ダンジョンで出会った天使と最底辺探索者は空を見上げる。~モンスターカードを集めてハズレ才能カードコレクターは覚醒する~
御峰。
第1話 弱者の仕事
僕が生まれる少し前。
世界に突如として現れたダンジョンによって、世界は大きく変わっていったそうだ。
一番の問題はダンジョンから溢れた魔物――――スタンピードによる被害だ。
当時使っていた銃火器があまり通用せず、多くの被害を被ったのだが、それと同時に人類に与えられた『才能』のおかげで、漫画のように戦える人々が現れ、魔物を直接倒せる者が現れた。
それから二十年。
生まれてから十歳の誕生日に開花する『才能』によって、それからの人生が大きく変わるようになった。
身体能力の才能を持つ者、魔法が使える才能を持つ者、魔物の素材を加工できる才能を持つ者など、数多くの才能を持つ若者が溢れるようになった世界。
僕も十歳の時に『才能』が開花した一人だ。
けれど…………。
「よっしゃああああ! 今日も大漁だぜ~!」
「兄貴! さすがです!」
地面に転がっている緑色の人型魔物ゴブリンの亡骸が二十体も転がっている。
その中心で、返り血一つ受けず鋭いロングソードを持ち声を上げて笑うのは
その取り巻きの少年たち4人が拍手をする中、俺は必死になって転がっているゴブリンの死体を
ゴブリンの胸元を開くと、強烈な悪臭が僕を襲うが、そんな事に驚く事なく、中で小さく光り輝いている紫の宝石のような石を取り出す。
倒れている亡骸の分も全て行う。
この石の名前は『魔石』。
世界にダンジョンができて、中から魔物が現れるようになって悪い事ばかりではないのが、この魔石の存在だ。
魔石の中から特殊な方法でエネルギーを抽出して電力を産む事ができて、魔石は環境にクリーンなので環境に異常を全くもたらせずに大きなエネルギーに変換できる人類のためのエネルギー源となっている。
「おい、雑魚!」
「は、はい!」
「急げ!」
「す、すいません! 軍蔵さん!」
僕に向かって怒りを飛ばすと、取り巻きから笑い声が上がる。
「あいつ今日も喜んで魔石採取しているぞ! きゃーはははは!」
「
僕を罵る声を聞き流しながら、自分の仕事を全うする。
別に
生きるために仕方なくやっているだけ。
そう思えば、誰に何と言われようが割り切ってやれる。
全ては――――家で待っていてくれる妹のために。
「ぐ、軍蔵さん! 魔石二十個集めました!」
「くっくっ。よくやった雑魚。これからも頼むぞ?」
「は、はいっ! お仕事ありがとうございます!」
この
それでも数少ない僕を使ってくれる人なので、雑魚と言われようが無能と言われようが我慢できる。
「それじゃ今日は帰るぞ!」
「「「「はい!」」」」
先頭に軍蔵、続いて取り巻き、その後ろを五人分程離れて僕が歩く。
魔石採取のためにゴブリンの返り血を浴びているので、悪臭がするのだ。
近づきすぎると怒られるのでこの距離を維持しながら追いかける。
ダンジョンの最下層から外に出ると、空高く聳え立つのは、通称ダンジョンと読んでいる超高層塔だ。
突然現れたダンジョンは、それまでの人類の物理法則を全て無視して、世界のあらゆる場所に現れては空高く聳え立つ。
全ての塔が雲よりも遥か高くまで伸びており、上空から確認した映像だと宇宙の一歩手前まで伸びていた。
圧倒的な存在感を放つダンジョン入口から近くにある人工物の大きな建物の中に入っていく。
こちらは『買取センター』と呼ばれている建物で、ダンジョンで手に入れた素材を買い取ってくれる。
待合場所に軍蔵たちが座り込んで待つ間、僕は慣れた足で整理券をとって列に並ぶ。
ゴブリンの返り血は他の魔物よりもずっと臭いから周囲の人達が嫌な表情を浮かべて僕だけが列の前後に空きができている。
その様子を見ていた軍蔵たちが指をさしながら大声で笑いこけていた。
列が進み、僕の番となる。
「いらっしゃいませ。本日もお疲れ様です」
「ありがとうございます。こちらの買取をお願いします」
受付嬢の前で魔石二十個を取り出す。
「Fランク魔石が二十個ですね。では、一つ1,500円となり、30,000円となります」
「あ、全部千円札でお願いします!」
「かしこまりました」
慣れた手付きで魔石を乗せたトレーを後方にある採点板に乗せると、合格の文字が出る。
実は素材の販売の時、素材の傷の具合では買取不可となる場合がある。
僕のような素材採取を生業にできるのも、採取が難しい素材とかもあったり、魔石を体内から取り出すのも大変だったりするからだ。
「
「ありがとうございます」
軍蔵からの仕事は嫌味は言われるし、馬鹿にされるけど、密かに『買取ポイント』が貯まるのを楽しみにしていた。
これは契約上僕のモノで、実は報酬よりもこちらが狙いだったりする。
買取が終わって軍蔵たちの元に戻り、今回換金したお金、千円札三十枚を渡す。
「よくやった。これはお前の取り分だ。雑魚」
そう話しながら千円札二枚を渡して来る。
仕方ないけど、戦う術がない僕が魔石を取り出す仕事で稼げる額はせいぜいこれが限界だ。
帰り道も臭いだの、汚いだの言われながら買取センターを後にした。
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