この超常現象ラブコメのヒロインは誰が何と言おうと超絶有能美女カノガミサマじゃっ!!!
三丈 夕六
遭遇編。じゃぞ。
祠にて。なのじゃ!
第1話 1/2
「うわぁ! 如何にもって感じの洞窟じゃーん♪」
幼馴染の
それを証明するかのように、洞窟の入り口には物々しい扉が設置されていた。
「気を付けろよ。崩れたりするかもしれないぞ。先週デカイ地震があっただろ」
小宮がスクエア型のメガネをギラリと光らせ、リュックから古い鍵と懐中電灯を取り出した。
「ソトッちは心配性だなぁ。何百年も崩れなかった洞窟だよ? 今更崩落するなんてことナイナイ」
なんでコイツはこんな平気なんだよ? もしここで俺らに何かあったら明日の新聞の内容は決まってる。
--2002年○月×日。
……学校新聞のネタ探しでホントの新聞ネタになるなんて笑えねぇ!
「さてさて、この古い鍵ちゃんは合うのかなぁ〜? お、開いた開いた♪」
扉が鈍い音を立てて開く。
小宮のショートカットの向こうには真っ暗な空間が続いていた。
「ほら、ソトッちも早く♪」
入り口から伸びるしめ縄と、埃っぽい匂いが余計に不安を煽った。
「もしかして、怖いのぉ?」
「こ、怖くねぇし! ちょっと足元確認しただけだしっ!」
リュックから懐中電灯を取り出し、俺も中へと入った。
◇◇◇
「この洞窟はね。カミサマを封印する為に作られた祠なんだって」
「封印? 普通カミサマって崇めたりするもんじゃないのか?」
「それがぁ。悪いカミサマだったらしいのよ。この町の歴史によると、1662年に起こった地震で多くの死者を出したんだって。でも、本当はこのカミサマのせいで出た死者だっていう話があるの」
「なんだよそれ。どっちかというと悪霊じゃん」
話しながら小宮はズンズン進んでいく。
「それで、幕府からカミサマ退治に派遣されたのが、我らがなっつんの
俺らの幼馴染。なっつんこと
「そして、芦屋家がカミサマを封印。それ以後、この土地の大地主となったとさ。以上!芦屋家秘蔵書「芦屋伝」より引用っ!!」
「秘蔵書って……なんでそんなもん持ってるんだよ?」
「なっつんを恐喝した」
おぉ夏樹……恐喝に屈して家宝を渡してしまうとは情けない。大方、夏樹のアレな本の在処でも突き止められたか。
「なっつんのアレな本のジャンルをね〜。なっつんの妹にバラすって脅した」
「俺の想像よりもヒデェッ!?」
◇◇◇
洞窟の行き止まりに着くと、大きなカミ棚のようなものがあった。
「えいっ!」
小宮がカミ棚の扉を開ける。
「マジかよ。罰当たりな奴」
「だってぇ。中見なかったらここまで来た意味無いじゃーん」
扉を開けた中に台座があり、何かが納められているのが見えた。
なんだろこれ?
触りたくないのに、妙に気になる。
吸い込まれるようにその物体に手が伸びる。薄い板が二枚重なっているような感じ。
「ちなみにさっきのカミサマは鏡で封印されたらしいよ」
「ひっ!」
引っ込めた手が当たり、板を落としてしまった。
「あ! ヤバっ!?」
懐中電灯を向けると、光が反射し、辺りが明るくなる。
「うわぁ……それが今話した鏡だと思うよ」
「お、お前が急に話しかけるから!」
焦って辺りを見回す。
大丈夫か? 何か出てきたりしていないか?
「なんにも起こらないね」
鏡を拾う。カミ棚の下には畳が貼られていたようで、鏡を割らずに済んだみたいだ。とにかく、また元に戻しておかないと。
でも……。
「こんな真っ暗な中、何百年も1人なんて、カミサマでも寂しいだろうな」
俺だって寂しいくらいだし。
ふと見ると、残っていた方の鏡にヒビが入っている。これは俺のせいじゃない……よな?
「なんだガッカリ。ま、伝説なんてものはこんなもんですよねー」
小宮があからさまにガッカリした様子で言った。
「さて、帰りますかぁ。来週の学校新聞のネタどうしようかなぁ」
◇◇◇
二人で山道を戻る。
小さな小川を渡り、地蔵の前を通り過ぎ、ハイキングコースに戻る。それからさらに30分ほど下ると、最寄りの駅へと続く農道に出る。
「あれ? こっちが来た道だろ?」
小宮が二股の分岐を逆の方向に曲がる。
「行きの時に見たんだけど、こっちにバス停あるんだー。ちょうど駅に向かうバスだったからさ。帰りは楽しようよ」
腕時計を見るともう14時4分。今から帰ったら夕方だよな。変に緊張していたせいか、もうヘトヘトだ。小遣いからバス代が消えるのは痛いけど、背に腹は変えられないな。
小宮の言うコースを通ると確かにバス停があった。
屋根も何も無い簡素なバス停。でも、時刻表だけはラミネートされた綺麗なものが貼られていた。
「さてと次のバスは……っと。おぉ!もうすぐじゃん! ラッキー♪」
小宮と二人でバスを待つ。
「昨日さ、舞ちゃんと話したんだよね〜」
「舞って、
「そそ。あの超美人の子ね。やっぱさぁみんな気になると思うからさ、独占インタビュー組もうかと思って」
「なんで俺も誘ってくれないんだよ」
登校の時にチラッと見かけたけど、すんげー可愛い子だった。もう、アレだ。一目惚れだねコレは。
「ソトッちだけ誘ったら不公平じゃん。でも、あの子のこと色々分かったよ。前の学校で人気者かと思いきや、意外と友達は少なかったみたい。話した印象だとかなりおとなしい子だった」
「へぇ〜。意外だな」
それなら俺にもチャンスあるかな?
「それからね〜。文芸部の
言いかけて急に小宮が黙った。
「どうした?」
「ねぇ。あの車、なんか動き変じゃない?」
小宮に言われて振り返る。遠くの方で白いバンがふらふら走っているのが見えた。
「居眠り運転か? ちょっと車道から離れておこうぜ」
反射的に小宮の手を取ってその場を離れようとした瞬間。
白いバンが俺達の目の前に現れた。
「え?」
「は?」
突然の轟音と衝撃の直後--。
俺の意識は無くなった。
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