爆乳な生徒会長が俺の家にいるのだが、これじゃあ、幼馴染と一緒に過ごせないじゃん

譲羽唯月

第1話 堅物な生徒会長に誠意を

「というか、なんで今、入ってくるのよ」

「ご、ごめん……」

「ごめんで済むんだったら、警察とかいらないでしょッ」


 生徒会長からの怒鳴り声。


 崎上隼人さきがみ/はやとは放課後の今、自宅にいるのだが、なぜか、部外者と向き合っている。


 部外者とは、生徒会長のことだ。


 学校内で一番トップな立場を維持する須々木真理すすき/まり


 そんな彼女の全裸姿を見てしまったのである。


 まさか、自宅で、こんな事件に遭遇するとは思ってもみなかった。




「あんたさ、私の全裸を見て、ただで済むと思ってる?」


 視界に映る黒髪ロングヘアスタイルの彼女は、バスタオルで胸元を隠しているものの、その爆乳具合がハッキリとわかる。

 本当に高校生かと疑ってしまうほどデカい。


「本当にごめん」


 隼人は謝ることしかできなかった。


 そもそも、なぜ、生徒会長である彼女が、自宅の脱衣所にいるのだろうか?


 それが一番の謎だったりする。




「だったら、私のパシリになりなさい」

「……え?」

「聞こえなかった?」

「聞こえていましたけど……パシリ? でも、それは困るというか」

「じゃあ、君の今の行為。話を盛って、全校生徒が見る学校の掲示板に記事として掲載するけど?」

「それはキツイよ」

「だったら、わかってるわよね? というか、私の体、君に最初に見せるとは思ってもみなかったし」

「え?」

「なんでもないから。それより、パシリになるでしょ?」

「それ以外には?」

「ないわ」

「……」


 隼人は無言になる。


 これはとんでもないことになった。


 その絶望感に今、押し潰されそうになっているのだ。


 どうにかして、うまいこと逃れようと試みるのだが、いい案が頭に浮かんでこない。


「だんまりってこと?」

「いや、違うよ」

「じゃあ、誠意を見せて」

「……わ、わかった。なんでもする」

「なんでも?」

「え、う、うん」

「わかったわ。まあ、一応、誠意があるってことはわかったから。今のところは許すわ」


 彼女は呆れた感じに言う。


「それと、今から服を着るから、脱衣所から出て行って。わかった?」

「はい」


 隼人は従うように、脱衣所から出る。




「……」


 というか、なんで生徒会長が家にいるんだ?


 ここは隼人の家であり、生徒会長とは全くクラスが違うどころか、学年も一年ほど違うのである。


 中学から、何かしらの関係性があるとか、学園祭とかで、何かしらの繋がりがあったとか、そういうのもない。


 意味不明すぎる。


 隼人は現状整理のため、一旦、リビングへと向かう。




「これは最大級の謎だよな」


 隼人が腕組をし、深く考え込んでいると、スマホのバイブ音が聞こえる。


「あれ? 着信?」


 誰かからの連絡だと思い、電話に出る。


≪お、ようやく出たか≫

「父さん?」

≪それと、今日から、あの子が来てるだろ≫

「あの子って、生徒会長のこと?」

≪そうそう、その子のこと≫

「でも、なぜ、俺の家に?」

≪それはだな、たまたま、そういう話になって≫

「そういう風な話? どういうこと? 話の流れが意味わからないんだけど」

≪まあ、話せば長くなるんだ。とにかく、その子が家に来ていればいいよ。じゃ、私は、仕事の件があるから、ここでな≫

「え? ちょっと詳しく」


 そんな問いを口にしたときには、通話が切れていた。


「どういうことだよ。何なのかわからないし」


 わからずじまいといったところ。


 隼人は今日から実質一人暮らしであった。


 父親は仕事。母親は、会社の旅行とかでいないのだ。


 だから、今日から幼馴染の遊子菜乃葉ゆず/なのはと一緒に、ゲームをしようと思っていた。

 里奈は近所に住んでいて、両親がいない時、いつも遊びに来るのだ。


「……というか、そろそろ、来そう頃合いだよな」


 このタイミングで幼馴染が来たら、すべてが終わるんだけど。


 脱衣所には、生徒会長がいる。

 しかも、着替え中なのだ。


 一応、幼馴染には連絡をしておいた方がいいだろう。


 そう思い、スマホを片手に彼女に連絡をしようとした。


 が、それと同時に、自宅の玄関チャイムが家中に響き渡る。


「隼人、いる?」


 やばい、もう来てしまったのか。


 絶望感に襲われる。


 でも、たぶん、生徒会長は脱衣所にいるはず。どちらかをうまいところ抑制するしかない。


 隼人はひとまず、幼馴染を説得しようと玄関へと向かうことにした。


「あのさ、ちょっと、外で話をしないか?」


 リビングから姿を現し、玄関先にいる、ショートヘア風な幼馴染に問いかけた。


 だが、運の悪さというのは立て続くものだ。


 隼人が玄関で幼馴染と対面した瞬間、玄関近くの脱衣所の扉が開く。


 隼人は今まさに、二人の美少女によって板挟み状態になっていた。


 これは……。

 終わりか?


 隼人は焦りながら、背後にいる先輩の姿を隠すように立ち回る。


「どうしたの?」

「いや、なんでもないんだ」

「そう? でも、後ろの方、誰かいない?」

「いや、いないよ?」

「でも、気配がするんだけど」

「え? き、気のせいじゃないかな?」

「そう? じゃあ、私、上がってもいい?」

「いいけど。その前に、外に出ようか?」

「なんで?」


 菜乃葉はわかっていないようだ。


 ここはうまいこと、外に連れ出すしかない。


 そうこう考え、隼人も靴を履こうとすると、背後から軽く足音が聞こえた。


「ねえ、誰か連れ込もうとしていない?」

「⁉」


 隼人がビクッとしたと同時。玄関先にいた幼馴染も、隼人の背後にいた生徒会長の存在に気付くのだ。


「な、なんで、生徒会長が? ど、どういうこと? 今日は一人じゃなかったの?」


 幼馴染は驚いていた。


「というか、隼人って、他の子との交流もあったのね」

「それはありますから」

「へええ」


 生徒会長は隼人の言葉に返答すると、まじまじと幼馴染の顔を見ていた。


「何でしょうか、生徒会長?」

「なんでもないわ」


 幼馴染は、生徒会長が食い入るように見ていたことで若干引き気味である。


「それと先輩、まだ、バスタオルなんですか?」

「私は着替えには時間がかかるの。それに、チャイムが鳴ったから、君に言いに行こうと思っていたところだったの」

「そういう恰好で出歩かないでください。恥ずかしくないんですか? さっき、俺のこと」

「それは言わないで? わかった?」

「……は、はい」


 隼人は無言で了承した。


 彼女は笑顔を見せているのだが、どこか企みの表情があり、怖かったのである。


 だから余計なことを言わず、仕方なく従うことにしたのであった。


「では、二人は、先にリビングの方に行っててくれない? 私も着替えてから行くから」


 と、生徒会長は自分の家のように、立ち振る舞っていたのだ。


 なんで、勝手に自分の家のように過ごしてるんだろうと思う。


 それにしても、父親も面倒な問題を引っ張ってこないでほしいと、内心、思い続けるのだった。

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