第14話 ナカヨス王国
我が家の今晩のメニューは、ワイバーンのステーキとなった。2日連続でステーキだけど、明日はビッグバードを渡すから多分鶏肉系の料理になるだろう。もしかしたらキラーファルコンかもしれないから、鶏肉系というのは間違ってないしね。
父さんも母さんもホクホク笑顔だった。美味しいものを食べて満足している。
あと俺が毎日帰ってきてるからか、前よりも心配事も減ってるようで母さんも笑顔だ。いくらステータスを見せても安心しなかったもんな。こちとら異世界に通ってるような感覚なのに。
優雅に晩飯を食べ終わったので、沼津にLimeで連絡を入れた。
『食べ終わったぞ。今からいける?』
『いつでもどーぞ』
『家の前に来たら教えて』
『玄関にいるから』
ものの数秒で返信があったので驚いた。最近のJKはメッセージ送るの早いんだね。知らなかったよ。
家まで送った場所を千里眼で確認。周りに誰もいないので転移する。そして沼津にLimeを送る。
『着いたぞ』
『ほい』
一言だけ返ってきたかと思えば、すぐに玄関ドアが開いてこちらにやって来た。当たり前だけど私服を着ていた。学校以外で女子に会うのはすごく新鮮な感じだ。不覚にもちょっと可愛いと思ってしまった。くぅ!
「お待たせ」
「おう、じゃ行こうか」
沼津を連れて我が家の部屋に転移した。自室に新しく作った靴脱ぎゾーンという、靴を脱ぐだけのスペースがある。外から転移することが多いので作ったのだ。段ボールを敷いただけとも言う。
お互いに靴を脱いでベッドに腰かけると、沼津に話を促した。
「あのさ、直接会って話したい事って何だ?」
「あ~それね、私も色々と考えたワケ。ちょっと考えたらわかるけど、普通は日本に帰れるって言われても信じないでしょ?仲の良い友達の話ならともかく、特にあんたはクラスの誰とも仲良くなかったし」
「それは違うぞ沼津。仲良くなる機会が無かっただけだ。仲良く無い訳じゃないぞ?」
「ハイハイ、屁理屈ご苦労様。それでね、あんたが信用されやすくなる方法を考えてあげたのよ」
「おい、理解してねぇじゃねぇか。それで?信用される方法って何だ?」
「これよ!じゃ~ん!」
沼津は嬉しそうにスマホを取り出して、何かの画像を見せてきた。パッと見た感じでは、沼津とその友達が一緒に写ってるだけだ。
もしかしたら何か意味があるのかもしれない。が、どう見ても仲良し二人組が、カメラで自撮りしてるだけにしか見えない。
「なぁ、もしかして見せる画像間違ってないか?」
「え!マジ?٠٠٠いや、合ってるし!ちゃんと見てよ。二人仲良く写ってるでしょ?わかる?コレよ!」
「いや、全然わかんねーし。要するに俺がボッチだって言いたいのか?」
「ボッチだって、ウケる!」
「いや、ウケねーよ!」
アホなやり取りは置いといて、沼津から詳細を聞き出した。要するに、俺が帰還者と仲良く自撮りをすればいいらしい。勿論、日本でだ。
帰ってる証拠にもなるから信用され易いってことらしい。わざわざこんな加工とかしないだろうし、信用に値するという訳だ。沼津自身が女子の中では多少の発言力があるのも大きいんだってさ。そういうこと自分で言うなよと言いたい。
「私の後って、誰か帰したクラスメイトはいるの?」
「新島を帰したけど、あいつは無理だぞ?俺を殺そうとしてきたし」
「えっ!何それ?どういうこと?」
新島が調子に乗ってイキってた事や、殺人未遂をやらかした事など、帰るまでの状況を説明した。それを聞いた沼津がかなり怒った。
「何よそれ!あいつバカなんじゃないの?警察に突き出して捕まえて刑務所行きよ!いや、裁判で慰謝料請求よ!」
「おいおい、落ち着けよ。全部現実的じゃないから。殺人未遂の証拠も無ければ、異世界の話をしなきゃならなくなるだろ?異世界の証明なんてしたくないからな?」
「٠٠٠そうね。それによく考えたら新島だけじゃないかもね。クラスで調子に乗りそうなやつ、何人か心当たりあるわ。そいつらだけ置いてったら?」
「流石にそれはまずいだろ。とりあえず力尽くで帰すから大丈夫だよ、多分」
沼津は俺を心配してくれてるみたいだ。口は悪いけど良いやつなのかと思った。口は悪いけど。
あれから落ち着いた沼津と自撮りを敢行した。俺の服装は異世界の一般人の服装だ。沼津は日本でよくある私服である。これで信憑性が増したと沼津は言ってた。
撮影時に女子とこんなに近い距離は無理だと思ったが、沼津に無理矢理寄せられた。女子に引っ付くのが初めてだったのでドキドキした。撮った写真を見ると、俺の表情は固かったよ。沼津は大爆笑してたけど、ウケねーから!
寺井もいた方がいいと言うことで、連絡を取って事情を説明して迎えに行った。部屋に転移した後に三人で写真を撮った。寺井も陰キャ気質らしく、緊張で表情が固くなってた。
「赤城、気を付けていけよな。新島みたいな奴は、ラノベじゃ当たり前にいるからな」
「あんた帰ってきたら連絡ぐらいしなさいよ?こっちの状況ぐらいは教えれるから」
「おう、二人ともありがとな。じゃあ送ってくよ」
寺井と沼津を家まで送って、自室へと帰ってきた頃にはだいぶ疲れていた。ベッドに入り、今日はよく寝れそうだと思いながら意識を落としていった。
翌日、ナカイシ王国の街(名前も知らない)を出て、人目の無い場所でハリアーを出して移動を開始する。目指すはナカヨス王国だ。
順調に空の旅を満喫しながら飛んでいると、ナカイシ王国の王都を通過した。世界地図によると、もう少しでナカヨス王国との国境である。そして国境を越えて最初の街にたどり着いたので、ハリアーから降りることにした。
「前から考えてたやり方を試してみよう」
ハリアーを空中でストレージに収納し、そのあと高速飛行で降りるという方法だ。コックピット内に居ても収納出来るのは確認済みだ。
ハリアーをストレージに収納すると、そのままの速度で空中に投げ出された。すかさず高速飛行に切り替えて優雅に着地した。ちょっとドキドキしたけど、無事に成功した。
街に入る前に、ハリアーに補給だけしておこうと思ったのでストレージから出すと、出したハリアーが物凄いスピードで飛んでいき、街の近くの森に突っ込んでいった。木々を何本か倒しながら地面に突き刺さったかと思うと、轟音をあげ爆発し炎上した。それを見て呆然としてしまった。
「٠٠٠や、やばいことになったぁ!!え~と、消火だ!消火しなくちゃ!あ、あと証拠隠滅も!」
国境から近い街ということで目撃者は多数いた。辺りに人が集まってくる気配がする。俺は森の側にいたけど、すぐに森に入って姿を隠した。そして燃えている現場までくると、水魔法の
森林火災は怖いから迅速に行動したまでは良かった。ただ魔法の規模が大きすぎた。
物凄い蒸気を発した後、勢い余った大量の水が四方八方に流れだした。一部街道が水浸しになってしまい、それも目撃者がかなりいた。
焦る気持ちを落ち着けて、ハリアーをストレージに収納して、隠密系スキル全開でその場から逃げだした。国境とは反対側から何食わぬ顔で街に入って、冒険者ギルドを探しにいった。
「今回はマジで焦ったわ。飛行中の速度そのままとかヤバすぎるだろ。何かに使えそうだけど、とりあえず反省だな」
反省しながら歩いていると、冒険者ギルドを見つけたので入る。カウンターにいる受付嬢さんに、女神の戦士の情報を求めた。
「そちらなら金貨10枚ですね」
「現在地の情報を知りたい。是非とも一目だけでも見てみたくてね」
カウンターに金貨10枚を置きながら、それっぽい理由を言ってみる。三人も消えたわけだし、警戒されないようにしている。ちなみに新島の時も、『探さないで下さい。修行の旅に出ます』と書き置きを置いてある。筆跡は俺のだけどね。
それでもいつかは調査が入って、俺まで辿り着くかもしれない。俺の知らない方法で、スキルや魔法を使った捜査とか探知とかあるかもしれないし。
「女神の戦士様方の現在地は、一つ隣の街になりますね。待っていたらもうすぐこの街にも来ますよ」
「各地で魔物を討伐しながら移動してるって聞いたけど、ナカイシ王国に向かってるのか?」
「いいえ、依頼や事件があった場所に向かってるというのが正しいですね。先程になりますが、国境に向かう街道横の森で、謎の大爆発が起こりましたのは御存知ですか?それを調査しに女神の戦士様方が来られるそうですよ」
「えっ!そ、そうなの?それは知らなかったなーあはは٠٠٠」
かなり棒読みなセリフになってしまったけど、もうその情報が伝わってるの?早くない?もしかしたら、ギルドにはそういった通信手段があるのかもしれない。今後は頭に入れて行動しよう。背中に冷や汗かいたよ。
受付嬢さんにお礼を言ってギルドを出た。近くの宿を確保して、部屋に入るとドッと疲れが出た。今日は厄日だな。あまり下手な行動はとらないようにして、クラスメイトがこの街に来るのを待つことにした。
まだ日が高いので街の外に出て、乱獲したビッグバードの解体をしていった。30匹の解体が終わる頃には夕方になっていたので、自宅へと転移した。
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