1.77777778倍の年齢なんだから、おばあさまで良いと思わない?」
「見た目はそう違わないでしょう?」
「だからこそよ。80歳のおばあさまが私と変わらない見た目なんて、普通は考えられないと思わないかしら」
法雨はカウンターの向こうに居た女性の前に腰を落ち着ける。
女性からは、ベリー系の甘い香りがした。
「少し前までは“お母様”と呼んでくれていたのに」
「あらあら、そんな前のこと忘れてしまったわ」
「それに見た目のことならば、法雨だって十分若すぎると思いますけどね」
「当然よー。桜華おばあさまの娘なんだもの」
「法雨もいずれ、子供達に“おばあさま”と言われるかもしれませんね」
「ならきっと私が死ぬ頃には、おばあさまは“妖怪”と呼ばれてるわね」
法雨の言葉に、桜華はクスリと笑った。
「それはそれでおもしろそうです。でも、私は法雨を産む前から“化け物”と呼ばれていましたからね。別に法雨が死ぬのを待つ必要はないようです」
「……本当に、おばあさまにはこの手の皮肉が効かないわね」
「まあ、長く生きているとそういう経験が増えますから」
弁舌では分が悪いと悟った法雨は、いつものふわふわとした笑みではなく、ぷっくり膨れた頬で不満を示した。
そんな法雨に対し、桜華は作っていたカクテルを出す。
「……シンデレラ。おばあさまはいつもこれを出すわね」
一口味わってから、法雨は零した。
「私がこれを出すのは、今では貴方だけですよ。それに、アルコールを取って話すことでもないでしょう?」
そう言って、桜華は聞きの体勢に入る。
法雨もゆるふわっとした空気を消し、何処か鋭さを思わせる表情を作った。
「おばあさまは何故、真宵ちゃんをアラヤに送れなんて急に言ってきたの?」
「娘の自立を願っていたのは、貴方の方だと思っていましたが」
「こんな形じゃなくても良かった。真宵ちゃんならどんな場所でも、その力を振るえたはずよ。それこそ、歴史に残る偉業でさえも簡単に」
法雨の言葉に、桜華は頷く。
「確かに、あの子なら可能でしょう。いや、歴史的偉業ですら役不足かもしれない。解放戦力という“機能”が広まったこの世界で、真宵の『叡智』と『演算力』はまさに神智の泉。たとえ解放力に関わらなくとも、星々に海に人を導けるかもしれない」
「真宵ちゃんがその気になればだけどね。……だから、危ない場所にわざわざ身を投げる必要なんて何処にもなかった」
「違う?」と続いた声に、桜華は首を軽く振った。
「いいえ、違いませんね。ただ安寧のままに生きるだけなら、わざわざアラヤに行く必要はなかった」
その答えに、法雨は身を乗り出した。
「だったら何故、日本アラヤのトップを使ってまで真宵ちゃんをアラヤに行かせたの? 人の道を決めるのはおばあさまが嫌うことのはずでしょう?」
「ええ、私は使命や定めを否定しませんが、レールをこれみよがしに敷くのは個人的に好いません」
「だったら何故?」
「真宵はレールの上を歩くのではありません。人捨てた者に、人の証明をするのです」
「誤魔化さないで。真宵ちゃんは私の娘よ。おばあさまだからって私の家族に手を出すなら……容赦しないわよ」
いつものふわふわ感など何処にもない、法雨の顔には決意の浮かんだ瞳が一際輝いている。
それに対し桜華はふわりと笑い、前に出ていた法雨の額を指でツンと突いた。
「ふふ、可愛い娘家族を傷つけるようなことはしませんよ。そんなことをしなければならないのならば、私は私を幽閉するかもしれません。ほら、法雨もそんなに力を入れては、可愛い顔が怖くなってしまいますよ」
「む、扱いが子供みたいねー」
「私にとっては、赤子みたいなものですよ」
体を引いた法雨に、桜華は変わらぬ笑みを向ける。
「……真宵は、“麻上の系譜”の使命を果たさなければなりません」
少し間をおいて、桜華はそう言った。
「全能者の血筋たるがために、麻上の系譜は偉業を成さなければならない。法雨だって偉業を成したでしょう? 真宵の偉業は、それよりも重いものであるというだけです」
「……一体、どんな偉業を成すというのかしら」
その問いに、桜華は少しだけ遠くを見るような目をした。
「予言に名高き三つの滅び、その克服」
「何ですってっ!?」
法雨が椅子を倒しながら立ち上がる。
桜華の言葉には、そうさせるだけの力があった。
「そんなこと真宵ちゃんにはっ……!」
「それだけではありません。それは最低条件であり、真にあの子が立ち向かうべきはもっと強大な運命です」
「三つの滅びより強大な運命なんて……」
「ある。私はそれを止めるために数十年を費やし、しかし変えられなかった運命」
それは神ですら避けられぬ終わり。
三つの滅びすらその運命に比べれば生易しく、たとえ世界や真理を以てしても争うことは叶わない。
三つの滅びは人類の終焉を齎す。だがその運命は、世界そのものを真理ごと無に還す。
絶対不変の運命であり、万物万象有相無相の全ては従う以外の選択肢を持たなかった。
「でもあの子が生まれた瞬間、世界は希望を得た。お姉ちゃんの言っていた可能性が、確かに存在を許された」
それがどれほそか細い道筋であれ、導きの星は確かに見ることを許されたのだから。
「《終端に拝する黒》、それが真宵が挑む、この
ならば、それに縋るしか道はないのだ。たとえ縋る者が、全能者であったとしても。
†††††
「……バックストーリーは完璧やな」
アラヤの医療施設の一室にて、神谷ミアは寝転がっていた。
ミア自身はこんな所で時間を無駄にしたくないと主張したが、スコア4を使ったオペレーターには一定期間の療養が義務付けられているのだ。尤も、アーツマスターである
だが、ミアもただ惰性で時間を潰しているわけではない。手にした端末には、とある人物についての
「ミアちゃん、入るわよ……って、まだ調べてるの?」
ノックもせずに部屋に入ってきたうえには目もくれず、ミアは画面に集中していた。
「ほら、とうがら種も買ってきたから、少しは休んで」
「お、悪いな。これがないと頭が回らん」
うえから受け取った袋を開け、中から取り出した黒い種のようなものを噛み砕く。
「カーーっ、脳天に突き抜けるような辛味。冴えるわ」
「それ、罰ゲーム以外で食べてるのミアちゃんだけよ。口にしたら三日は味がしない劇物なのに、ミアちゃんの舌はどうなってるのかしらね」
「細かい文字追っとると、これが欲しくなるからな。ま、酒もないんやったら控えるんやけど」
「それで、半日かけて集めた情報はどうかしら」
ミアはとうがら種をガリッと噛み砕きながら、端末に視線を落とす。
「そうやなぁ……家族構成についてはわかるんやけど、親族の詳しい個人情報が出てこん。それに学歴は出てきたんやけど、一年前からは一切消えとるな。コーチの権限でも閲覧できんなら、だいぶ上の方が絡んどるわ。
「支部長はわかるけど、統括局まで?」
支部長とは正式名称『アラヤ各国支部統括長』。主要各国に置かれたアラヤ支部、その各国支部に一人任命されている総責任者であり、その国におけるアラヤの決定権を保持するトップだ。日本アラヤならば、
その鳳こそが、件の三日月真宵をスカウトした張本人なのだ。
そして統括局とは各国に置かれたアラヤの全てを統括する、アラヤ最高決定権と任命権、そして解放戦力における権利を持った『アラヤの頭』なのである。各国のアラヤも、統括局から権力を借り受けているに過ぎない。だが基本は放任を貫き、有事にしか動かないことで知られている。
「そうやなかったら不自然や。見てみ、ここに纏められとる情報」
そう言って渡された端末に、うえは目を通す。
(13歳にして学業過程を修業。IQは測定不能を記録。格闘技の経験こそないものの身体能力もそれなりに高い。しかしそれにも関わらず学術機関からの打診は全て断り、通常学習機関へと残り続ける。その真意は不明。
高レベルでさまざまな能力に才能を見せるが、その中でも最も特筆すべきはその状況把握能力と解決手段作成能力。アラヤが作成した戦闘指揮能力測定テキスト(本人には概要を伏せ測定)において過去最高評価を獲得。このテキストにおいてシステム的に不可能であったはずの『無犠牲ミッションコンプリート』を成し遂げた(彼女の導いた戦術結果は『I.S リザルト』と呼称。以後『I リザルト』)。これを可能とする他の方法は今なお不明であり、シュミレーションでも彼女のアルゴリズム以外では再現できていない。『I リザルト』以外の脅威的戦術立案能力も確認されているが、『I リザルト』ほどのシステム的不可能超越結果は導かれていない。『I リザルト』の戦術評価は測定不能、他のミッションにおける戦術評価は全てAランク以上である……)
「……これは、凄いわね」
「あー、そこやないな。確かにそこもおかしいとこあるけど、問題はもっと下や」
うえは言われた通りに続きを目で追った。
(学習機関による報告から本人の性格は明るく社交的であり、年齢関係問わず常に周囲から信頼されているようである。そして争いを好まず親愛の輪を広げることに注力していたようだ。またその性格は幼年期からのものであり、生来の善性を表していると考えられる……)
「……待って、これは本当に真宵ちゃんの報告書なの?」
「違和感の塊やろ。んでもこれが正式に登録されとる資料なんは、疑いようもないことや」
何度読んでも、うえの中ではその資料に記されているのが真宵のことであると、受け入れることができなかった。
うえの知っている真宵は、常に冷たく鋭利な表情、年に見合わない冷静さと聡明さ、軍人のような思考などを兼ね備えた、どこまでも一般人とはかけ離れた存在なのだから。それは初めて見た時から変わらない印象だ。
「そこまででも大概やけど……重要なんはここや」
うえの持つ端末を横から操作し、ミアはとある一文を示してみせる。
そこにあった情報はあまりにも衝撃的で、とてつもない矛盾を表していた。
『四度もの検査により、三日月真宵は解放戦力保持者ではないと断定されている』
「そんなはずないっ!?」
「落ち着けうえ」
思わず叫んだうえを、ミアが宥める。
「だって、真宵ちゃんは明らかに解放力を使っていたわ。ショッピングモールでも間違いなく。それに今日だって、
ミアはとうがら種を食べながら、考えるように頭を掻いた。
「なあうえ……真宵は一体いつ、どんな解放力を使った?」
「え、それは……それは……あれ?」
うえは考える。真宵は明らかに解放力を使ったはずだ。そうでなければあの結果は齎せない。
だがいつ使った? どの場面で? どの場所で? そもそもどんな解放力を使った?
うえでは、その答えを出すことはできなかった。
「真正面から戦ったんやけど、真宵の解放力は見えてこん。ま、推測はいくらでもできるわな。『
「アーツを、使ってない……?」
「アーツを使ったら大体観測されるもんがあるよなあ」
「磁場、よね」
「んで、今回真宵から観測されたかいうと……観測されてないんや。つまり、あいつは解放力もアーツも使った証拠は何処にも残されとらん」
うえは驚きのあまり、少しの間言葉を失った。
「……だ、だけど、それじゃあ……真宵ちゃんは一般的能力で、ミアちゃんと茜ちゃんを倒したって……」
「いや、間違いなくアイツは一般の範疇を超えとる。ただ確証がないだけや。やけどっ……あれはSランクとして完璧な秘匿を実現しとる。そんでも真宵の異常性は隠しきれとらんがな。……ま、やからこそ疑問があるわけや」
ミアは一気に三つのとうがら種を噛み砕き、真っ直ぐにうえの目を見た。
「なあ、その資料に載っとるんは……もっと言えば“三日月真宵”は、本当に今日会ったあいつなんか? もし違うとしたら、“三日月真宵”っちゅうのは何もんや?」
うえは答えを返すことができない。
資料と実物の乖離。それはあまりにも矛盾に満ちたものであり、到底同じ人間について書かれているとは思えないものだ。
誰が見てもわかるほどに歪でどこまでも深い、そんな暗闇を覗き込むような感覚がうえを襲った。思わず体を抱いた彼女の行動は、決しておかしなものではない。それは恐怖と疑問を覚えた人間が行う、普遍的な行動である。
そんなうえが落ち着くのを待ってミアは端末を回収し、そこに記載された資料に目を落とす。
「まあ、これは個人の考えやけど、あたしらが今日会ったのが“三日月真宵”やろうな。そんでこの資料に書かれとるんは、ほぼ完全な
選択肢を示しながら断定を行うミアに、うえは疑問を持った。
「なんで、そう言い切れるの?」
「そいつの在籍しとった学習機関に確認取った。幼年期から一年前までしっかり確認が取れたわ。教師にも覚えられとった。管理番号の参照もしたし、完全にシロやったわ」
「……それ、職権濫用じゃない?」
「バレんかったら大丈夫ちゅーこっちゃ」
そう言い張るミア。だがその表情には、いつもある溢れんばかりの余裕が浮かんでいなかった。
「なあ、あいつの抱えとるモンは想像以上に重いもんなんかもな。あたし達じゃ手に負えんモンなんかもしれん。世の中、理不尽ちゅうもんは諦めた方が楽なことの方が多いもんや」
だがそう口にするミアの表情は悔しげに歪みながらも、不満と怒りの色が見えた。その理不尽が、どう足掻いても容認できないと示すように。
「んなことはわかっとるんや。んでも頷けん。んなことしたらあいつにも生徒にも顔向けできん。真宵がどんだけ重い荷物背負っとっても、それ見んフリする賢い人間にはなりたくない。……あいつを、助けたいんや」
「ミアちゃん……」
うえでさえほとんど見たことのない、参ったかのようなミアの姿。
決して迷わず、曲がらず、鋼の女傑といわれたミアが見せる力の無さを憂う顔は、いつもの獰猛さを感じさせないほどに繊細なものだ。
「あいつ、戦う前になんてゆうたと思う? 『これまで与えられたものを返せなければ、殺されるな』っちゅーとったわ。結果残せんかったら殺されるゆう意味やろうな。……それを当たり前に受け入れられとるんが、はらわた煮え返るほど受け入れられんわ」
怒り、怒り怒り怒り。
世の理不尽に怒る猛獣の瞳には、烈火の如き光が宿っている。
「うえ、お前にこんな危ない橋渡ってほしくはないんやけど、少しでいいから力貸してもらえへんか? 危なくなったら捨ててもかまわん。コマンドティーチャーとしてのお前が、必要なんや。……頼む」
普段はなんでもかんでも自分でこなそうとしがちなミアが、他人に助力を乞うという覚悟。そこに尋常ならざる想いが込められているのは、その瞳を見れば一目瞭然だ。
そんなものを目にして、うえが断ることなどあろうはずもない。
うえの中にも、ミアに劣らないほどの想いが燃え盛っているのだから。
「当然よっ! 少しなんて言わないわ。私ができる全てで、ミアちゃんに協力する。真宵ちゃんがどんな組織から来たのかはわからないけど、どんな手を使っても守ってみせるわ」
二人は笑みを見せ合う、その胸に覚悟の灯火を秘めて。
たった一人の少女を助ける為に、自らの全てを投げ出す。そんな愚か者に成れる素質を、二人はこれでもかと持ち合わせていた。
聖者の如き献身ではない。子供を守らんとする先達の勤めとしてだ。
「やったらまずは————」
と、二人の持つ端末に通知が届く。
即座に通知が開かれたということは、それが通常通知とは違う重要なものであるということだ。
そしてそれを目にした二人は、顔を見合わせ表情を険しくした。
「ミアちゃんこれ……」
「ああ、“向こう”に動きが知られたかもしれへん。んでもまさか……こんな奇手で対応するか」
ミアが端末をベッドに放り投げる。
うえはもう一度スマートグラスに表示された速報を確認した。
『三日月真宵をティーチャー兼特待生徒として登録する。またそれにともなってクラス2までの権限を認める。これはアラヤの正式な……』
大きな意思を持ったうねりは、まだ始まったばかりだった。
……なんか壮大な勘違いが生まれて加速している。果たしてこの流れを止められる者はいるのか。
この二人本当に、なんかこう、気の毒である。
†††††
「ふー、やっと戻ってこられた。今度の
長い会議を終えやっと統括長室に戻ってきたアラヤ日本支部長、
「そもそも日本支部だけで対応できるのに、各国参加は無駄が多過ぎる」
アラヤでは度々各国合同の任務が行われている。それは大体が強力な
だが、日本においてはその常識は通じない。
世界に十七人しか載る者のいない人類の頂点達、『世界ランキング』。その内七人が日本支部に在籍しているのだ。そのせいで日本支部のナンバーズが制限されるほどである。
つまり、日本という国において対応できない災害は魔獣を含めてそう存在しない。故に他国に頼る必要がほとんど存在していないのだ。
ならば何故日本での魔獣討伐に各国が参加するのか。
それはひとえに、日本支部の情報を持ち帰る為である。あるいは、日本支部が新たに強力な解放力者を得ることがないように監視する、そんな意味もあるだろう。
「まあ、ナンバーズ上位陣は今回も不参加だろうけどね」
と、時間を確認した鳳は、とある通知が伝えられる時間を過ぎていることを知った。
「もうこんな時間か。でもやっとここまできた。真宵君は希望たり得る逸材だ。実戦にはしばらくうえ君についてもらえれば問題はない」
鳳の表情が緩む。
「彼女がいれば、沈んでいたアラヤの空気もまた元に戻るだろう。まあ少し時間がかかるだろうがね。……ん? うえ君からの報告と、ソロモン・ツリーからの新しい評価?」
机に取り付けられた端末に、二つの通知があることに気が付く。
「うえ君の方は……三日月真宵の活躍、か」
口元が緩んだ。着いて初日だというのに、もう何か活躍をしたらしい。釣った魚は予想以上に大きかったようだ
ああ、気の毒だ。この後に顔が盛大に引き攣る様が見える。
「三日月真宵はオペレーターとして参加した
ああほら、めっちゃ混乱して引き攣った笑みを浮かべている。
添付されていた『
「真宵君は解放力を持たない……。なのに何故、『最優秀オペレーター』に選出されているんだ!?」
それは本当にそう。
全部賀茂ナスと九条ネギが好きな脳内AIとポンコツのせいである。
「いや、一旦落ち着こう。そうだ、何かの手違いかもしれない。そうに違いない。彼女はあくまで指揮官の才能が高いんだ」
現実逃避をキメた鳳は、その手段としてソロモン・ツリーからの通知を開いた。
『三日月真宵による日本ナンバーズ7の撃破を確認。またその戦術評価はA+ランクに相当すると思われる。
目を覆った鳳は、手を退けると共に叫ぶ。
「どうしてこうなったっ!?」
まっこと、おっしゃる通りです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます