決戦!!伝説3つ首竜イアク・ザード!!なのじゃ!
第85話 1/4
俺とみーちゃんはさっきまでいた空間から弾き出された。
『卵が消えた。2人ともやったのか?』
ウラ秋菜の声が聞こえる。そうか。外からだと卵が消えただけに見えたのか。
「ごめんなさい……タイムリープが乗っ取られたわ」
『乗っ取られた? どういうことだ』
「みーちゃん。俺から話すよ」
……。
「なんと!? そんなことできるのでござるか!?」
「こんな……こんなこと初めてよ……屈辱だわ」
みーちゃんは自分の手を握りしめた。
『2500年分のタイムリープを提案したのは私だ。お前のせいじゃない』
ウラ秋菜がみーちゃんにそんなこと言うなんて……アイツはアイツで色々気遣ってるのかも。
腕を組んで聞いていたレイラさんが口を開いた。
「ヤツはまたここに来ると言ったのデスね? 私が相手を務めマス」
「でも、相手は師匠が戦った時より強くなってるかもしれないんですよ!?」
「逃げていいデス。非常事態デスから。私は弟子が逃げたとしても責めマセン」
「逃げるわけないじゃないですか!? 師匠が残るのに!!」
先輩が怒鳴る。その体は震えていた。
そんな様子をレイラさんは戸惑ったような、でも、嬉しそうな表情で見つめた。
「邪魔してごめんね2人とも……でも……もう来たみたいよ」
突然。
空の上に眩いほどの光を放つ星が1つ、現れた。
星が空中を動き、絵を描く。徐々に星の数が増え、描く速度が上がっていく。
そして、全ての星が停止した時、空中には魔法陣が現れていた。
中から黄金色の光が辺りに差し込む。
そして、ゆっくりと3つの首が現れた。物語でしか見たことのない竜の顔。それが3つ。
首に続いて竜の体躯が現れる。
その見た目は、3つの頭以外はいわゆる飛竜と言われる姿をしていた。大きな翼に強靭な脚……ただ、俺がゲームやマンガで見たことのある普通の飛竜と違う。
頭、翼、脚、胴体……神々しさを感じるほど、全てが黄金に輝いていた。
「アレがイアク・ザード……本当にキングギ」
「お兄ちゃん。その感想は私達が生き残ってからにしましょう。今気を抜くのは危険よ」
「ご、ごめん。つい……」
俺達から少し離れた位置にイアク・ザードは着地した。着地した途端に地響きが辺りに鳴り響く。そして、3つの首が辺りを見回しているのが見えた。
「私が戦った時の倍はありマスね……」
レイラさんが呟いたのは、恐らく体の大きさのことだろう。
「でも、ギ、ギリギリ……生身で戦えるサイズ……かも」
怪獣映画のサイズのことを思うとまだマシだよな……。
「そうね。なんとか、まだ……」
『私の位置からの目測だと7階建マンションくらいだ。全高20mか』
ウラ秋菜の声がインカムから聞こえる。
「はは……数字で言われたくなかったな」
蝶野先輩が乾いた笑いを浮かべた。
3つ首がこちらに気付き、声を上げる。頭の中に3つの声が反響する。どうやってるか分からないけど、俺達の頭に直接話しかけてるみたいだ。そして、その声は先程聞いた声そのものだった。
「「「2500年ぶりだなお前達。いや、お前達には先程のことであったか?」」」
「どうやって再びこの地にやって来たの?」
みーちゃんがみんなを庇うように1歩前に踏み出した。
「「「ふふふ……1度目の転移時より我らの力は強くなった。今ではどの世界へも渡っていけるだろう」」」
イアク・ザードは俺達に見せつけるように翼を開いた。翼を開くとその姿はさらに大きく見える。竜の体に太陽が隠れ、辺りが暗闇に包まれる。
「ふっ。辺りが真っ暗でござる。これは古代の人間が見れば『世界を包み込む』などと表すであろうな」
「猫田先生。カッコつけてるけどガタガタ震えてるじゃん……」
「む、武者震いでござる……」
先生は脚をカクカク揺らしながら言った。俺もさっきから震えが止まらない。
「「「今の我らはまさに生きた伝説。お前達に感謝してもしきれん。約束通りお前達を喰らってやろう」」」
「それは痛み入るわね……言葉が通じるならなんとか見逃して貰えない?」
「「「馬鹿なことを。我が力の糧となる……これほど光栄なことは無いであろう?」」」
「この会話が噛み合ってない感じ。別の種族って感じがするな」
おどけているような口調とは裏腹に、蝶野先輩の顔は強張っていた。
「「「お前達のおかげで我らは目的を全て成し遂げた。東方5大竜を全て喰らい力を得た。忌々しい海竜も傘下に置いた。もはや、あの世界で我らを止められる者は、おらん」」」
「討伐不可能と言われていた竜達を全て倒したのデスか? お前絶対正面から戦って無いデスね?」
「「「おお。あの時の女か。知れたこと。我には2500年分の記憶があるのでな。奴らがいつ、どこで休眠に入るか、敵と対峙するか……全て記憶しておるのだよ」」」
「つまり、不意打ちというわけデスか。お前の力量で奴らに勝てるはずも無いデスからね」
「な、なぁ……話についていけないのは拙者だけでござるか?」
「大丈夫。僕もだよ……」
『ズルしてパワーアップしたのだけは分かるな』
「「「女。貴様への復讐も忘れておらん。貴様は喰らわず、四肢をズタズタに引き裂いた後、嬲り殺してやろう」」」
イアク・ザードの声色が変わる。レイラさんへの恨みは相当深いんだと感じた。
「なぁみーちゃん。俺がタイムリープしてさ、竜のリープ止められないかな……」
「無理よ。あの竜はもう2500年前にリープしちゃってるから。あの竜がここに来る意思がある限り、今の事態は確定事項よ。倒すしかないわ」
「だ、だよなぁ……」
『ということらしい。みんな、覚悟を決めろよ。ガキはレイラと先輩、外輪準は猫田と一緒に行動しろ。動きはさっき伝えた通りだ』
ウラ秋菜の声を合図に全員が身構える。
「「「はははっ!! なんだその構えは。我らと戦うつもりか? ……良いだろう。貴様達に真の絶望という物を味合わせてやろう!!」」」
3つ首竜の咆哮が辺りに響き渡った。
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