我が人生の過言

ポップコーンおじさん

友人

私は、元気に咲いた植木鉢の花に水をやりながらふと今日泊まりに来る友人の事を考えた。友人は、サイコパス的な一面があり、日々私を殺害しようと企んでいるのでは無いかと思う事がある。

 そう思うのも以前より、私への殺意が垣間見える事が多々あった。例えば、山にハイキングに行った時、高台から下を見下ろす私の背中に手を置かれだ事がある。その時は、あまりの衝撃に一瞬戸惑ったが私が驚いた反応をすると彼は、冗談だと言い手を離し笑っていた。しかし、その目には明確な殺意があったと記憶している。私は、恐怖しながらもその友人とは気が合い、居心地の良さを感じてなかなか距離を置く事が出来ないでいた。


 私は護身用のナイフを携帯し友人を駅まで迎えに行った。友人と合流するとたわいない会話をしながら、私の家へ向かった。

 私の家にて、彼とお茶を飲みながら談笑していると私は尿意を感じトイレへ向かった。私は、向かう時は何も考えていなかったが戻る時にふと考えてしまった。私のコップに毒を盛られたらどうしよう。その、妄想に取り憑かれた私は内心を悟られないよう友人の元へ戻った。友人は戻る私に対し、

「お帰り、俺もトイレ行っていいかな?」

と問いかけた。断る理由も無いので

「どうぞ、ごゆっくり」と言うと彼はトイレへ向かった。私は、急いでコップの飲み物をベランダの植木鉢に捨てた。彼が帰る前に新しい飲み物を注ぎ彼を待った。彼が戻り再び談笑を再開した。自分の妄想である事は重々承知だが、一度思うと中々この考えから抜け出す事は難しい。私は、内心ドキドキしながらその日を過ごした。


 その夜、私の寝室は狭かったので友人にはリビングで寝てもらうことにした。私の寝室は一階にあり、リビングは2階にあった。私は護身用のナイフを握り締めて床に潜った。夜中、恐怖のあまり中々寝付けずにいると足音が聞こえた。2階からやってくる足音が着実に私の元へとやってくる。私は、寝たふりをしていたがその足音が私の横に立ったのがわかった。その足音の主が友人である事は確かだが、その足音は暫く私の寝息を確認してからすぐに離れていった。私は、そのまま手に握りしめたナイフが手汗で錆びるほどに握りしめ一睡も出来ずに朝を迎えた。


 翌朝、友人に挨拶すると

 「昨日は、よく寝ていたのに凄く疲れた顔をしているな」

 と笑い声混じりに茶化された。私は、友人のその笑顔を見て自分の考えすぎを恥じた。その日は朝から友人は私の家の近くで用事があるとの事なので友人と解散した。

 私は、友人を駅まで送り届け家に帰った。家に着くと午前の日差しを浴びながら、自分の被害妄想の凄さに驚きながらも恥ずかしさを覚えた。時は、日曜日の午前9時私は安堵と共に今日という休日になにをするか考えながら植木鉢に水をあげようとしたが植木鉢は、ひどく枯れていた。私は、自分の考えが間違っていなかった事を確信し深く今日という日に感謝した。

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