バインバインになりまして(泣)

御手洗孝

 生き辛い。それはある。


 生まれてこの方モテたためしはないし、周りは自分に勝手にキャラ付けして影で笑うし、働いた給料は税金という名の天引きによってかなり減らされて手元にやってくるし。

 モテないのは仕方ない、だってそういう努力はしていないし、今更面倒っていうのもある。……いや、見栄張ってるわけでも、僻みでもなく、マジで。

 キャラ付けされてもまぁいいか、だいたいそのキャラ付けは正解している。

 人付き合いは管理人さんぐらいでほぼ無いし、陰キャ、根暗と言われる素質は十分すぎるほどあるし……。

 ただオタクというキャラ付けは不正解。

 オタクと言われる人たちの知識量と熱量は僕に存在しない。

 こんなのと一緒にされたオタクの人がかわいそうになるくらいだ。

 人並みに漫画を読んだり、ゲームはやるけどそこまでドはまりすることはない。

 第一、最近は自分が好きで購入した漫画を読むこともなければゲームをすることもない。

 管理人さんにゴリ押しされて読んだりプレイしたりしているばかりだ。

 お金はあればいいけど、税金が減ることはないんだし、収入もこれ以上増えることもないだろう。

 転職するほどのスキルは持ってないし、何より今の会社はホワイト企業そのもので、給料だって税金の天引きがなければそれなりに貰っている。

 ただ、手元の金を増やす方法も分からないうえに、投資だのギャンブルだのは怖くて手が出せないから、もらっている以上のものがないのは仕方ない。

 働いて、屋根のある自分の城があり、日々食べて行けて、娯楽もそこそこ楽しめる。

 平々凡々。

 人生、波風立てず、ノラリクラリで平穏に過ぎて生きていければ御の字だ。


 そう思っていた。

 あの瞬間までは。



「な、なんてこと……。こ、こんなことって……」

 僕は目に入ってきた光景に叫ばずにはいられなかった。

「ヴァ、ヴァインヴァインじゃないかぁぁーーー!!」

 僕のこの叫びは辺りにこだまするように響き渡り、以後、「バインバイン」は代名詞として使われることとなる。




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