青天の……
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どうもこんにちは。
年齢=彼女いない歴の自分は当然独身で、でも、まぁ、不便はしていないし、30歳になったら魔法使いになれるなんて巷で聞いたりもしましたし。楽しみだなぁなんて……。
いや、うん、本当になれるとは思ってないですよ。
よく、
そう、「でした」。
トンネルを抜けるととそこは……、のノリで言うならば、目が覚めればそこは見知らぬ世界でした、です。
ちょうどその頃に巷では異世界転生やら異世界転移やらの物語が流行っているということは知っていました。
普通であれば、「根暗」「陰キャ」「堅物」の三冠を達成している僕には、かなり縁遠い文化なのですが、唯一の知人でもあるアパートの管理人さん(62歳)はかなりの「オタク」であり、管理人さん伝いで情報は入っておりました。
今の状況、確実にいくつか読ませていただいた物語そのものでございます。
ただ、僕の場合、事故にあったわけでも、勤め先がブラックで過労だったわけでも、通り魔にあったわけでもございません。
堅物であるが故、横断歩道で信号無視もせず、歩きスマホはもってのほか、会社は至ってホワイトで、定時上がりの週休二日でございました。
とある休日の午後、日も傾いてふっくらとした布団を取り込んだときでございます。
おひさまの匂いと温かさに、思わず取り込んだ布団にダイブしてうたた寝をした時。
「もぉ~、マジ最悪。殺してやりたいけどそれはまずいよねぇ。どうしてやるのが良いんだろ? っていうかほんと死ね!」
と、どこからともなく非常に物騒な声が聞こえてきました。
「なぁにが『俺様の隣に立つならもっとセクシーでないと』……だ。ハッ! ふざけんなっての。ドレスコードってのがあるんだよ! 馬鹿なのか?! いや、馬鹿だったわ! 第一、お前に素肌見られるんなんて何の罰ゲームだ!」
なんだかよくわからないですが、その声は非常にお怒りでした。
でもまぁ、内容を聞く限り、どうやら声の主の言っていることは正しいように思います。
「まぁ、俺様とか言ってる時点で鬱陶しいことこの上ない気もするよね」
僕がそう呟いたときでございました。
「え?! 何? もしかして……。ちょ、まじで? めっちゃ繋がってんじゃん!」
と、弾むような声が聞こえ、更には、
「まじかぁ! デブでもなくガリでもなく、筋肉もそこそこ、超絶普通男子なんて理想そのものなんだけど、ラッキー過ぎない?! 現実だよね?」
……、明らかに自分のことを言っていると分かりました。
っていうか、どっかからこちらを見ているのか?
辺りを見渡し、最後に見上げてみれば、薄紫が美しいでっかい瞳が僕を凝視していたのです。
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