第20話 5人のお客とスペアリブ!鬼人は骨も食う!

バキュと共に次の街へと向かった。バキュは、結構長く傭兵を続けているらしく、門番や街にいる傭兵達とも顔見知りが多く、真人とトンボは絡まれることはなかった。


「冒険者ギルドがないらしいからマサトの護衛をすることにした。夜はうまい飯頼むな」


どうやら傭兵ギルドは、存在するようだが、冒険者ギルドはないらしい。昔、大きないざこざがあってから冒険者ギルドが、この街から撤退したとのことだ。


「うまいもんなら任せとけ。それでバキュは、いつまで俺達と行動を共にするんだ?」


「夜どこで屋台を開くかわかるまでだな。昼もらったホットドッグ代を渡さないと駄目だろ?このままならタダ飯食らいになっちまう」


見た目とは裏腹に意外と律儀な男なのである。


「あれは、気にしなくてよかったのに。まぁ、まずは商業ギルドに行って屋台の場所確保だな」


「いや!恩は倍にして返す!それが俺の流儀だからな。無理矢理でも渡してやる」


そんなやり取りを続けながら商業ギルドに行き、店を開けられる場所を聞く。するとまた、1番端っこであった。


「端っこばかりだな。商業ギルドに嵌められてるとしか考えられない。ちくしょー」


「ガハハハ、しゃあねぇよ。王都に付くまでに売り上げを上げて見返してやろうぜ」


真人が、嘆いているとトンボが声をかけてくれた。


「二人は、仲がいいな。戦友の如き相性だな。じゃあ、俺は傭兵ギルドで換金したら屋台に行かせてもらうな」


バキュは、二人の仲の良さを褒めながら傭兵ギルドに向かうのであった。

改めて他人から、お互いの相性の良さを言われた二人は、気恥ずかしさに苛まれるのであった。


「これはまた...客が来そうにない死角だらけの場所だな。とりあえず、ビールを頼む」


「確かに、どんどん立地が悪くなってるよ。ほい!ビールお待ち」


トンボは、護衛をしながら飲むと言い出したのだ。こんな入り組んだ死角だらけのところに、変なやつもなかなか現れないだろうし構わないかと思う真人。


「来たぞ!これくらいあれば足りるか?」


硬貨が入っているであろう袋を平然と渡してくるバキュ。


「多過ぎだから。これで十分だよ」


銀貨数枚を抜いて袋をそのままバキュに返す。するとバキュが大銀貨を取り出して渡してきたのだ。


「恩は倍にして返すと言っただろ。これが男ってもんだ」


そう言って離さないようにしっかりと握らされる。真人もこれ以上断るのは失礼だと思い受け取るのであった。


「じゃあ有り難く頂いとくな。おっ!サリルとルーベン、それにダニーまで。いらっしゃい」


「おう。来たぞ」と3人は、手を上げて椅子に座る。正直、大の大人5人が座っているのでギューギューである。


「まず、全員にビールな!その間に、うまいスペアリブを焼いてやるから」


圧力鍋にサラダ油を熱し、ニンニクを入れ香りが出たらスペアリブを加え焼き色をつける。 水2.5カップと醤油大8と酒大5とみりん大5と蜂蜜か砂糖を大5を全て加え、蓋をして高圧で8分ほど加熱。そして火を消し、圧力が下がるまで放置したら蓋を外し、汁気が減って照りが出るまで中火で煮詰めたら出来上がり。ちなみに5人前である。


「ホロホロスペアリブお待たせしました。ビールに最高に合うから飲みながら食べてくれ」


みんなが一斉にスペアリブを手に取りかぶり付く。


「うめぇ〜」「うまいな」「おいしいですね」「マサトは相変わらずすげぇもん作るな」「バリバリ!うめぇ」


みんなそれぞれ感想を言っているが、一人だけ骨までバリバリ食っている猛者がいた。流石、鬼人である。


「この柔らかいとろける肉がすげぇ!それに、ビールと合わさった時のうまさよ!最高の組み合わせだな」


ルーベンが、野生児のように骨を掴みかっ食らいながら話す。


「柔らかさもだが、この甘辛なタレもだろ?どうやったらこんな味出せるんだ?昼食った飯なんか不味すぎて雲泥の差だわ」


サリルが、ルーベンを見ながら力説している。本当に2人は仲がいいんだなと思う真人であった。


「やはりおいしいですね。骨以外すべて...若干1名骨まで食べてますが...本当に全てのお肉を食べられるのがいい。それに柔らかいし旨味が凝縮されています。この濃い味付けをビールで洗い流すと、また食べたくなる。無限にいけますね」


骨の話をしたら、バキュが俺のことかと両手にスペアリブを持ちながらダニーを見る。


「いやぁぁぁ!ここまでうまそうに食ってくれて嬉しいよ。次も出来上がるからな。スペアリブを先に完食してくれ」


そして、今日も長い長い夜が続くのであった。

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