色のない街
2XXX年 Z国 とある広告に描かれたイラストが性的コンテツであるとして非難された。それを受けてZ国では多くの議論が行われた。議論は多くの人々の中に争いを生んだ。それらの鎮圧に向けてZ国の大統領は、
性的コンテツの使用を禁ずる法律を提案した。議会は、それらを承認した。
性的コンテンツ禁止法の誕生である。Z国では、性的コンテンツと思われるものは全て撤廃するべく公的機関としてコンテンツ検閲部門が設置された。Z国のありとあらゆる出版物、広告、交通安全のイラスト、学校の子供の絵に到るまで検閲と排除が着々と進んで行った。
そこまでは、ある程度納得できていた。ある時、検閲部門に一本の電話がかかってきた。
「私、道路標識の”止まれ”を見ると性的興奮を覚えるんです…」
その言葉を受けた検閲部門は戦慄した、しかしながら立法された法律には
性的コンテツを明確に定義していなかったため、町中から"止まれ”の
標識は撤廃された。
そのニュースを受け、町中のいろんなものが撤廃されていった。道路標識は街からなくなり、注意のポスター、寿司屋の看板、コンビニの看板いろんなものが街から消えていった。
街では、標識や信号が消えたことにより事故が多発した。人々は、
自分の創作物や著作物が誰かに性的コンテンツとして認められる恐怖に怯え
常に懐疑的に生活するようになり人々の顔から笑顔が次第になくなり、町中に灰色の風が吹くようになった。街の景気はかなり悪くなり失業者が増加、治安が悪くなり事故、事件によって人口の1/3程度無くなった。
そんな、状況を受け大統領は、大統領令を発令した。
この国では、緊急的状況にのみ議会の承認を得ずに法律を発布することが
可能だ。大統領は、多くの国民に向けこんな法律を発布した。
「今後、性的コンテンツ禁止法を停止して"性的コンテンツ必須法"を発令します。」記者会見の場で大統領は国民に向けて発表した。
それを聞いた記者は質問した。
「その法律は一体どのような法律なんですか?」
大統領は答える
「性的コンテンツ必須法は、個々人の表現物には全て性的な要素を入れなければなりません。ちなみに、本日私は今日つけている時計ですがこの秒針の動きとてもセクシーでしょ?」
大統領は、笑顔で答えた。
その発令からの対応はすごく早かった。検閲部門はすぐに解体、今まで撤去されていたものは、一度規制された性的コンテンツとして戻ってきた。
みるみるうちに国の景気はよくなり今まで以上に治安が良くなっていった。
そして、今まで表現物に対して行われていた批判や議論は作成者が誰かを傷つける意思があったかどうかが争点となっていった。
それから、15年後...街角で
ある親子が、街の交通安全ポスターを見ながらこんな会話をしていた。
「ママー、このおねいさんのおっぱいはママのより大きいよ」
「そうねぇ、でもパパは私のが一番好きって言ってたわよー」
「へーそうなんだぁー、じゃあ、ママはそのままがいいねぇ」
「そうねぇ、この国では他人の”好き”は絶対に否定できないのよぉ
あなたも、大人になったら絶対に否定しちゃダメよ」
「わかったぁ」
夕暮れの街は、夕飯の香りで満ちていた。
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