第8話

「塩具合も丁度いいし味もいいね」

「燻製のお魚さんも美味しいですー。

 黒パンに挟んで食べるともっと幸せな味です。」

 保存食にと多めに釣れた時の癖で作った燻製も味、評判共に上々。

 あぁ、つまみがいいと酒が欲しい。けどまだ朝だしな。

 おはらしょうすけさんやるとヘレナに嫌われそうだ。


 場所を移動してもうちょっと在庫を増やしてもいいかな?

「今日は何するのです?」

 両手で持った燻製サンドイッチを頬張りながらヘレナが聞いてくる。

『この森の魔獣の肉と素材、薬草などは今後行く予定の町で売れるので、移動しながらの狩猟採取を推奨します。』

「そーだね、稼がないと美味しいものも買えないし。それで行こう。」

 簡単な朝食を終えて、キャンプ道具を片付け、出発。


 全高50mを遥かに超える巨大な広葉樹の森、少し開けた中をヘレナと手をつないで歩く。

 うっそうと茂った樹冠のせいで下生えは少なく 落ち葉で舗装されたフワフワの感覚にさえ慣れれば比較的歩きやすい。

 たまに日陰に群生する薬草を採取しながら在庫を増やしていく。


「今日も美味しいお肉を一狩りするのです!」

「そーだねー。なにかいい獲物がいるといいね。今日は何が食べたい?」

「えーっとー いんたーねっとで読んだドラゴンステーキが食べたいです!」

 フラグっぽい言葉を聞きつつ、それは自分も食べてみたいので同意する。


『前方1キロの草原に地竜を感知。

 人間らしき生物が追いかけられています。』

「フラグ回収早いなー。オマケまでついて」

「お兄ちゃん!お肉が出てきて誰かのピンチです行きましょう‼」

 言うが早いか走り出す。


 ◇◇◇◇◇


「あれって倒せるの?」

 遠目に見えてきた魔獣、全長だいたい10メートル。

 硬そうな皮膚に覆われた鎧竜のような姿

 ヘレナの大太刀でも相手するの難しくない?

『魔獣としては小型です。大型になると100メートルを超える個体も観測されています。繁殖力も高く人間にとっては脅威ですがここに住む人達にとっては貴重な食糧です。大きな魔獣を狩れば都市一つの需要も満たされるため、また家畜を飼っても魔獣に襲われるため畜産はあまり盛んではありません。

 地元の人達も倒してるんです。大丈夫。

 次元収納の中にあまの対物ライフルXM109ペイロードが天の徹甲榴弾を装填した状態で格納されています。仕留めて下さい』

「なんでも天のってつけりゃいいってもんじゃないよ、、、

 まー いってみよーか」


『報告・目標の地竜・前方200メートルまで接近

 射撃までサポートします。

 防音イヤマフを装着して下さい。』


 でかいマガジンを引っこ抜いて、鈍器になりそうな弾が装弾されていることを確認、銃に戻す。

 コッキングハンドルを引いて装弾。

 セフティはー これか。ミリオタやってたので余程変な機構の銃じゃなければ なんとかなる。

 加えて持った時点で操作方法が頭に入ってきた。さすが天のなんとか。


 腹ばいになってバイポットを接地しスコープを覗く。

 フード付きマントをはためかせて女の人?が走ってくる。

 銃身を上に振ると地竜の顔。

 スコープのズレを確認する為近くの木の幹に一発。

 大きいが低い発射音とともに弾が発射され排莢口から栄養ドリンクの瓶のような薬莢が勢いよく飛んでゆく。

 狙った場所で幹を破砕。折れて地竜のしっぽを直撃し、突然折れた木と音に驚いた地竜の足が止まる。

 ラッキ! 人との距離が開いて狙いやすくなった。


 スコープはズレ無し。

 二発目からは頭を狙って撃つ。

 命中。即座に連射。装弾数が少ないのですぐ弾切れ。マガジンチェンジしている間に地竜が倒れた。

 暫く待って起き上がらないことを確認。

 ヘレナと一緒に女の人?の方へと歩き出した。


 ◇◇◇◇◇


「大丈夫?ケガとかしてないですか?」

 イヤマフを外して走っていったヘレナが声をかけている。幸いケガも無さそうだ。

「ありがとう 助かったわ。ケガもしてないから大丈夫。さっきのは魔法?すごい威力ね」

「んーまぁ そんなものです」

 剣と魔法の世界なら銃も魔法みたいなもんだろう。説明するのもメンドクサイし。

 しゃがんでヘレナと話していたお姉さんと話す。

 綺麗な人だ。光沢のあるプラチナの長い髪、ちょっとつり目の澄んだエメラルドの瞳、細身の体躯に緑色よりのシンプルな民族衣装?を着ている。

 なにより目を引く特徴的な長く尖った耳。エルフ!?

 第一異世界人でエルフ! トラックと会った訳では無い。念のため。。。


「君たちは姉妹?髪の色は違うけど?

 なぜ子供だけでこんなところに?親御さんは?」

 優しそうな人だし心配してくれているのだと思う。

「僕たち兄弟で親はいないです。目的とかは無いけど二人で旅をしている途中です」

 背景説明してもわからないだろうし、とりあえず当たり障り無さそうな事を言ってみる。

「そう孤児なんだ。

 その年であれだけ強ければ心配無さそうだけど、何かあったらお姉ちゃんに相談してね」

 涙ぐんで僕たち二人を抱きしめてくれた。

 結果オーライ。この路線で行くことにしよう。

 ついでに、頭は大人、体は子供の精神的成人男性としては、少し大きめのオッパイが気持ちいいです。

 ニヤケないようにするのが難しい。


「それと、助けてもらったお礼なんだけど、、、私たちハンターの間では命を助けてもらったら、その時点で持ってるお金と装備のうち最低限必要な物を除いて相手に渡すってことになってるのよね。数えちゃうから、ちょっと待って!」


「ハンターじゃない事情を知らなさそうな子供にそれ言っちゃうって、お姉さん真面目すぎません?」

「よく言われるけど、こーゆーのをキチンとしないのって性に合わないのよ」

 なんかいきなり凄くいい人に会えた気がする。それなら

「そーゆーことなら、それはいりません。その代わりお姉さんの時間が許す限りでいいから、この辺を案内してもらっていいですか?」

「本当に!? 可愛い事言ってくれるじゃない。やだ、よく見るとほんとに可愛いーー!」

 思いっきり抱きしめられて、頬と頬でグリグリされた。

 ヘレナが頬を膨らませて間に入ってくる。

「お兄ちゃんはヘレナのお兄ちゃんだから、グリグリはダメなのですー」

「やだ!この子も可愛いーー!それにあなた男の子!?どっちも可愛いーー!!」

 二人揃えてグリグリされた。



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