第2話 十三人の容疑者

 さて、こうして事件が起こったところで、先に月の庭園に住まう十三人を紹介しよう。いや、本編には関係ない。今回は読み飛ばしたって構わない。僕はそんなの気にしないから。

 ただ、これから話に現れる言葉の唐突さは多少紛れるかも知れない。


 アリス

 人類版図の実質的な支配者。外見は幼い少女だが、推定年齢は五〇〇歳。未来の確定している人類版図に刺激を求めて破滅的な選択をする悪癖がある。人の範疇の地球領主の中では誰よりも長く生きている。お茶会の主催者。


 ガラハッド

 純真な一〇〇歳の好青年。アリスの一二四人目の孫。経済圏がララ・ムーンの庇護下にあり、領主としての権勢は低い。アウターとの渉外を一手に握っており、いずれ人類版図を超える可能性を秘めている。フースークとは友人だ。


 ララ・ムーン

 幾多の国家を支配するアリスの三四人目の娘。人類版図で最大の経済交易圏を保有する銀河随一の権力者。黒い肌、黒い髪、濃い紫のチョーカーと淡い紫のドレスがトレードマークの美女。遠い血縁のガラハッドを溺愛している。


 バベル

 無意識的な経済連携の人格態。皮肉屋で孤立癖がある。いつも違った格好をしていて、消去法でバベルと気付かれることも。自身は超然とした立ち位置を好むが、デアボリカと違って徹底しきれず、構って欲しさが滲み出している。


 ガラクティア

 人類版図の公式政府、正確にはその基幹官僚組織群の組織義体。その名が示す通り人類版図の統合人格でもある。あまりに多くの要素を内包しているせいで常に夢見心地な表情をしており、言動もどこか薄ぼんやりとしている。


 シーダ

 地球領主にあって肉体的に唯一の存在。地球上のあらゆる血統を引き継ぐ保種計画の最高位で、一二七五の姓がある。月の庭園は彼女の庇護のために造られたといっても過言ではない。健気で明るい好奇心旺盛の両性具有者。


 エフィモヴィク

 人類版図の全宗派を統括する永劫宗主。浅い褐色の肌をした気の良い青年。立場上いろいろと超越しているように見えて常識人。むしろ俗な細事に拘るところもある。使用するエイリアスは別人かと思うほどみな性格が異なっている。


 ジャック

 骨格標本のような義体を好んで使う陽気な皮肉屋。彼の支配する領域は死に際して情報人格化した人々の世界。死者は出資額に応じてより高位の人格パッケージとして存続できる。フースークとは異なり進んで道化を演じている。


 イーフリート

 人類版図における法の執行者。軍事組織の永久顧問。法のための暴力、暴力のための暴力を管理するが、自身は超法規的なビジランテ、あるいは探偵としての経歴もある。外見は厳つく気さくな老紳士。デアボリカとは旧来の宿敵。


 デアボリカ

 人類版図における戦争と犯罪の管理者。肉体の死を超越した地球領主の中にあって魂に死を与える存在。アリスさえ迂闊な会話を敬遠するが、実は何気に冗談と悪戯好き。外見は鬱々とした影を纏う初老の男。イーフリートの宿敵。


 アーサクイン

 俯瞰次元技術による時差零ネットワークの開発者。地球領主のエイリアスも彼の手によるもの。最も思索に適した生物は猫だという考えから幾匹もの猫のエイリアスを使用している。今回のフースークの外見は少々因縁のある人物。


 トリニティ

 汎銀河ネットワークの人格端末。銀河年表の主幹シミュレータ。太陽系時代から存在するネットワーク知性体が素地。外見は眼鏡を掛けた十代の少女で、フースークは彼女を委員長と呼ぶ。どういう訳か彼女もそれを甘受している。


 フースーク

 十三番目の地球領主。アウターとも通じる銀河辺境の支配者。奇行が多く道化の役割を担うが、本人は不本意らしい。近頃、貴重な地球型惑星を秘匿していたことが発覚。あまつさえ非人道的な植民を行っていると皆に糾弾された。

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