地雷クエストの依頼主に恋しました。いきなりプロポーズ上等。
広田こお
第1話 恋クエのはじまりはプロポーズから
SSSランク、クエスト……。
それはただ手紙を届けるだけの簡単なお仕事。
依頼人は絶世の美女といわれる歌姫。
美しい歌声、洗練された踊り、長い黒髪。そして翡翠色の瞳。
かつて、あらゆる舞台で万単位の聴衆を集めた伝説の吟遊詩人でもある彼女は、聖女とすら言われていた。
そんな彼女に恋する、ごくごく普通の勇者がここにひとり。
オレの名前は勇者ダイガーン。魔王を倒した男だ。
オレのおかげで現在の世界の平和があると言っても良い。
そんなオレには、ごくごく、ありふれた普通の奥さんが必要だ。
それ、すなわち歌姫、聖女と謳われる最高の踊り子。
アリアル=ディー=ナイン
王族から、称号すら与えられた伝説の美姫。
「冒険者ギルドのお姉さん?この手紙を届けるだけの極めてイージーな依頼がなぜSSSランクか説明してくれる?」
「それはその、あなたの心に聞いて下さい……」
「はい?」
「つまり、あなたもどうせ、依頼人目的なんでしょ?」
「はい、もちろん!」
「はぁあ、聞きたくなかった。依頼失敗決定しているじゃないですか……」
「なぜ?」
「あなた、依頼人の事狙ってますよね?」
「はい、もちろん」
「依頼人はあなたと結婚はしませんよ?いうまでもないことですが……」
「そんなことはないでしょう……」
「すごい自信ですね……。これだから、SSSランクのクエスト受ける男は嫌いなんです」
「当然でしょう!」
ボクは胸を張る。ここ、威張っていいところ。
「まあ、いいです、ちゃんと依頼人の手紙を依頼人の遠恋相手に届けて下さいよ……」
「はい、そして、そのあかつきには、依頼人と式をあげます!!」
「はぁ、SSSランクの男なんて嫌いです……」
「心配なさらず!すぐにこんな依頼あっというまに片付けてきますから」
……勇者は依頼主のアリアルたんの豪邸に向かった。
「こんにちは、あなたが勇者ダイガーンさんなのですね……。頼もしい!」
「はい、ありがとうございます。お手紙を遠方まで届ける依頼とうかがっております。失礼ながら、どのような内容かお知らせいただけますでしょうか……」
「ふふふ、ラブレターです。きゃー、言っちゃった……」
……ラブレター。
「その誰にでしょうか……」
「賢者アイリーンさまへ、です」
……おい、おれの元同僚じゃねーか。あいつ、いつの間にこんな美人口説いてんだよ!
「アイリーンなら、一緒に魔王討伐のとき、旅をした仲ですよ……。任して下さい、すぐ絞めてきます!」
「ふふ、また勇者さんたら……。冗談がお上手ね!」
「アイリーンなんて辞めて、ボクと結婚しませんか!」
「はぁああ?ああん?」
……あれ、なんか凄い怒っている??
「すいません……。失礼しました!出直してきます」
やべぇ……怒った女性は怖い……。
恐るべし恋クエ……。
勇者ダイガーン、SSSランククエストに失敗する……の報はその日一瞬にして
大陸全土に響き渡った。
勇者ダイガーンは心に誓った……、二度と恋クエには手を出さないと……。
だが、その恋クエにあえてチャレンジする男がいた。
その名を賢者アイリーンという。
彼こそがこの物語の主人公である。
地雷クエストの依頼主に恋しました。いきなりプロポーズ上等。 広田こお @hirota_koo
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