第26話 生物学者

 ロックはサルボボ国の首都に連れてこられた。ここら辺は山が多く、街は比較的平らな所にだけ、点在していた。ムサシノ国は平地が広く、街も発展していて人口も多い。サルボボ国の方が人口は少ないはずだった。

「ようこそ、生物学界の第一人者、ロック氏よ。」

後ろ手に縛られたまま、ロックは大きな建物の大広間に連れて行かれた。

「何の真似だ。こんな扱いを受ける筋合いはないぞ。」

ロックが言うと、

「それもそうだな。おい、手かせを解け。」

軍人だが、一番偉そうな人物がそう言った。ロックの手かせは外された。

「手荒な真似をして、すまなかった。私はこの国の将軍だ。君にお願いがあって、来てもらったのだ。」

将軍はたいそう豪華な椅子に座っている。ロックは跪かされていた。この国は、どうやら軍事国家のようだな、とロックは思った。

「君の論文はすばらしい。君ならば、我が国の窮状を救ってくれると思ったのだ。」

将軍は勝手な事を言っている。

「何が望みだ?」

ロックが問うと、

「我が国は、小麦が出来ないのだ。ほとんど収穫が出来ない。小麦がないと主食がままならんのだ。何とかならんかな。」

将軍は座ったまま、肘掛けに肘をつき、片方の拳に顎を乗せた。

「トレードすればいいじゃないか。ムサシノ国には小麦がたくさんある。こっちにはラブフラワーがたくさんあるんだろ?それを交換すればいい。」

ロックはそう言ってから、ふと思いついた。

「ラブフラワーの殖やし方を知っているのか?」

そして、そう聞いた。

「ああ、知っている。実際に殖やしているぞ。」

将軍はあっさりと認めた。それならば、とロックは考えを変えた。

「俺とトレードしないか?ラブフラワーの殖やし方を教えてくれたら、ここでの小麦の育て方を教えてやる。」

ロックがそう言うと、将軍は考え込んだ。そして、

「しばらく待て。諮問機関に相談する。」

と言うと、数人の軍人を伴って部屋を出て行った。ロックは近くの小屋に移された。

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