第4話


数時間後。




「いやー本当に助かったよ……ありがとう」


 ものすごい広さの圭佑の豪邸の中にあるさらにでかい圭佑の自室に通された太郎と戦隊部一同。

 部屋の中は特撮ヒーローマニア丸出しのコレクションの数々、ポスターも書籍もDVDないしビデオ全集……同じくマニアな山部長は目を輝かせて見ていた。花奏は素面の戦隊たちの写真集を見つけ眺めている。

 コレクション数にさすがおぼっちゃまだと太郎はやっぱり圭佑が憎くてしょうがない。


 つい最近まで戦隊でありながらも屁っ放り腰で助けを乞いていたのだが、いつものようにクールに振る舞う圭佑。

「あんなのフェアじゃないだろ、だから僕は助けたまでだ」

「そうかい、童貞バンドのボーカルくんも気が弱そうに見えて正義感あるんだなぁ」

「なっ!」


 やはり女子2人いるところで童貞というキーワードを使われるのは抵抗がある太郎。赤面すると蘭も花奏も少し苦い顔をしている。


「THE DOUTEISはもう解散したからもうそのワードは使わなくていい、太郎って呼べ」

「そうだったな、君にはその名前があったな。懐かしい、太郎」

 圭佑は鼻で笑った。昔からこんなやつだった、と思いながらも部屋に置いてあるおもちゃを見てこのおもちゃを子供の頃に見せびらかされたことを思い出した太郎。


「懐かしいなぁ、昔貸してあげたのに『僕はお前に借りたくない』って意地張ってたなぁ。覚えてる?」

「そうだったかなぁ……お前よりも蘭ちゃんと戦隊ごっこする方が本格的で楽しかったなぁ」

「見ていて羨ましかったよ。でもいつも怪人で蘭に負かされていたのを遠くから見ていたよ」

 見られていたのか、と太郎は顔をしかめたが蘭も圭佑も互いのことを呼び捨てにしているのは2人が中学生の時に付き合っていたから。それを知ってショックだった太郎が悔しくてTHE DOUTEISを作り童貞を貫くことを決意した出来事であった。

 だが2人は去年に別れて圭佑はすぐ新しい恋人を作って戦隊部でコンビを組んでいたのだ。


「お前は昔からこういう戦隊モノ好きだったもんな、家も裕福だからこんなにもたくさん揃えられる」

「ふん、俺は三男坊だ。上の兄貴ばかり可愛がられて俺は欲しいものを買い与えればいいって親に見放されている」

「えっ」

 いつもの圭佑の顔ではない。確かに彼の兄2人は成績優秀で首席で卒業しているが圭佑は部活動を許されていない特待クラスではなくて一つ下のクラス。


「だからこっちも自由にしたくて戦隊一年やってモデルや俳優にステップアップしようと思ったらこのざまだ。車椅子じゃもうランウエイも歩けない……」

 彼は戦隊経験を踏み台にしようとしていた1人であった。


「はぁ、怪我もして恋人にも去られて情けない。もう俺は戦隊は無理だ、って言ったら部長に引き止められたが抵抗して口論になってしまって怪人に襲われそうになった……はぁ。なんで君は俺を助けたんだ、喰われろ……って思ったんじゃないか」

 そう圭佑に言われてドキッとした太郎。すると圭佑の目の前に蘭が出てきて平手打ちをする。部屋の中にいた一同あっけに取られた。


「ほら、少しのことで悲観的になって不幸な俺は可哀想だろっていうの……昔から同じじゃない。気高くて傲慢な仮面の下は可哀想な弱気な僕ちゃんを隠すためだったのよね」

 蘭はそう捲し立てる。太郎は子供の頃から戦隊ごっこになると気が強くなる蘭の時を思い出した。弱いものいじめされて1人にされている彼と遊んでいたのは蘭だけだった。


「山部長も言ったじゃない、車椅子でもしている戦隊もいるって。それだけで辞めるだなんて……見損なったわ。怪人に食べられそうになってたけど下手したらあなたが怪人になってたわ。よく考えてちょうだい!」

 と言い切って蘭は部屋から出て行った。太郎はそんな蘭を追いかけた。

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