だれかの日記
よいち
第1話
祖母から貰った梅酒をソーダで割った。お酒をどのコップに注ぐのが正解なのかわからなかったので、一番お気に入りのマグカップを使った。
大きい氷をふたつ、蜂蜜のような色をした液体に落とす。しゅわしゅわと小さく音が鳴った。
マグカップを片手に自分の部屋へと戻る。ペンや消しゴムの塵が散乱している机の上にマグカップを置いた。真白なノートを棚から取り出して机の空きに広げる。そしてボールペンを手に取った。余ったもう一つの手でマグカップを持ち、冷たいお酒を喉に流し込む。
自分がお酒を飲んではいけない年齢である事は知っている。耳にタコだかイカだかできるほど大人たちから口酸っぱく言われて育った。
しかし今時、大学生にもなってお酒を飲まない奴なんか殆どいないだろう。いや、それとも私の周りの人間だけなのだろうか。
別にお酒が好きな訳ではない。そもそも、何か飲み物を飲むという行為自体、昔から苦手だった。ジュースなんて飲みたい時にひと口飲めたらそれでいいし、食事中だって必要だと思った事はない。
それでも不意にお酒が飲みたくなるのは、きっと、ただアルコールを摂取したいから。酔った時の、頭がぐあんぐあんと回って世の中の全てがどうでもよくなる、あの感覚が味わいたいのだ。
今日も寂しい夜だ。でも何が寂しいのかはわからない。ただただ胸が切なくて息が苦しい。
家族はいる。祖父母は父方も母方も元気にしている。友人も恋人もいて、それでも寂しいと思うから変だ。とても変だ。でも寂しい。
だから今日も何かを書かずにはいられない。この気持ちをどうにかしたくて、つらくて、くるしくて、だから。
私はちゃんとした大人になれるだろうか。この落ちこぼれて、終わらない坂道を延々とごろごろ転がっていく私は外に出て働いたり、家庭を持ったり、子供を産み育て、そして平々凡々に死ねるだろうか。
飲み込んだ梅酒のソーダはとっくにぬるくなっていて、吐き出したくなるくらい不味い。
だれかの日記 よいち @yosame_hiiragi
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