第10話:借金二号

「おおおぉー、見事な爆発だなwww」


 爆発の威力は凄まじく、大量の煙と爆風が発生し、少しの間煙のせいで視界が完全に遮られる程だった。    


 煙が晴れて近寄ってみると、黒焦げになったオークと、パンイチになって全身ボロボロになったキモ美少年がいた。


「……う、うぁ……」


「ごめん、一つ言い忘れてたわ。爆発は爆発でも、自爆だから」


「……へ……へ、へ……」


「あーあとお前、HP『1』しかないから気をつけろよ? 小指ぶつけただけで死ぬから」


「……へ……?」

 


 名前:近藤真琴

 HP:1/980



 自爆チートは自身のHPを1にする代償に、高威力の自爆を引き起こすチートだからな。軽く小石をぶつけられても死ぬし、息を十秒以上止めても死ぬ。


 ちゃんと生きて金返せよ?


「はぁ、いいもん見れたわ」


 終わり良ければ総て良し。一時期はどうなるかと思ったけど、これで問題は解決だ。


 俺は騒ぎを聞きつけて来た二人と合流し、店に戻って事情の説明をした。


「……という訳で、そいつの、『借金二号』に三十万の借金を負わせた。これで当面は借金二号に請求すれば大丈夫、本当によかった」


「自爆……えげつないことを……」


「お前はそのえげつない奴の仲間なんだからな? つまり同罪だ」


「……うっわー。なんでわたしこんな奴の下で働いているんだろう……」


 お前から働きたいって言ったんだろうが。しかも半ば強制的に。


 余談だが、キモ美少年と言い続けるのもキモイので、借金二号と呼ぶことにした。


 一号はご存じの通り、ふゆりんのことです。


「それで、その借金二号というのはどこにいるんだ? 少しでもいいから早めに払ってもらわないと困るが」


 ルナティの言うことはごもっともだ。俺たちは今すぐ金が必要なのだ。だから勿論そのことは確認している。


「もうすぐしたら来るって言ってた。金を取りに行っているらしい」


「飛ばれたりしないんですか……?」


「契約を交わした以上飛んだところで意味がないぞ。俺たちチート販売業者が扱う契約書は特別なもんなんだ」


 期間内に完済できなかった場合どこに居ても牢獄に転送される仕様になっている。


 しかも飛んでいたことが確認された場合は刑期が伸びるから、飛ぶメリットが一切無いのだ。


「そういうところで異世界を主張するのやめて欲しいんですが」


 そんなん知るかっ。異世界らしい方がお前たち転移者は興奮するだろうが。


 三人で適当に談話しながら待っている。すると少しして扉が開く音が聞こえた。


「おっ、来たようだな」


 店の中に入って来たのは全身ボロボロになった借金二号。こんな憐れな姿になっても見た目だけはいいんだよなー。見た目だけは(強調)。


「それじゃあ早速金を出してくれ!」


 さて、どのくらい持ってきたんだ?


 全額か? 


 半分の十五万か?


 いや、取りあえず五万くらい渡してもらえば大丈夫だから、五万だけもらって、後は利子つけてやろうか?


 借金二号は顔を死にかけレベルまで真っ青に言う。


「あ、あ、ありませんっ……」


「……ん?」


 ありません……?


 なにが……? 


 人権でも無くしたんですか……?


「せ、拙者、素寒貧なんですっ‼」


「は、え、ちょっ、ちょっと待てっ! すっ、素寒貧!?」


 素寒貧だって!?


 素寒貧って確か、超絶貧乏とか、なにも持ってない人のことを指す言葉だから……。


「お、お金持ってないんですぅ‼」





「「はっ、はあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」


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