第61話

 その日、私と琉希はピクニックに来ていた。

「今日のお昼は僕が作るよ」

 琉希がそう言ってくれたので任せたら、重箱にたくさんの種類のサンドイッチと焼き菓子が敷き詰められていて、びっくりした。

「琉希、これ1人で全部作ったの? おいしそう!」

「そうだよ。杏子が喜んでくれて良かった!」

 嬉しそうな反応が返ってきた。

「たまには外で食べるのも最高だよね。ねぇねぇ、早く食べてみてよ」

「そうだね。いただきます」

 琉希の手作りサンドイッチは初めて食べるな。無難に、ハムレタスからいただく。

「美味しい!」

 具材はハムとレタスだけなんだけど、パンに塗られたバターとからしマヨネーズが効いていて、とても食べやすい。

「杏子に喜んでもらえて、嬉しいな。僕もいただきます」

 琉希はそう言って、たまごサンドを手に取る。

「杏子と食べるサンドイッチは格別に美味しいな」

 琉希は幸せそうだ。つられて私も笑顔になる。

「作ってくれて、ありがとうね」

「こちらこそ、食べてくれてありがとう!」

 最近は家の中で2人で映画を見たり、ゲームをしたりすることが多かったから、たまには外でお弁当を食べるのもいいのかもしれない。

「実はね、杏子が大好きな玉子焼きもあるんだよ!」

 琉希はそう言って、カバンから玉子焼きの入ったタッパーを開ける。

「私の好物も作ってくれたの?」

「うん! 杏子に食べてもらいたくて」

 琉希はそう言って、お箸で私の口元に玉子焼きを運ぶ。

「ほら、あーん、して?」

「恥ずかしいよ」

「いいから、ほら、あーん」

 恥ずかしいのを我慢して、口を開けると、琉希が一口大に切った玉子焼きを入れてくれた。

「美味しい! やっぱり琉希の玉子焼き、好きだなあ」

「お褒めに預かり光栄です」

 2人でそんなやりとりをしていると、「ママー、あのカップル、いちゃついてるー」という小さな男の子の声がした。「そうね、とてもお似合いの2人ね」そう言われて、照れてしまう。

「お似合いだって。ほら、杏子、ぎゅーってしよ?」

「ここ、外だから。家に帰ってから、ね?」

 さすがに外で抱きつくのは恥ずかしすぎたので、そう言うと、「んー、わかったよー。家に帰ったら、たくさんいちゃつかせてね?」と甘えたように琉希が私の肩に頭を預けてきた。

「うん、わかった」

 私は琉希の頭を撫でながら、そう答えた。

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