第11話
「もう、驚かないって思ってたんだけど、、、」
収穫物を置いたスティアが orz になっている。
「軽く驚かそうとは思ってたけど、あそこまでとは思わなかった」
『さもありません。遭遇以来ポンコツ化が激しいとはいえ可哀そうに』
ソフィアとの会話は基本念話みたいな感じだからスティアには聞こえていないのをいいことに割とひどいことを言っている。
「普通、野営地のすぐそばにいきなり湯気の立つお風呂ができてたら驚くわよ!
というよりハンターは基本野営中にお風呂入らないの‼」
立ち直ったスティアに両頬っぺを摘まんで延ばされている。
「私もやるー!」
なぜかヘレナも参加してきた。
「えっ 長期間風呂入らないの?、、、ばっちいー」
「しょーがないでしょー!毎日湯船作ってお湯張ってたら魔力なんていくらあっても足りないし、魔獣攻撃するときに使う分がなくなっちゃうし、、、
だから、、、野外でお風呂は入らないの!
ばっちくないもん、、、、、」
からかい過ぎていじけてしまった。
体育座りで森の方を向いてたそがれている。
反省。
「ごめん からかい過ぎた。スティアがあんまり可愛過ぎてつい、、、許してもらえる?」
座っているから10歳の身長でも顔に手が届く、頬に優しく手を当ててこちらを振り向かせ、顔を近づけて瞳を見つめる。
もうちょっとでキスできる距離だが、したらこじれる?
ッーーー「あなたほんとに10歳⁉ちょっと手馴れすぎてない‼⁉」
真っ赤になってそっぽを向いている初心なエルフに言われてもな。
『よっ、女殺し!』
よっ、おんなごろし!
ソフィアうるさい。ヘレナは念話まで使ってそんな言葉覚えちゃいけません。
◇
「はい、今日は肉のにおいがつくから、お風呂はご飯食べてからねー。それじゃ焼いてくよー」
ソミュール液につけてた肉を水に漬けて塩抜きしながら夕飯準備。
筋切りして塩コショウした500グラムを熱して油をひいたスキレットに乗せる。ジュワー!と大きな音とともに肉の焼けた芳ばしい匂いが立ち込める。焦げ目がついたら返して四方を焼く。中まで熱を入れるのに保温して少し休ませている間にもう一枚を焼き始め、休ませ終わったらもう一回温めて適当にカットして出す。(繰返し <※肉の焼き方は調べただけでも多々あり拘りの強い方が多いそうなので、それっぽく書いていると思って頂ければ。自分が正しいと思ってるやり方で焼いて美味しくて当たらなければどうということはな・・・いいんじゃないかな>
横で涎を垂らしそうになりながら凝視していた二人の前に置いておいた木皿に焼きあがったものから順に載せてゆく。
「美味しいですー!噛んだら美味しい味がどんどん出てきて、もったいなくて飲み込めないです!」
という割にはすごい勢いで積んだ肉が減っている。
フォークに刺した肉の残っている筋をちぎるために腕も使って食べている姿は可愛いけど、歳とって誰かに何か頼むとき40秒で支度させそうだ。
「本当ねー。思ってたよりも柔らかいしすごくジューシーで美味しいー。地竜の肉なんて高くて食べたことなかったけど、これなら高級食材になるのもわかるわ。討伐難易度が高いからだけじゃなかったのね」
スティアがうっとりしながら味わっている。
「次は僕の故郷で一番メジャーなタレ、軽くつけて食べてね」
「「これも美味しー!」」
僕も合間々に食べながらどんどん焼いていく。
食事が進むとスティアのペースが落ちてきた。
「わ、私、そろそろ限界、、、美味しいからって食べ過ぎた、、、」
「まだいっぱいあるよ?塊一個分も食べてないじゃない。」
「あなた達が食べる量、一般的じゃないわよ?」
大食いチャレンジに失敗した人みたいな顔色のスティアに食後のお茶をだし、僕たち二人が食事を続行しようとした時、それが来た。
100メートルの上空に鮮烈な紅色とオレンジの入り混じった炎の筋が巨大な魔法陣を画きだしてゆく、画かれた図形からは陣奥に内包するエネルギーを抑え切れぬように紅蓮の炎が激しく噴出し。噴き出した炎は太陽表面をうねるプロミネンスのごとくアーチを書いて内部へと戻ってゆく。
陣が完成した瞬間、中心から直視できないほどの眩い光を放つ光球が生み出された。光球は僕たちの頭上30メートルまで降り、爆発、それにより発生した光で周囲全てを白に染め、のちに出現した時と同じく唐突に収束。光球がありし場所、今そこは静寂にして何も無い。
「あれ?」
いまのなに?
「こんばんわー!来ちゃった!」
後ろからの声に振り向くと、ジーパン、Tシャツ、サンダル姿に袖まくりジャケットをひっかけたアマテラス様と、同じような格好のとゆけさんがお鍋を持って立っていた。
「ちょうど晩御飯の時間だったから、ちゃんと食べてるか心配でちょっと覗いてみたのよ。そしたらさっそく美味しそうなお肉食べてるし、ヘレナちゃんがこっちに来ちゃってからご飯の時が静かすぎて寂しくなっちゃってたし、ちょっとお邪魔しちゃおうかなーって?大丈夫かしら?」
熟女と言うには早いが大人の艶っぽさを漂わせた女性が、潤んだ目で見つめながら膝に手を置き、中腰で目線を合わせ胸を強調するポーズでのお願い。
「はい!喜んで‼」
ヘレナは喜んでアマテラス様の腰に抱きついて話をしている。
僕は とゆけさんからお土産の芋茎と豆腐の入った味噌汁のお鍋をもらい、お返しに地竜の肉塊の残りを帰りに渡す約束をする。ここのところアウトドアの豪快料理ばっかりだったから、味噌の匂いがたまらない。
スティアはと見れば、恍惚の表情で前を見つめていた。口を少し開いて喘ぐように浅く呼吸している。心配になり近づいて顔を覗き込むと、怯えていた小さい子が心から安心して甘えるように抱きついてきた。今すぐキスして抱きしめたくなるくらい色っぽいんだが。
「スティアちゃんなら大丈夫よ。
神族が地上に降りた時に 地元の人が私たちを直接見ちゃうと感覚がおかしくなっちゃうの。それを防ぐのに見ちゃった人は私たちがいる間、意識が飛んで表面的な感情とか記憶力とかが止まってるだけだから」
「よかった 会ったばかかりの時も失調してたから、そのぶりかえしかと心配だったし」
アマテラス様がそっと耳打ちしてくる。
「今こそスティアちゃんの想いとあなたの心を開放し、共に思いの丈を遂げる時よ!この状態だと本音でしか動かないし、もし嫌いなら顔近づけた時にあんな蕩けた顔しないから。この子あなたの事大好きよ。
若人達のたぎるリビドーなんて、おばさんにはお見通しなんだから♪!」
いえ、腰に手を当てて僕を指差しながら決め台詞みたいに言われても、、、
「今なら時間停止プレイごっこもできるわよ。薄い本みたいに」
「同意もなしにしませんて、なんでそんなの読んでるんです?」
「一番下の弟が帰省した時に使う部屋を掃除してたら、電気切り忘れてたパソコンのマウスを動かしちやったの そしたら画面の電気が入って そこに映ってたの読んじゃったんだけど、弟には内緒よ?」
高天原がネットミームに汚染されているし。
「スサノヲ様、画面起動のパスワード設定は確実にご確認を、、、ヨシ!」
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