推しの14

 「ふぁいからが燃えている!

 グラミー賞奪取宣言以来、歌に踊りにトークにと、精力的に活動してきたけど、このほどついに!

 自主制作映画の制作発表!

 『他の誰かが認めて、オファーをくれるのをまつなんて、炎のアイドル・赤葉の生き方じゃない。自分たちの道は自分たちで切り開く! 自分たちの力で最高の映画を作ってみせる!』

 ああ、もう、赤葉あかば、カッコよすぎ!

 そして、赤葉にスポットライトが集まるなか、会場の端っこでひとり立っていたしろハー。一言も話す機会はなかったけど、ちょっとうつむき加減で唇を噛みしめ、両拳を握りしめていたその姿、忘れないよ。足は小さく震えていたけど、目にははっきり決意の光があった。映画に懸けるしろハーの思い、しっかり受け取ったよ。

 そうだよね。こここそ勝負だよね。ドラマで惨敗した仇を取るときだよね。このときのために、仕事の合間に黄葉おうはに芝居の稽古を付けてもらってきたんだもんね。大丈夫。今度こそ、最高の演技ができるよ。

 あたしも応援する。映画が公開されたら毎日だって見に行く。

 一緒に映画を成功させよう、しろハー!」


 「ぎいやああああ!

 ふぁいからりーふ初の自主制作映画、その名も『泳いで千葉』の配役発表。

 何と、

 何と、

 何と!

 しろハーが、しろハーが、あのしろハーがヒロイン役ぅぅぅぅぅっ!

 しかも、主人公・赤葉との悲恋って……。

 ああ、なんてこと。いくら映画のこととは言え、あんなに仲の悪かったふたりが恋人同士になるなんて。しかも、悲恋って……。

 ちょっと前までのふぁいからなら絶対、考えられないよ、こんなこと。やっぱり、『グラミー賞を取る』っていう目標が、皆をひとつにさせたんだね。

 『あたしにヒロインなんて言う大役が務まるかどうかわからない。でも、がんばりたいと思います。ううん、がんばる。あたしの大切なふぁいからりーふのため、そして、こんなあたしを応援してくれるファンの皆さんのため、絶対、やり遂げます』

 うわああああん!

 しろハー、何て健気!

 こんな前向きなしろハー、はじめて。いつもオドオドしていて、すぐに落ち込んで、後ろ向きになっちゃってたのに。やっぱりしろハー、やればできる子!

 大丈夫だよ、しろハー。しろハーなら絶対できる! あたしも全力で応援する。宣伝もする。ひとりでも多くの人に見てもらえるよう全力を尽くすよ。

 だから、一緒に映画を成功させよう!」

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