第20話 時限爆弾

【日付不詳】


 ある日友達鳥に呼び出され、魔法のダガーを渡された。

「やる」

 見てみると低レベルクエストでもらえる報酬のダガーで病気抵抗+50という優れものだ。

 問題はこのEQには今のところ病気攻撃をするモンスターはおらず、このダガー、ただのゴミアイテム。貴重なバンクの容積を埋めるお邪魔アイテムということだ。

 このようなゴミを他人に押し付けるのが友達鳥の友情の表現だとは当の昔に分かっていた。

「ありがと」

 それだけ言ってバッグにしまった。

 友達鳥が他人に礼を言ったことは十年の付き合いの中でわずかに二度しかないが、私は礼儀正しいので毎回言う。


 それから四年が経過したころ、EQに病気属性を持ったボスモンスターが実装された。おかげで例のダガーのクエストに人々が殺到した。病気抵抗属性を持ったアイテムはこれしかないのだから。

 たちまちにして友達鳥に呼び出された。

「以前に『貸して』おいたダガーを返して」

 いつの間にかゴミを押し付けたことが私に貸したことになっている。

 呆れた。

 心底呆れた。

 無言でダガーを渡す。

 友達鳥は消えた。


 ここまで人間関係を自分の利だけで動かす人間は珍しい。恥というものを知らないのか。

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