自由だと思っていた異世界なのに、神とやらのせいで前より縛られた生活を強いられそうです

えとはん

序章 みんなもっと自由に生きたくない?


「君は、自分の人生をどう思う?」


そんなことを聞かれて、みんなはうまく答えられるだろうか?



周りから見ると、俺の人生はごくごく平凡だと言われるだろう。

今まで世間一般的に普通と呼ばれる生活をし、高校を卒業した俺は現在、地元の大学に通う大学生である。

外見だって身長はほぼ男性の平均であり、顔も悪いほうではないと思うが、いいとも思わない。

自分から見ても平凡な人生だと自覚している。

社会的な問題にもほとんど遭遇することなく、いじめや引きこもり、反抗期といった大学生までに関わってくるかもしれない問題とは、ほぼ無縁な生活を送ってきた。

ある意味、社会の表だけを経験してきた純粋な人だと言えるかもしれない。


しかし、だからと言って刺激的な人生がいいかといわれると、そういうわけではない。

波乱万丈な人生がいいとか、身長も180cmがいいとか、名前もキラキラネームがいいとかそう言いたいわけじゃないのだ。

まあ、顔はイケメンでもよかったかもしれないが...


まあとにかく、自分だって普通の人生が一番だってことくらい自覚しているのだ。

とはいっても俺は、恋愛という経験はほとんどなく、今も彼女いない歴=年齢を貫いてしまってはいるのだが...


まぁ、俺が思う俺の人生と言えばこんなところだろう。


でもみんなは、会社の面接などでこんなことが言えるかい?

もちろん、俺は言えない。


なぜか人は刺激を求める。

話をする人の人生も、聞く人は刺激があるのを望んでいる。

みんなだって、アニメなどを見るとき、何も起きずに、ただ家で寝っ転がっている光景を30分や1時間の間、見たいと思わないだろう。


そう、俺の人生など、人に言ったところでつまらないのだ。

日常系や、ラブコメ要素なんかありゃしない。


しかし、さっきも言ったように、非日常がいいというわけではない。

そこがめんどくさいところで、俺たち自身は非日常を送りたいとは思わない。


なぜなら、現代日本に生きる俺たちは、様々なコミュニティに所属しているからだ。

学校、部活、親戚、友人、大人だったらもっとあるだろう、言い出したらきりがない。

そんな状況で何かトラブルでもあったときには迷惑極まりないのだ。


物語とかでは困難を仲間とともに乗り越えるのがいいとかいうが、実際にはそういったものを乗り越えることができるほど、俺には力がない。

例えば、恋をした人が実は親戚だったとかの場合、どうやったってその問題を乗り越えられる自信はない。

今の俺なら、すぐに「はい、さいなら」と、別れる選択を取るだろう。


なぜなら、俺たちは社会の一員だから。

自分勝手な行動で、親、友人、会社、様々な人に大きな迷惑をかけてしまう。

俺たちもそれが分かっているから、非日常を送れるようなことを引き起こそうだなんて思わない。


つまり、そもそもこの社会で、非日常を味わおうと思うこと自体が間違っているのだ。

俺たちはせいぜい自分の掴んだ幸せを噛みしめるくらいがちょうどいい。


俺が本気で非日常を味わいたいのなら、こういった人間関係の伴うコミュニティをかなぐり捨てて、フリーダムな状態で生きていかなければならないだろう。

まぁどちらにしても戸籍上の問題でどっちにしても今の日本では無理だろうが...


お金だけをもって、今の日常を捨て、ネカフェ生活くらいならできるだろうが、その場合、どこかのコミュニティに捜索願いを出され、即アウトだ。


とまぁ、そんな感じで何を考えたって無駄だ。

そんなことを考えるのはやめて、いつも通り日常を楽しんだほうがいい。



さぁ、今日はただの平日。

俺はいつもどおり大学の授業へ向かう。

当然だけど、そのあとに友達と遊ぶ予定とかは入っていない。

なんとも寂しいものだが、大体みんなもそんな感じだろ?


俺はこんな日常に、少しふてくされながら自転車を出し、学校へ向かう。

授業まであと10分。そして大学の正門までかかる時間が5分。

正門から教室までの時間を考えると結構ギリギリである。


「少し急ぐか」


俺はそうつぶやきながらペダルを思いっきりこぎ始める。大学の正門前の信号に差し掛かると俺は時計を確認する。

残り5分。


「本当にぎりぎりだな」


そう言って前を見ると、目の前の信号が点滅し始める。


「やばいっ」


焦って俺は、今以上にペダルを早くこぎ始めるが、俺が渡るときにはもうすでに信号は赤だった。

しかし、思い切りというのは恐ろしいもので、俺はそのまま信号を突っ切ってしまう。


でもまさか、これによって人生初めてのじゃない現象を引き起こしてしまうなんて、俺は思いもしなかった。


「プップー!!」

「へっ?」


気が付くと俺は道路の真ん中で横たわっていた。


(あれ、俺って確か...)


俺はスピードに乗った大型トラックに思いっきりひかれてしまったらしい。

かろうじて動く手で頭を触ると手には大量の血がついていた。


(あれっ。これってヤバいんじゃね?)


今となっては授業に少し遅れるくらい別によかったとか、ヘルメットつけておけばよかったなどの後悔の念が頭によぎる。


しかし、先ほどの行動のせいもあり、俺はこれから死ぬようだ。


(あ~あ、もう死ぬって。何やってんだろうな...)


バカなことを考えたことが原因で招いてしまった事態に俺は若干自分自身にあきれる。

そのまま、俺の意識はどんどん遠のいていき、最後には目の前が真っ暗になった...



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どのくらい時間がたっただろうか...


ふと目を覚ますと、かすかな意識で現状を把握しようとするが、体が動かない。

そもそも体はあるのだろうか、何も感じないどころか目も見えない。

脳がおかしくなってしまったのだろうか。

そんなことを考えていると、かすかに声が聞こえる。

いや、聞こえるというより、感じるという方が正しいのかもしれない。

なんというか、脳に直接語り掛けてくる的な...


「あなたは他の人に左右されず、自分らしく生きてくれることを願っています...」


俺としては何のことだかさっぱりだが、そのあとに俺はまた意識が遠のいていく。


なんか振り回されてる感じがしていやだな~



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また目を覚ますと、俺はあたりを見回す。

今回はちゃんと体が動くようだ。

目も見えるし体も動く。


(というか、死ななかったんだな...)


俺はそう思いながら体を動かそうとするが、あまり動けない。

おそらく事故のせいだろう。

しばらくは安静にするしかなさそうだ。

俺は現在ベットに横たわっている。

あたりは静かで、療養するには快適な場所だ。

おそらくここは病院なのだろう。

俺が動き回らないようにしているのか、ベットの周りには柵が囲ってある。


ん、柵?


あれ、病院のベッドに柵ってあったっけ?


「あら、ケイン起きたのね」


俺が不思議に思っていると、20代くらいの茶髪の女性が俺によって来る。


(看護師さんか?...いや待て、なんかこの人でかいぞ!)


女性が俺に近づけば近づくほど、俺はこの人の体の大きさに驚く。

しかし、そのあとそれは俺の誤解だったと気づく。


なぜなら、女性は俺の体を軽々と持ち上げ、抱きかかえたからだ。


(おいおい、どういうことだよっ!!)


俺は焦って周りを見回すと、ようやく事態を把握する。


女性が大きいんじゃない、俺自身が小さいのだと。

そして上から見ると、俺が寝ていたところはベビーベッドときたものだ。


ということはっ!


俺は壁に掛けてある鏡を見て俺は驚愕する。



俺、赤ちゃんになってるじゃ~ん!!




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