第10話人と夢

夢は誰にでもある


心の中をルーペで眺けば失神するほど


細胞の様に蠢いている


小さな細胞どうし いつもつぶしあいをしている


それを「欲」と呼んでも良い それを「狂気」と呼んでも良い


だから終わらない


今はまだ終わらない


少しずつ欲深い細胞が大きくなり


またつぶしあいを始める


繰り返される いつまでも


細胞は果てしなく 限りない


大きさを増した細胞は


窮屈に互いを圧迫しあう


命あるのだから それこそ生きづらい


つぶしあいは終わらない


細胞と細胞の間に人がいる


今にも圧し潰されそう


今にも形は無くなりそう


人の姿が見えなくなった時


一つの細胞が生まれた


全てを統合できたのかもしれない


命あるものは言葉を止めない


「ほら 夢が歩いている」


「沢山の夢が歩いているよ」


私達は夢で できているよ


夢は造り上げた産物なのだ


命を得た瞬間 忘れ物をする


きっとそれを思い出せずにいる


忘れ物 それはもしかして


「私達が夢でできている」


そういうものかもしれない


「ほら 沢山の夢だね」


「今この瞬間も夢は生まれているんだ」

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