第9話
「この壺?ですよね?」
住職と、依頼人の家にいる。つぼが動くとか?
「…なにも、感じません」
「そのようだ。思い違いのようですね」
「…そうですか。でも気になって」
依頼人のおばさんは困っているようだ。
「家族の方にも話を伺いましょう」
御家族の息子と対面することになった。住職と俺とおばさんと、部屋に勝手に入る。
「なんだお前ら」
明らかに嫌そうにされた。
「この方たち、お坊さんなのよ。話を聞きたいそうで」
「壺が動いてるという話しを聞きましたか?」
住職は息子に問いかける。
「は?知らねーよ」
「少しずつ、位置が変わってるとか」
「は?」
「他の骨董は変わっていませんか?例えば、掛け軸など」
「え、他の?あの…確認しますね」
おばさんは蔵に戻った。その間、いらいらとした息子が残されていた。
「住職様…掛け軸がありません…」
驚いた表情のおばさんが戻ってきた。
「残念ですね。あの掛け軸は、呪いの掛け軸なので、売った人も買った人も呪われます。私が今日お祓いしようと思ったのですが」
住職はすらすらとしゃべる。
「ま、まじかよ!持ってるだけで呪われるのか?」
「はい。売ろうとする心でさらに恐ろしいことになります」
「そんなもん置くなよ!くそ、ここにあるから」
あ。掛け軸が戸棚より出てきた。
「これを売っても、なんの価値もありませんよ」
「そ、そんな呪いなんて知らなかったんだよ!」
「壺で興味を引いたんですね。あとは御家族でお話しください」
「…住職様、ご迷惑をおかけしました」
おばさんは深々と頭を下げてた。
…こういう依頼もある。でもお金もらえた。
「住職、よくわかりましたね」
「なぁに。壺を触ったんでね」
あー、サイコメトリ使ったんだ。物から過去を読み取るものだ。住職は得意。
「でも依頼者の方、よく黙ってましたね。呪いの掛け軸なんて嘘ついたのに」
「恐らく、息子だとわかったのだろう」
家のもの勝手に売ろうとする息子もいるんだなぁ。
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