第7話

「おなかいっぱいですー。」

 ヘレナがテントの中に敷いた寝袋の上で寝転んでいた。

 暗くなったのでガスランタンを灯す。

「眠くなったら寝ちゃっていいよー。」

「はーい」

 僕はといえば、アウトドアチェアーに座り酒を舐めつつ燻製と火の面倒を見ていた。

 熾火に太めの木をくべて一晩持つようにする。

「ねえ、ソフィアさん さっきのイノシシみたいなのって対策しなくて大丈夫なの?」

『ここは森でも外れの方なので魔獣の数は少ないし、私が常時探知していますので問題ありません。

 ここに縄張りを持っていたのが先程のイノシシなので、他の魔獣が侵入してくるまでには暫くかかると思われます。』

「なら安心だ。」

『先程の獣程度なら今の主の力でも討伐可能です。

 次に遭遇した時には戦闘経験を積むことをお勧めします。

 初めては誰にでもあります。

 痛いのは最初だけです。』

「なんでそーゆー言い回しになるかなー。」


『最初の戦闘は恐怖が先にたつかもしれませんので、魔法で削るのもいいかもしれません。』

「アマテラス様から聞いてたけど、本当に使えるんだ。どうやるの?」

『この世界の魔法は自分の中に蓄積したマナを精霊に与え、精霊語で術式を作り実行することによって行使されます。

 大量のマナを保持しているのならば、直接ぶつけてもいいかもしれませんが、破壊か攻撃しかできませんし効率も悪いです。

 主の場合は全く別の力、アマテラス様から神力も受け取っていますので思うことによって実行できます。

 但し、普段考えたことが随時行使される不具合を回避するために、強く思わないとトリガーにならないことと行使前の再確認が実行されます。その際の確認作業も私が担当しますのでご安心下さい。』

「ありがとう。それなら安心だ。

 じゃあ試しに。」


『円形湯舟を作成しますか?』

「OK、やってくれ」

 土を固めて円形の5メートルくらいの湯舟を強く思うとソフィアの声で確認が入った。



『最初の魔法で作るのが湯舟ですか。』

 日本人としてはこれだろう。

 温泉も捨てがたいが、あれは本場に行って入るのが醍醐味だ。

 明日の朝お湯を張って朝風呂しよう。


「それじゃお休みー。」

 寝袋に包まってスヨスヨと寝ていたヘレナをそれの中に入れて、自分も寝袋に潜り込む。


 ◇◇◇


 疲れていたからなのか、すぐに寝入って気付くと朝だった。

 明るさから推測すると6時くらいか?

 鉄瓶を火にかけてお湯を沸かし、キャンプ用に買ってあった黒パンを切って、インスタントのスープとリンゴ、昨日から燻していた魚を2匹、朝ごはんの準備する。



「昨夜は何も問題なかった?

 常時探知って言ってたけどソフィアは寝なくて大丈夫なの?」

『影響のない距離に魔獣はいましたが、こちらに来る様子は無かったので問題ありません。

 機能として必要であれば寝れますが、人間とは構造が違うので寝なくても大丈夫です。』


 話をしながら湯舟に湯を張った。

『湯舟に湯を張りますか?』

「はい、実行

 ソフィア腹話術うまいねー。」

『そういう物ではありません。』


 満水になったところで湯に手を入れて水温調整。

 服を脱いで朝風呂を満喫していると、ヘレナが寝袋から這い出してくる。

「おはようございますー。」

「お風呂わいてるよ。ヘレナも入る?」

「入りますー。」


 ちなみに今の僕の体は10歳くらい?ヘレナは7歳くらいだしで、ほぼ兄弟。

 お互いに照れる年齢でもないね。

 元々23歳だったし、ここまで若返らんでも良かったんだけど。

 体小さいとアウトドアの作業がしずらいよ。


 泳いでいたヘレナを捕まえて一緒に体を洗ってもう一入浴。

 出てからお湯を収納して湯舟を分解して平地に戻した。


―――――――――――――

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