第3話 冷たくて危険なもの

【EQ日記 7月24日 EverFrost】


「この凍った川の向こうだよね。巨人の城って?」

 友達鳥が操るシャーマンキャラのエキドナが言った。

「あのー」付いて行くぞコマンドを設定しながら、尋ねてみる。

「もしかしたら、行くつもり?

 一撃200ダメージの巨人が棲むって噂だけど」

「嫌なら、やめとこ」

 素っ気なく友達鳥が答える。友達鳥にしては物分かりが良い。何か悪い物でも食べたのかしらん。

 ちょっとばかりほっとした。

「んじゃガードポストまで帰るよ」

 友達鳥が走り始める。

 ずいぶんと走ると、どことなく見覚えのあるガードポストへ到着。

やれやれ。

 奇妙だ。いつもいるはずのガードがいない。用足しだろうか?

「この横のは巨人の城?」

「へ?」

 隣を見てみると、まるで城塞のような遺跡がある。

 はて、こんな所に建物あったっけ?

「遺跡でしょ。ここらに巨人の城なんかあるわけがないし」

 のこのこと、わたしの操るパラディンキャラが前に出た。

「でも本当に城に見えるねー。ちょっと覗いてみよ」

 中に入る。がらんとしている。ほら、無人の遺跡だ。なーんにもいない。ぐるりと周りを見渡してみた。

 上から覗く巨人と視線が遭う。


 問い:大木のようにでかくて、ぶらぶらして、冷たくて、とっても危険なものなーんだ?


 答え:氷の巨人の腕。


「うひゃあああああああ」

 逃げた。

「あー、ここ巨人の城の位置だ」

 友達鳥が、のんびりとした声で言った。

「川の分岐点で方向を間違えたようねー」

 嘘吐きめ。


 本日の教訓:友達鳥は怖い。平然と人を騙す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る