第10話 シュウは本当に勇者なの?
サラの向かいにリンが座った。真ん中には丸い円盤が置かれている。
「ここに手をかざして」
円盤の中心部に言われた通り手をかざすと、円盤の周りが光り出す。立体映像のようにリンの目の前に文字が並べられている。
「読めるかしら?……読めそうね、識字スキルがあるわ」
確かに見た事が無い文字なのに、意味が分かる。体力、知力、魔力……とパラメーターが並んでいるが、突出している部分は特にない。
「そうね、もし魔法を覚えたいなら光魔法が向いているわよ」
「光魔法って回復とか?」
「そうよ。だからシスターも職業としては向いているわね。ほら、ここを見て。おすすめの職業が書いてあるでしょう?あなたは人の役に立つ事に適しているわ」
「ほええ……」
「あとは子供を見るシッター、児童院の職員……魔法道具を使って治療を行う医者。歌を歌う吟遊詩人……人と対面して何かをする職業が向いているんじゃないかしら?」
「魔法ってどうやって使えるようになるの?」
「まずは魔力レベルを上げる事。呪文には決まり事があって、その順序を守って組み立てるのよ」
簡単に説明してくれたが、算数の掛け算や引き算のようなものだとリンは理解した。例えば〔火+発動〕を唱えると火がつく。〔火+発動+弱〕を唱えると弱火が出て、煮込み料理に適した魔法が出来る。〔氷+冷す×圧縮〕で雷が発生するらしい。
「それを全部覚えなきゃダメなの?!」
「全部覚えたうえで、新たな魔法を作るのが私の前の仕事であり兄さまが今行っている仕事なのよ。ないものを作り出すのはとても難しいの」
「ひえー……」
サラとシーマに対する評価が変わった。元々サラに対しては尊敬の気持ちを持っていたが、更にすごいと思えた。
「ん?ちょっと待ってね……何かしら、この紋章?どこかで見たことがあるんだけど……?表示されたり消えたりっていうのは、まだ確定じゃないってことなんだけど……」
サラが指さしたのは時々透けて見えるマークだ。
「この剣と盾のマーク?これカッコイイよねぇ。勇者のマークみたいな……」
「―-勇者!!?ちょっと待ってシュウのをまず見るわね」
「わう?」
「赤ちゃんのスキルを見る時は保護者も見られるの。リンも見る?」
「うん!」
シュウの手を取り、リンがしたように円盤の上にかざさせた。
この立体映像は手をかざしたモノと円盤に魔力を送り込む者(今の場合はサラ)以外には見えない仕組みになっているらしい。
「――!これは!?」
「な、なんかパロメーターが振り切ってるんだけど!?」
「体力が少ないのはまだ幼いからなんだけど……この魔力値すごいわ。すべての魔法属性の数値が高い……こんなの、見た事ない」
「職業は?あれ?なんか文字が見えにくいなぁ……何に向いているの?やっぱり勇者?」
サラは真剣な顔で隅々まで目を通している。
「……リン、今から話す事は私たちだけの秘密に出来るかしら?」
真面目な表情のサラの言葉に、何か良くない事が起こる予感がした。
「シーマとかにも言わないってこと?」
「ええ。折を見て話すかもしれない。でも今は……今話すと皆を混乱させてしまうかもしれないの」
怖くなったリンは、膝の上に乗せたシュウをぎゅうっと抱きしめた。
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