友人キャラは面倒くさい
「「...はぁ」」
大きい溜息と共に私と死神さんは購買で買ったパンの袋を開け、中の炭水化物の塊を貪る。晴天の下の屋上はプラ袋と咀嚼の音だけが響く。
疲れた。精神的に。
察しがよくて思考力が高くても、人が恋に落ちるのは理屈ではないとこの一か月で嫌というほど知った。人は思い通りには動かないし、恋は盲目という。
「「はぁ」」
「人間ってのは難しいもんだな。死ねば同じなのに、生きるのはあまりにも忙しいハツカネズミみたいだ」
「それを言うならお得意の死神さん奇跡でどうにかしてくださいよ~」
「やっぱり危機的状況なんじゃねぇの?ほら、吊り橋効果とか」
「あんまり危険な事は避けてほしいんだけど...」
「クハハ、その心配はするな。魂を貰う時までには生きていてもらうさ」
醜悪な笑みを相変わらず浮かべている。
けれど
「その、イベント?フラグ?なんてのはゲームで簡単にたつんだけれど...」
「まったくだ。あの双子を引き離すのは至難の業だったな」
罪悪感で胸が痛む。
「本っ当にね。というか人見知りと本の虫でよくくっついたわよ」
「委員長と姉の痴話喧嘩は屋上まで聞こえたしな」
そう、双子はあった時とは違って桜の咲いたような笑顔で恋人と過ごしている。
「パツキンと手話の子がくっつくのは意外だったけどな、クハハ」
「...」
二人は本当に幸せそうに互いの事を語り合っていた。手話を教えたり、外国の事とかも。
なんでだろう
空しい
視力があるのに、見えている物は全て灰色の様な気がする。
皆の幸せはねがっているし、くっついたのは嬉しい。それでも空しい。
私は、生き返ったけど、人を幸せにするなら視力も必要なかったじゃない。私が生きている理由は、どこにも見当たらない。
どうせ人は死ぬ。
どうせ恋は一時の感情。
屋上の柵に隔たれている世界、地面は遠い。昔はわからなかったけど、今見れば近いように見えて、遠い。
昼休みだから校庭で食べている人たちが多い。私が手を貸し、成立したカップルもまた校庭で食べているのが二組いる。
柵を越えた地面をまた見る。
柵に手をかける。
「だ~め。君の恋も成就しないと、死ぬ意味がないからね」
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