事業拡大(無能のせいでやらなくてもいい仕事が増加)のため、スタッフ募集中!~生命管理部 転生課 異世界転生係~
和扇
異世界へようこそ ~本日の始末書~
「…………う、こ、ここは?」
俺は山田次郎(仮名)
平凡な名前から微妙に変えられた、微妙な人生を歩んできた。
ちなみに俺は長男だ。
ある日、道を歩いていたら速度超過でカーブを曲がり切れなかったトレーラーが横転して、俺目掛けて突っ込んできた。異世界転生って言うとトラックに
最期の記憶は、茶色のコンテナが自分を押しつぶす光景だった。
で、今。
俺は真っ白な空間にいる。眩しいような、木漏れ日のような、白い光が辺りを照らしている。立っているような、ふわふわ浮いているような、不思議な感覚。
俺、死んだんだよな……?
そんな事を思っていた。
「その通りです、貴方は亡くなったのです、山田次郎さん」
「だ、誰だ!?」
突然、声が響いたかと思うと、いつの間にか目の前に女の人が現れた。
美女だ。
何と言うか、ヨーロッパの壁画風の女神のような恰好で長い金髪。緑の瞳に、何よりもボンキュッボンのスタイル。あ?女神?もしかして?
「その通り、私は女神、イリューシア。あなたは運命の悪戯によって死ぬべきではない時に死んでしまったのです。ですので、あなたの望む力を与え、望む世界へと転生させる事となりました」
「ま、マジかよ……これが異世界転生って奴か!」
死んだときはどうなるかと思ったが、これはラッキーなんじゃないか?望む力に望む世界。となれば、無双するしかないでしょ!
「じゃあ誰にも負けない力と魔力と~、あ、女の子にもモテたいなぁ~。それとそれと状態異常にはなりたくないから、そういうの全部無効にできます?」
「ええ、可能ですよ?モテるのは、
「もちろん、剣と魔法の世界で!!!!」
「分かりました、では転生させましょう」
「あ、ストップ!!」
「どうされました?」
そうだそうだ、忘れるところだった。
これをやれば最強じゃないか!
「女神様……
「あ……」
やった!決まったぜ!
これで女神様も一緒に転生、つまり願い事を叶え放題、俺無敵!!
「チッ、自分で与えた力が効くわけねーだろ、バカかコイツ。」
?
何かすっごい小声で何か言われたような?
まあ、既に女神様は俺の
どんなことがあっても大丈―――
「では転生させますね、サヨナラ」
「え?え?え?あれ?」
光が俺を包んだ。と思ったら視界が切り替わった。
浮遊感。
いや、ここは空だ。落ちてる!!!!
必然的にスカイダイビングのように落下する。目の前には。
「か、火山!!!!????」
ぼちゃん、じゅっ。
あわれ、ジロウの冒険は終わってしまった!
「いや、何してるんですか!!」
「え~?だってあの猿、私の事ハーレムに入れようとしたんだよ~?」
「転生させて即始末は暴挙過ぎますよ!当たり前ですが始末書モノですからね!!」
「何でそうなるのよ!!」
「あなたが滅茶苦茶やるからです!!!!」
天界の事務官ミクリは目の前の
ここは世界の裏側。
人間からすれば神の世界。
次元が違う、別次元とでも言うべきだろうか。
やっている事は様々だ。新しい世界を産み出す事。古い世界を消滅させる事。
魂を循環させる事。世界の発展のために魂に細工する事。
つまり転生なども行っているのである。
事務官のミクリはそんな世界の転生を管轄する部門に勤めている。
生命管理部 転生課 異世界転生係。
通常は良く言えば平和な、悪く言えば暇な部署である。
しかしながら
「いい加減ちゃんと仕事して下さい。
「だぁって~。他の一神教の国はその神だけ話を通せばいいし、無信教の所は勝手にやればいいけど、あの国だけ神、多いんだもん!多すぎなんだもん!どの人間がどの神に紐づいてるか、めっっっっっちゃ分かりにくいの!!」
「それをちゃんと調整するのがあなたの仕事でしょうが!!」
イリューシアは精力的に仕事をしている。
だが、正直何もしないで座っててくれた方が百倍マシである。
因果の調整を間違って人間を事故死させる。幸運の恩恵を与えようとして逆に不幸にして人間を死なせる。飛び降り自殺を引き留めようと調整していたら、後ろから押して成就させてしまう。何の理由もなく人間を死なせた事もある。
事例を書き出していたらノートが五冊くらいは埋まる。そしてそれらの問題の尻拭いは事務官のお仕事である。上層部への説明資料の用意、その説明、申請書類の作成、承認のための
一言で言い表すなら、とにかくクソ面倒臭い。
先程の転生者がいた空間もスタジオセットであり、そこの使用許可も事務官の仕事。女神は仕事の殆どが外部対応であり、
一般的な神、女神を
「はぁ、もういいです、そこに座って
「え~~~~~、面倒くさーーい!」
びきり、とミクリの額に青筋が浮かぶ。
ぎぎぎ、と音がするかのようにぎこちなく顔を持ち上げる。
どう見ても引きつった笑顔を浮かべながらイリューシアを見る。
「
「…………ひゃい。」
ミクリの剣幕にイリューシアはただ頷いたのだった。
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