(二)-15

 彼が私の目の前に立つと、彼は床の方に向いていた彼の左手を上に向けた。彼の手に握られていたのは個包装されたキャンディーであった。星やロケットのイラストがあしらわれた包装には「ウルトラカミオキャンデー」と描かれていた。

「週末に飛騨高山の宇宙観測所に行ってきたんだ。これはそのお土産」

 彼はそう言った。初めてまともな日本語を彼の口から聞いた気がする。

 私は彼が粗野に握ったたくさんのキャンディーを、両手でひしゃくを作って受け取った。

 私が小さく「ありがと」と言って彼の顔を見た。彼はすぐにキャビネットの方を向き直ってしまったが、少し顔が赤くなっているように見えたのは気のせいだろうか。


(続く)

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