第6話 DNAに迫害の爪痕? スズメ

 冬は昆虫の姿がほとんど見られませんが、鳥類はそうでもありません。

 いつも身近にいる野鳥のほか、季節ごとにいろいろな渡り鳥がやってきます。


 拙宅から徒歩30分くらいの水田の一角に、毎年ハクチョウが飛来て越冬します。その数は年により違うようですが、200~300羽くらいです。

 水田を所有している方が、何面かの水田に冬じゅう水を張り、ハクチョウに提供しているのです。さらに、「ハクチョウを守る会」の方々が、見守りや給餌きゅうじをしています。

 見に行こうとは思うのですが、今日のように強い寒風が吹いていると、家から出る意欲がしぼみます。

 穏やかな天気の日を選んで足を運び、本エッセイでご報告したいと思います。


 ということで、今日のテーマは、いつも私たちのそばにいるスズメです。


 朝起きて、外から「チュンチュン」というスズメの鳴き声が聞こえると、「あー、朝だなー」という気分になりますよね。

 駅までの遊歩道を歩くと、少し先の地面で何かをついばんでいたりします。こちらが近づくと、パッと飛び立ちます。


 人間とは、微妙な距離感を保っているようです。

 あくまで私の主観によりますが、身近な野鳥が持っている人間との距離感は、次のようになるのではないでしょうか。「<」の右の方が、人間との距離があるという意味です。


 ツバメ < スズメ < カラス


 ツバメは渡り鳥なので、一年中近くにいるわけではありませんが、人家の軒先に営巣することが多いです。天敵のカラスなどから巣を守るために、人間の力を借りているのでしょう。


 スズメは、いつも身近にいるけれども、その巣を見たことがある、という方は少ないと思います。

 それに、人間が徐々に接近した時に、どれくらいまで近づくと飛び去るか、という距離は、大雑把に言って5mくらいだと思います。(カラスは10m?)


 これは私の推測で、科学的な根拠があるか知りませんが、スズメの「対人距離感」の背景には、昔、稔った米を食い荒らす害鳥として迫害された経験があるのではないでしょうか。それが、遺伝子の中に刷り込まれて、今に至っている……。

 子供のころ、ツバメは「益鳥」スズメは「害鳥」と習ったような記憶があります。


 しかし、なにごとにも例外はあります。

 以前、神奈川県にある「新江ノ島水族館」に行った時のことです。

 海の見えるテラスで、お茶を飲んで一服していると、1羽のスズメが飛んできて、私たちがいる円形のテーブルに留まりました。ちょんちょん歩いたり、私たちの足元に降りたりしています。しばらくそうしていましたが、何も得る物がないと思ったのか、飛び去りました。

 おそらく、人間に近付いても安全なこと、むしろ食べ物がもらえるかもしれないことを学習した個体だったのでしょう。


 何年か前に新聞で、スズメが数を減らしているという報道を目にした記憶があります。かわら屋根の家屋が減少して、営巣に適する場所が減ったことが一因だと書いてあったように思います。

 そういえば、スズメを見かける頻度が、以前より減ったような気もします。


 朝の「チュンチュン」が聞こえなくなったら、淋しくなってしまいます。


 

 

 

 

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