赤い水晶玉

口羽龍

赤い水晶玉

 ここはとある雪の降る町。おとといから降り続いた雪は肩の部分まで積もり、大きな壁のようになっている。人々はみんな寒そうに歩いていて、中には雪下ろしをする人々もいる。


 英斗は外に出た。今日も寒い。英斗は吐息を吐いた。白い吐息が広がる。だけど、美しい銀世界を見ると、寒さを忘れてしまう。


「今日も雪か」


 英斗は辺りを見渡した。家の前には大きな雪の壁があり、豪雪地帯だという事を物語っている。


 今日は小学校が休みだ。何をして遊ぼう。近所の同級生と雪遊びでもしようか? なかなか決まらない。


「あれっ?」


 と、英斗は家の門の入口で1つの玉を見つけた。その玉は赤く輝いている。一体何だろう。英斗は首をかしげた。


「これ、何だろう。きれいだな」


 周りには誰もいない。誰にも見られたくないな。英斗はその玉を手に取った。とても美しい。誰が落としたんだろう。


「うわっ!」


 と、英斗は赤い光に包まれた。英斗は驚いた。突然、何だろう。この玉にはこんな力があるんだろうか?


 光が収まると、そこは草原だ。どこかに飛ばされたようだ。一体どこだろう。アフリカのサバンナだろうか? だが、ライオンやチーターなどのサバンナの野生動物がいない。


「ここは、どこだ?」


 英斗は辺りを見渡した。英斗は驚いた。そこにはコウモリの羽を持つ恐竜が何匹もいる。その時英斗は、ここではない異世界にやって来たんだと実感した。あれはドラゴンだろうか? いや、そうじゃない。この世にドラゴンなんていない。おとぎ話だけだ。


「ド、ドラゴン?」


 と、1匹のドラゴンがやって来た。英斗はびくびくした。炎の息で焼き殺されるんじ友好ゃないかと思った。だが、ドラゴンは優しく、笑みを浮かべている。とても友好的な性格のようだ。


「君、どうして水晶玉を持ってるんだ?」


 ドラゴンは赤い玉に目が入った。英斗は赤い玉を見た。まさか、この玉はドラゴンの持っている水晶玉だろうか? ドラゴンが落としたんだろうか?


「たまたま落ちてたのを見つけて」


 英斗はびくびくしている。自分が持っていたら、どうして持っているんだと怒られ、焼き殺されるかもしれない。


「まさか・・・」


 と、ドラゴンは何かに気付いた。僕の弟のエリオットが異世界に水晶玉を忘れてきたと聞いている。ひょっとして、それだろうか?


「どうしたの?」

「エリオット、これじゃないか?」


 と、別のドラゴンがやって来た。そのドラゴンはその水晶玉のように赤い体をしている。


「どうしたの?」

「赤い水晶玉を異世界に忘れたっていう俺の弟だよ」


 英斗は呆然としている。目の前にドラゴンがたくさんいる。まるで夢の世界だ。こんな世界があるとは。


「まさか・・・」


 英斗が見せた水晶玉を見て、エリオットは喜んだ。僕が忘れたのはこれだ! もう戻ってこないだろうと思ってたが、まさか戻ってくるとは。


「これだ! これだ! ありがとう!」


 エリオットは笑みを浮かべた。異世界に忘れてきたけど、まさか人間が返しに来てくれるとは。


「ど、どういたしまして・・・」


 と、エリオットは何かを思い浮かべた。異世界に忘れてきた水晶玉を返しに来てくれた。何か恩返しをしないと。


「なんかお礼をしてあげよっか」

「い、いいですけど・・・」


 英斗は笑みを浮かべている。少し照れているようだ。まさか、ドラゴンに褒められるとは。


「僕の背中に乗って」

「は、はい・・・」


 英斗は照れながら、エリオットの背中に乗った。まさかドラゴンの背中に乗るとは。英斗は少し戸惑ったが、こんな事はもう体験できないかもしれない。是非とも乗ってみようかな?


 ドラゴンの体は暖かい。炎を吐くからだろうか? 冬の寒さなんて忘れそうなぐらいだ。


 程なくして、ドラゴンな飛び立った。と、その下に見えるのはこの世界だ。しかも、自分の住んでいる村だ。まさか、村をこの視点から見れるとは。これは貴重な体験だ。


「すごい! 故郷だ!」


 英斗は興奮した。こんな景色、見た事がない。建物がこんなに小さく見える。まるで模型のようだ。


「すごいでしょ?」


 エリオットは笑みを浮かべた。水晶玉を返しに来てくれたお礼でこんな景色を見せる事ができるのを誇りに思っている。


「まるで鳥になってるみたい」


 英斗は感動している。まるで鳥になったようだ。鳥になって空から村を見ると、こんな感じなんだ。


 だが、英斗とエリオットの姿は誰にも見えていないようだ。巨大なドラゴンが空を飛んでいるのに。何か不思議な力が働いているようだ。


「誰も気づいていない。みんなには見えないんだ」


 そして、エリオットは英斗の家の前にやって来た。だが、誰にも気づいていない。ここでも誰にも見えていないようだ。何もないかのように歩いている。


「どう?」

「最高だよ!」


 今日は今までで最高の体験をした。何て素晴らしい日だろう。英斗は満面の笑みを浮かべた。


「今日は取りに来てくれて、ありがとう」

「どういたしまして」


 エリオットは翼を広げて、空へと飛んでいった。程なくして、エリオットは消えた。異世界に戻ったんだろう。これからも幸せに暮らしてほしいな。


 と、母がやって来た。母は何事もなかったかのような表情だ。英斗がドラゴンにあった事を知らないようだ。


「英斗、どうしたの?」

「何でもないよ」


 英斗は笑みを浮かべた。ドラゴンに出会った事は誰にも言わない事にしておこう。だけど、その思い出を一生の思い出にしておこう。

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