第18話 追跡・東京駅内編

日本国 東京都 千代田区 東京駅

東海道新幹線ホーム

2025年3月某日 18時頃


宅間は駅内ホームに立っていた、そして珍しく考え事していた。

これから新大阪駅までに博多行きののぞみ57号に乗らなければならないことと

自分の命が後数時間で終わるのを思うと納得できなかった。


「ちくしょう。」


怒りを表しながらつぶやいた。


彼は子どもの頃から非常に暴力的で協調性がなく、病的なまでの嘘つきだった。

エリート志向が強かったものの、彼には誇れるものがなかった。

自分の人生の転機はワトソン重工の先代会長に見いだされたことだと思った。

今となっては、それが転落への道でもあった。

彼が通った工業高校を訪問した先代会長が彼に返済不要の奨学金を与えただけではなく、神戸大学への入学も援助した。


大学卒業後、ワトソン重工に入社し、順調に出世街道を歩んだ。

私生活では数回結婚と離婚を繰り返したが、子どもを儲けなかった。


宅間は松本専務と並ぶ、大量殺人者だった。

無差別に殺す松本と違い、宅間は小学生に的を絞り、国内だけで150人殺害の嫌疑があった。海外出張の度、主に発展途上国で数十人単位の殺戮を行っていた。


考え事をしていると本日の渋谷駅でのテロ事件の影響で新幹線の運行を一旦取りやめ

となるアナウンスが流れた。

のぞみ57号がホームに入ったものの、発車しないこととなった。


その時、宅間は異変に気付いた。

ホーム内で彼はひとりだった。


足音が聞こえて、宅間は後ろを振り向いた。

無駄なぜい肉のない筋肉質な力士のような大男がゆっくりと歩いていた。


「貴様は何だ?吸血鬼か?」


雷電は宅間を見た。


「ああ。その通り。」


宅間が怒りを露わにした表情となった。


「貴様らは滅ぼされる運命にあるぞ!!」


「で、言いたいことはそれだけか?」


雷電が落ち着いた声で宅間に聞いた。


「吸血鬼の分際で偉そうに振る舞うな。」


「なるほど、お前は私より強いってわけだね?」


雷電は静かに宅間を睨みながら伝えた。


「強いさ、会長の寵愛を受けて、本部長まで昇進した男だぞ!!」


雷電は相変わらず冷静だった。。

この人間(ウォーム)が大量殺人者であることを知っていた。

彼の犠牲者、全員が小学生だった。

子どもに対しておぞましい性癖を持っているのではなく、単純に弱い存在を殺すことに快感を覚えていた。


「子どもを狙う卑劣な小者が強いと思えないけど。」


それを聞いた宅間は怒りが頂点に達した。


「貴様!!殺す!!!」


鞄を手から離して、叫びながらサバイバルナイフ2丁を抜いて、雷電目掛けに走って行った。


雷電は動かなかった。立ちあいもしなかった。

走ってくる宅間をじっと見ていた。


「俺は強いぞ!!、松本よりダーマーよりも強い!!!俺は1159人の人間(ウォーム)を殺してきたからな!!」


雷電は知っていた。彼は子どものみを標的にしていた。

相手は生かしておけない危険な存在だった。


どんな能力(スキル)持ちであっても、雷電はここで彼を滅ぼすことと決めていた。


宅間がジャンプし、雷電をサバイバルナイフで刺し殺そうとした瞬間、

雷電の右手から素早く張り手が繰り出された。


宅間が最後に見た光景は迫りくる大きな手だった。

顔に当たった雷電の張り手が宅間の頭蓋骨を一瞬で砕いた。脳、骨、肉と血が周りに吹き飛ばされた。

吹き飛ばされた宅間の頭の残骸が凄い勢いで燃えだして、灰さえ残らなかった。


燃えだした理由は【手(ハンド)火(ファイヤー)】雷電の個人の能力(スキル)だった。


地面に落ちていく頭を失った体にもう一度、雷電が張り手を放った。

胸に当たった張り手が体を破裂させ、バラバラにし、その残骸が燃えだした。


宅間が存在した証、血の最後の一滴まで燃えて、何も無くなった。

快感のため、子どもを殺した悪党が文字通り消えた。


「汚らわしいものは消えた。」


雷電が軽蔑な口調でつぶやき、鞄を回収し、長谷川に電話した後、駅の出口へ向かった。



同時刻

東京都江東区新木場

東京ヘリポート内


松本専務はリムジンからゆっくりと下りた。

ここからチャーターしたヘリコプターに乗り、仙台へ向かう予定だった。


彼は弱視で足腰も弱かったが、目以外の感覚が非常に鋭く、

30分前から1人の吸血鬼に付けられていることに気づいていた。


「ヘリコプターに乗る前、片づけるか。」


独り言をつぶやいた後、吸血鬼が来るのを待った。



長谷川平蔵も松本に感づかれていることを知っていた。

追跡していたバイクから下りて、松本が立っているところへ向かった。

日本刀を抜いて、系統の能力(スキル)【業火(ヘルファイヤー)】を発動した。


「大量殺戮者との対面だな。」


緊張しながらつぶやいた。

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