第1章 それは、あのこのほほえみから 8


 しばらくの間、二人はしっかりと抱き合っていた。ルートンジュはエミリの髪に顔をうずめ、エミリはルートンジュの鼓動を聞いていた。

「アダムスさん。」

 エミリが顔を胸から離し、彼の顔を見上げる。ルートンジュと目が合うと、にっこりと微笑む。

「私達、両想いってことですよね。」

 両想いという言葉を知らなかったが、言葉の響きから、今の自分たちを表す最適な言葉だと察した。

「そうだな。」

「じゃあ、両想いの恋人同士ですか?」

“恋人”という言葉は自分の人生には縁のなかった言葉だ。その言葉を、腕の中の人が求めているのが嬉しかった。

「うん。」

 頷いたルートンジュの顔を見て、エミリが目をみはる。

「アダムスさん、笑った顔、すごくいいですよ。これからはもっと笑ってください。」

「今、俺は笑っていたか?」

「はい!」

 自分は笑っていたのか。前に笑ったのはいつのことだっただろうか。覚えていないくらい昔のことだ。

「お茶、淹れますね。」

 いつまでもくっついているのが恥ずかしくなったエミリは、ルートンジュから体を放して、甕の方に向かった。その近くには、昨日エミリが置いたままにした茶葉の袋が放ってある。それを手に取ろうとしたエミリを、ルートンジュは後ろから抱き締めた。

「アダムスさん?」

「ルートンジュだ。」

「え?」

「本当の名前、ルートンジュ・ラパグだ。」

「良い名前ですね。貴族様の名前みたい。じゃあ、ルートさんって呼んでいいですか?」

「好きに呼んでくれ。」

 ルートはエミリの顎を指で掬って振り向かせると、唇にかぶりついた。舌を絡ませあいながら、エミリはルートンジュの方に体の向きを変えた。 

「ん…、ルートさ、…あっ…。」

 ルートンジュは唇から離れると、エミリの首筋を舐め、彼女の胸をワンピースの上から揉んだ。エミリは甘い刺激に思わず声を上げながら、ルートンジュのシャツに手をかけて、ボタンを外し始める。

 ルートンジュはエミリのコルセットのリボンを緩める。そして、ワンピースの胸元のボタンを外して肩をはだけさせ、露わになった華奢な肩にも口づけ始める。熱く吐息を繰り返すエミリと唇を重ね合わせ、コルセットを完全に外し、床に落とす。ワンピールのボタンをさらに外して、上半身をはだけさせた。

お互いの唾液をすすり合って、エミリのささやかな胸のふくらみの頂点に指を滑らせる。いまだ柔らかな突起を摘まんだり擦ったりして尖らせる。エミリは気持ちよさそうに、鼻から抜ける甘い声を上げた。

「…ん、あっ…、ルート…さ…っ。」

「エミリ…ッ。」

 ルートンジュは、エミリのスカートの裾をたくし上げ、太ももに手を這わせた。

「ま、待って…、ルートさん…。」

 刺激を甘受していたエミリは、ルートンジュの腕に手を置いて制止した。

「あの…ここじゃなくて…べ、ベッドで、やりませんか?」

 潤んだ上目遣いで真っ赤になって言うエミリが愛おしくて、今すぐ乱暴に抱きたくなる。その衝動を必死に抑える。軽々と横抱きすると、足早にベッドに行って、そっと下ろした。自分のシャツのボタンを引きちぎるように外し、脱ぎ捨てる。仰向けになったエミリの上に覆いかぶさると、彼の長い銀髪が、エミリの周りにカーテンのように広がった。

「綺麗…。ルートさんの髪、きれいだなって、ずっと思ってたんです。」

 エミリが、うっとりと銀髪に指を絡ませる。エミリの好きなようにさせておいて、ルートンジュはエミリの腰に引っ掛かったままのワンピースを彼女から脱がせた。下着に指をひっかけてゆっくりと足の方に滑らせ、つんと上を向いたエミリの胸の頂を口に含む。

「んっ…んぁ…ルートさんッ、きもちいぃ…。」

 下着を足からするりと抜き去り、ルートンジュはエミリの足の付け根に指をやる。

「エミリ…、触って、いいか?」

 エミリは緊張した様子だったが、こくりと頷いた。

「…あ、あぁッ…!」

 エミリの入り口は、しっとりとよく濡れていた。指先で入口をくちゅくちゅと音をさせて弄る。その音が自分の耳に入ったのか、エミリは顔を真っ赤にして顔を両手で覆った。

「な、なんか…、体が変…ッ。」

「ちっとも変じゃない。エミリ、もっと感じて。」

「きゃ、きゃぁ…ッ!」

 エミリは驚いて声を上げる。ルートンジュがエミリの太ももに手をやって開かせると、その美しい顔を中央に近づけて、舌で潤いをすすり始めたからだ。

「ル、ルートさ…ッ!きたないです!」

「汚くなんかない。エミリの味がする。美味しい。」

 ピチャピチャと音を立てて舐め、舌を時折差し込んでぐりぐりと入り口を刺激する。親指で、兆しが表れ始めている突起をクリクリ弄る。エミリはびくびくと震えた。

「あぁっ、あっ、あっ、あぁん!」

「指、入れるぞ。」

「ん、んんぅっ…‼」

 エミリの胸の突起を弄りながら、もう片方の手の指をゆっくりと挿し込む。エミリの顔が苦痛に歪む。

「痛いか?」

「な…んか、変な、感じ…あぁ…。」

「力を抜け…。」

 少しずつ指を進める。根元まで入ったのを確認すると、もう一本増やす。

「ルート…さん…!」

「何だ?」

「キス…してください…!」

 請われるがまま、エミリに口づける。角度を変えながら何回も唇を重ねた。

「今…んちゅッ…ゆび、何本…んッ…。」

「ちゅッ…三本だ…動かすぞ…。」

「あ、いや、待って…んあぁ…。」

 エミリに埋めた指をゆっくりと動かす。エミリは、体内に異物が入っている違和感に体を強張らせていたが、やがて吐息に甘い声が混ざる。ルートンジュは親指で固くしこった突起を弄り、指で膣道を擦る指を速めた。エミリは強い快感に耐え切れずルートンジュの唇から離れ、甲高い声を上げ始める。

「あぁっ、あっあっあうッ、ルートさんッ!なんか、きちゃう、きちゃう!こわい!あッアッアァッ―――!」

 仰け反ってエミリは気をやった。指をぎゅうぎゅうと締め付ける膣圧を感じる。いまだびくびくと痙攣するエミリの入口から、ルートンジュは指を引き抜いた。纏わりつく液体を、エミリに見せつけるように舐めてみせた。

「汚いですよ…。」

「だから汚くない。美味しいよ。」

 カチャカチャとルートンジュはベルトを外し、逸る気持ちを抑えながらズボンと下着を足から引き抜いた。苦しいくらいに自分の分身が膨れ上がっていて、下着から取り出した途端に、ぶるん、と音がした気がするくらいに勢いよく反り返った。エミリは、荒い息を吐きながら体を起こし、ルートンジュの股間に目をやり、

「それ…ほんとに入るんですか…?」

 と、顔を引きつらせて言った。

「…今日はここまでで、やめておくか?」

「いいえ。」

 エミリは首を振って、ぽすんと仰向けに寝転がった。両手をルートンジュの方に伸ばす。

「来てください。好きな人と結ばれるの、夢だったんです。ルートさん、手を繋いでくれますか?」

「ああ…。」

 ルートンジュはエミリの太ももに手をかけて広げ、体をねじ込ませる。そそり立ってびくびくと興奮している分身の切っ先を、潤いの源にぐちゅぐちゅと擦り付けた。片手で分身を支えて、はくはくと開閉を繰り返す入口に添えた。固く張り詰めた頭の部分を、腰に力を入れて、じゅぷんと埋め込んだ。

「あ、あぁ――ッ!はいって…るぅ…。」

「ん…せまい…。エミリ、息を止めるな…。」

 ルートンジュはエミリの方に身を乗り出し、両手を握った。エミリが固く握り返す。

「む、むりぃ…ッ、あ、あぁ…!」

「エミリ、エミリ…、息を吸って…、吐いて…。」

 彼の言葉に合わせて、エミリが呼吸を再開する。深呼吸を繰り返して、少し入口が緩んだ瞬間に、彼は腰をぐっと押し込んだ。エミリが甲高い声を上げて仰け反る。差し出された胸の色づいた頂に吸いつき、快感を与えながら、腰を少しずつ推し進めた。

「ぜんぶ…入った…?」

「いや…まだ…。」

 半分ほど入ったところで彼が動きを止める。エミリは、男の分身の長大さに改めて震えあがった。自分の体が壊れてしまうのを危惧した途端に、体内に埋め込まれた熱い杭がゆるゆると動き出した。

「あ…あ…あん…。」

「は…は…は…。」

 固く張った亀頭が、エミリの膣を擦り上げる。その動きがどんどん早くなり、結合部分からくちゅくちゅと水音がする。

「ん…エミリ…エミリ…ッ!」

「ルートさ…あっぁっあっぁっ。」

 ルートンジュは滑りの良くなった膣に更に分身を捻じ込む。二人の茂みが擦りあうくらいに密着し、彼の長大な切っ先が、エミリの子を孕む部屋の入口に達した。

「あんッあんッあんッやぁッ、奥…来てるぅ…!あっぁっあッ!」

 全体を包み込む膣がびくびくと痙攣し始める。その圧が気持ちよくて、ルートンジュは無我夢中で腰を振って、快感を追い求めた。

「エミリ!あぁつ、あっ、気持ちい…ッ、奥、好きなのかッ?びくびくして、すごく…あぁ…ッ、俺、限界…だ…アッ!」

「ルートさァッ!きゃん!あん!あ!あ!すごい!はやい!あぁ!わたし…もッ、いきそう…!」

 エミリの言葉にルートンジュは我に返って、腰を引こうとした。すると、エミリが太ももで彼の腰を挟み、逃がさないようにする。ルートンジュはぎょっとしてエミリに言う。

「エミリ…!もう…出そうだから…足を…。」

「いやぁ…、ルートさ…全部、出してェ…ッ、奥にルートさんの…ちょうだいッ…!ひゃあ⁉あんッあんッあんッああッ激しい‼きもちいよぉッ!あーッ!」

 エミリの言葉を聞くや否や、堪え切れずにルートンジュはエミリの腰をがっしりと両手で掴んで、上から腰を振り下ろした。エミリの腰がベッドから浮き上がる。快感であふれ出る愛液を潤滑油にして動きを速め、ルートンジュはひたすら奥をごつごつと責めた。

 エミリはどんどん上に移動してしまう体を止めようと、両手を上げてベッドヘッドを掴み、快感を享受した。ぷるんぷるんと控えめな胸が揺れる。ルートンジュはその格好にさらに興奮し、下半身を膨らませる。

「んッんッんッ!エミリ!エミリッ!出すぞ、全部、受け止めてくれッ!あぁッあッあ――ッ‼」

「あぁッ、ルート…さ!はげし…よぉッ!来て、来てェッ!あんッあんッあッ―――‼いく、いくいくっちゃうぅ――ッ‼」

 ぎゅうぎゅうと締め付ける膣圧に低くうめいて、ルートンジュは欲望を解き放った。エミリの腰をがっしりと掴み、ぱちゅん、ぱちゅんと腰を緩やかに送り込みながら、いまだ止まらぬ種液をエミリの奥に植え付ける。じゅっじゅっと短く連続して奥を焼く熱い液体に、エミリは感じ入るように喘ぐ。

「あ…エミリ、出されて…イッてるのか…?きゅうきゅう締め付けられて…気持ちい…。んちゅ…ちゅっ…んあ…。」

「あぁん…ルートさ…やぁ…うごか…ないでぇ…あん…あん…!」

抱えた腰をベッドに下ろしたまま、抜かずにゆるゆると腰を振っていたルートンジュは、口づけながらだんだんと腰を速めた。少し前までエミリが処女だったことは、彼の頭から消えていた。意識を手放しかけているエミリの両手に指を絡ませ、唾液を咥内にそそぎながら、全身をエミリの体に密着させる。

 腰をパンパンと音を立てながらエミリに押し付け、ぐちょぐちょと音を立てて、大きく張った傘で先ほど注ぎ込んだ精液を掻き出す。

すっかり滑りのよくなった股間を擦り付ける速さがどんどん速くなり、幾度めかの絶頂にエミリが至った時、再びルートンジュの亀頭から熱い種液が迸った。エミリの首筋に顔を埋め、ちゅ、ちゅ、と肌を吸いながら、ルートンジュは詰めていた息を大きく吐く。腰がびくんびくんと震え、エミリの体を突き上げる。

エミリは奥を濡らされる快感でぴくぴくと痙攣し、掠れた声で喘ぐ。ルートンジュは呼吸を整えると、腰をようやく引いた。女の股に、抜かずに二発も注ぎ続けるなど、百年以上生きていて一度もなかった。それくらいエミリから離れたくなかった。エミリを自分のものにしたかった。

杭を抜き去られた入口から、どくどくと白濁した液体が溢れる。エミリは乳首をぴんと立たせたまま、膣口をはくはくと開閉させている。後から後から溢れるルートンジュの欲望の勢いに、エミリが喘ぐ。

「んッ…、ルートさん…出しすぎです…。」

 その言葉とエミリの痴態に、ルートンジュは頭のどこかで何かが切れる音を聞いた。

 気づけば彼はまたエミリに覆いかぶさって、寂しげに開閉する膣穴に、固くなりつつある肉棒を埋め込んでいた。

 それから何時間も、二人は愛し合った。

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