推しの16
「うわああああん!
くそっ、
くそっ、
くそっ!
自分が憎い! 情けない! 何て駄目なやつ! あたしなんて生まれてこなければ良かったんだあっ!
だって、
だって、
だって!
『泳いで千葉』のエキストラ募集に応募できなかったのよおっ!
『あたしたちは、あたしたちを応援してくれる皆と一緒に映画を作りたい。だから、エキストラとして参加してください』
そう言ってくれたのに、そう言ってくれたのにぃっ!
出たかった。
あたしだって出たかったんだよ、本当は!
でも、応募できなかった。
だって、あたし、隠れヲタだから。映画に出ているところを職場の誰かに見られちゃったら……そう思うと怖くて応募できなかったのよおっ!
だって、だって『泳いで千葉』が話題にならないわけがない!
しろハーやふぁいからの皆がこれだけがんばって撮っているんだもん。たちまち人気沸騰で、日本中で話題になって、世界にも進出して、ハリウッドの目にもとまって、第二弾はハリウッド制作――何てことになるに決まってるもん!
そうなったら職場の皆だって当然、『泳いで千葉』を見る。あたしがエキストラとして出ていることがバレちゃう。あたしがドルヲタであることがバレてしまう!
そう思うととても応募できなかった。
世間の目を気にして好きなものを好きと言えないあたしは本当にダメな女。生きている価値なんてない。こんなことじゃかんばっているしろハーに顔向けできない。
あたしなんて、しろハーを応援する資格ないのよおっ!
もうだめだ。
こうなったら俗世をはなれて山にでも籠もり、みそぎをするしかない。悟りを開き、世間の目に負けない精神力を身につけるまで帰ってこない。
と言うわけで、お寺に行ってきます。いつか、世間に向かって堂々と『しろハーが好き!』と言える自分になったら戻ってきます。
その日までさようなら」
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