第12話 愛しい人
カフェの開店時間になろうと言うのに、レインの姿が見えない。ロックはあちこち探し回った。
「あれ、レインさんどこ行っちゃったんだろう。」
畑の方へ回ったが、やっぱりいない。
「あの、レインさん見ませんでした?」
カフェにいるメタルとアイルにそう尋ねたロック。しかし、二人とも知らないと言う。
「そういえば、シルクもダイヤも来ないな。そろそろ起きて来るはずでしょ。」
掃除を終えたアイルがそう言って、
「ちょっと部屋を見てくるよ。」
シルクとダイヤの部屋に呼びに行った。だが、いないのですぐにカフェに戻ってきた。
「おい、二人ともいないぞ。」
アイルの言葉に、メタルがハッと顔を上げた。
「なんだ?どうして3人ともいないんだ?」
そこへ、
「おはようございまーす。これ、今日の花・・・って、あれ、ダイヤさんは?」
ハイドが畑から花を摘んで持って来た。4人は顔を見合わせた。どうもおかしい、そう察した瞬間、
「僕、ちょっと情報収集してくる!」
アイルはそう言い残し、店を走り出ていった。
アイルが程なくして戻ってきた。
「どうだった?」
ロックが食い気味に質問する。
「うん、あの3人かどうかは分からないけど、まだ暗い内に畑を向こうへ歩いて行った人物がいたって。」
流石アイル、素早く聞き込みをしてきた模様だ。
「向こうへ、か。」
ロックが言うと、
「あの丘の向こう・・・って事か?」
メタルが言った。
「どういう事ですか?」
ハイドが血相を変えて聞く。
「ああ、昨日客の軍人たちが話してたんだ。ラブフラワーをあの丘の向こうで見つけたって。」
メタルが言った。ロックとハイドは店内にはいなかったので、その話は初耳だった。
「え!じゃあ、レインさん達はラブフラワーを取りに行ったって事ですか?まさか、子供が欲しいって事?」
ロックが素っ頓狂な声を上げた。
「えー、まさか。高く売れるからじゃないか?」
アイルが言う。
「だとしても、もう戻って来てもいい頃だよな。カフェの開店時間には間に合わせるつもりだから、何も言わずに出て行ったんだろうから。」
メタルが冷静に言う。
「畑の向こうから帰って来るなら、もう見えていてもいいのに、誰もいないですよ。」
ハイドが不安そうに言う。
「うーん、とにかくカフェの開店時間になってしまうし・・・。レインさんがいないと料理がなぁ。とりあえずランチの時間までは何とか、俺たちだけで回しましょうか。」
ロックがそう言って、カフェは開店した。
だが、ランチの時間になっても3人は戻って来なかった。とにかく店は閉めた。4人がテーブルに座って考え込んでいると、急にロックがハッとした仕草を見せた。
「今、聞こえませんでしたか?助けてーって。」
ロックがそう言い出した。
「聞こえました!ダイヤさんの声が!」
ハイドも言う。
「今すぐ助けに行こう。」
メタルもそう言って、3人はガタンと椅子を鳴らして立ち上がった。
「ちょっと待った、行くならちゃんと準備しなきゃダメだよ。どこを探す事になるか分からないから、ランプとかその燃料とか、それから食料も一応持って行った方がいいし、あと着替えや毛布も。」
アイルが色々考えながら言って振り向くと、3人はすっかり荷物を準備してリュックを背負う所だった。
「え、あれ?まって、僕も準備するから!」
アイルが言うと、メタルがポンと袋を投げてよこした。
「お前の分だ。あと、着替えだけ入れろ。」
メタルが言った。
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