第76話 君は、ひだまりの姫君

「悔しいけど、おまえはやっぱりそうやって何かに向かって表情をキラキラさせていた方が似合っているな」


 彼女が目指す先。


 その矛先はいつも自分に向いていたのに、それでも今は違う。


 ナイーダはナイーダで自分の道を見つけてしまった。


 それはひどく面白くないことだと思ったこともあったけど、今なら素直に背中をおしてやろうと思えた。


 いつも迷って悩んで、立ち止まれないのに立ち止まるしかなくて、右にも左にも動けなくなってしまっていたあのナイーダが新しい一歩を踏み出そうとしている。


(ああ、きれいだ……)


 見上げてアルバートは思った。


 日の光を浴びてさらに輝きを増したように見える彼の大切な姫君から目が離せなかった。


「おかえり……」


 小さい声でそうもらすと、ん?とナイーダが不思議そうな顔をした。


「いや、こっちの話」


 そう、帰ってきたのだ。


 ずっと封印されていた存在が。


(おかえり)


 アルバートは笑う。


 そう、これが彼女の真の姿なのだ。


「これからはこうやって堂々と日の光の下を歩いて行けよ」


 おまえはそれができる人間なんだから。


 そう彼は誇らしげにナイーダを見た。


(おかえり、ひだまりの姫君プリンセス

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る