第8話 金髪ロリになった


 リビングの中心で半狂乱な叫びをあげる俺。そこへ、


「――朝からやんややんやと、やかましい男じゃのう……おお、もう女じゃったか」


 この異常事態の元凶――自称女神ことスクナヒコナが現れる。


 頭をポリポリ掻きながら、あくびをかみ殺す全身真っ白の自称女神。

 いや、ここまできたら自称や痛い子じゃ説明が付かない。こいつは一体何なんだ!?


「てめ、もう女じゃったか、じゃねえよ! コレどうなってんだ。お前何したんだ!? 俺のナニはどこへ行ったんだよ!」


 俺の言葉にニヤリと笑うヒコナ。


「お主のナニ? ……ああ、お主のたこさんウインナーのことか」 

「たこさんウインナーじゃない。バイエルンと呼べ」

「お主のポークビッツは、今頃ハワイでバカンス中じゃ」

「ポークビッツじゃねえよ! ……って、ハワイでバカンスって何!?」

「冗談じゃ」


 こ、このクソガキ。


「お、いちご牛乳が入っておるではないか。これ貰うぞ、総子ちゃん」

「自由か!? 他人の家の冷蔵庫勝手に漁んな! あと俺は総子じゃねえ!」


 何だよ総子って和風だな。

 こちとら金髪碧眼美少女だぞ……って、美少女じゃねえよ、男だよ!


「いいから説明しろ! 俺の身体、何がどうしてこんな事になってんだよ!?」

「何を呆けたことを……どうしても何も、それを願ったのはお主自身じゃろうが……」

「ね、願ったって……?」

「忘れたとは言わさんぞ。妾は確かにこのぷりちーな耳で聞いたからの。女になりたいという、お主の切なる願いをな」

「そ、それは……」


 脳裏に浮かぶのは、昨夜の悪夢――いや、アレは夢ではなく現実だったのだ。

 だとすれば俺は言った。確かに女になりたいと願った。


「だけど、まさか本当にそんな馬鹿げた願いが叶うなんて、誰が予想できるっていうんだよ!」


 いや駄目だ、落ち着け。狼狽うろたえるな綾崎総一郎。

 全国模試でトップに立ったこともあるクールな知能をフル回転させるんだ。

 現状を把握しろ。情報を取りこぼすな。


 俺は神を名乗る白い少女、スクナヒコナを真っ直ぐに見据える。


 元凶はコイツで間違いない。

 全くもってがたい話だが……こいつが本物の神様だってのは認めざるを得ないだろう。

 俺の願いを聞き入れたヒコナが、不可思議な力で俺の身体を女に変身させたのだ。

 

 とはいえだ。百歩譲ってそこまでは理解できる。

 だけど……だけどな……。


「だからって、何で金髪ロリになってんだよぉぉぉぉッ!?」

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