第3話 世界の管理人の警告

アンがボクの問いかけに悩んでいる。

「……そうね。旅にでるのも悪くないかもしれないけど」

「ダメですか?」

「この国はまだ、安定してないわ……」

とその時だ、この部屋に「三人目」の女がいた。


その三人目が口をひらく。

「はじめまして、と言うべきか……」

美人だ……。誰が見ても美人。

金髪、青い瞳。そして、均整のとれた体。

「あなた……、どうやってこの部屋に入ったのかしら?」

アンは警戒している。

「どう入るも、この世界の理は我らが決める。すなわち、我がこの部屋に入りたいと思えば、それを拒む道理はこの世界にはない……」

……どういうことだ。

「そう……。あなた、『世界の管理人』というわけね」

アンはよくわからないことを言った。

「左様。まさか我ら管理人のことを知っているとはな……、人形ごっこは早々にやめろ……。警告する。お前の行動は世界の理を乱している。到底、みのがし続けるわけにはいかない」

……人形ごっこ、管理人。ボクを傀儡にすることがそんなに悪いことなのだろうか……。


「あの……。ボクは別に、人形のように操られる傀儡の王でも構いませんが……」

「……部外者は黙っていろ……」

その美人はものすごい冷たい瞳でこちらをにらみつけ、あまりの恐怖からボクは発言するのを止めた。

「人形ごっこ……ね。止めないと言ったらどうするつもりかしら……」

「忠告だ……。この世に楽園はあってはならぬのだ……。説明は要らないだろ」

「つまり、あなたはこの世界を地獄に変えると……」

「違う!この世界は地獄なのだ。我らが地獄に変えるわけではない……」

「申し訳ないけど、あなたの忠告の意味するところがわからない以上、なにも約束できないわ……」

「……ふ。真理に気付いたわけではないのか……。愚かな囚人どもめ……。早く、悔い改めればいいものを……」

「侵入者よ!近衛兵!!来なさい!」

アンは高らかに侵入者の存在を兵に知らせた。

「……おろかな……。だが、警告はしたぞ……」

女はそう言って、窓から飛び降りた。


「……おい、地上五階の王宮のこの部屋から飛び降りるなんて……、死んだか?」

「バカね……、自殺ではないわよ。くわせものなんだから……」

「でも、この高さから……」

「世の中の理を決めるのは彼らよ……。地上五階から飛び降りても死なない、と彼らが決めれば、彼らは死なないわ……」

「意味がわからないよ……」

「……奇遇ね、私もわからないわ。ただ、推測で言っただけよ……」

……ボクは窓の外に顔を覗かせ、地上を見た。

「……ホントだ、だれも死んでいない……」

それは気味の悪いことだった。この高さから飛び降りて死なないなんてことがあっていいのか……。


……アンは考え込んでいる。

「……レイン、旅にでましょう。ココは危険だわ。というか、安全な場所に逃げる必要があるわ……」

「え、いいの?」

……ボクは、ちょっとだけ嬉しかった。ただ、あまりにも奇妙なことが続いたため、心躍るとはいかなかったが……。

「もう、この国が安定してないとか……。言っている場合ではなくなった気がする」

「……ここにいたら、いつかアイツに殺されるのかな?」

「さあね。わからない……。わからないことだらけ。でも、だからこそ、このことを帝国の賢者に報告する必要があるわ」

「……賢者?」

「そうよ、この世の理を調べる組織が帝国には存在するわ……。その研究所の長たちのことを賢者と呼んでいるの……」

「この世の理……。アイツも言っていたね……。なんなの、それ?」

「世界には法則があるわ……。それはわかるでしょ……。歴史は繰り返すとか、物理法則とか、親が2人居ないと子はなせないとか、そういう類いのものよ」

「それを調べてる機関……って事?なんのために?」

「いろいろと役に立つでしょ、自分が住んでいる世界のことなんだから」

……言われてみればそうか。

「なるほどね。それが帝国の力になるってことか……」

ボクはなんとなく、納得した。本当のところは、よくわからなかったわけだが。

「……そうね、単純に歴史の法則がわかれば、未来予知につかえるし、物理法則がわかれば、様々な兵器を作るのに役立つわ……。そして、いずれは生命の神秘すら、完全に解き明かす時がくるのかもしれないわね」

「……帝国ってすごいんだな……」

「まあね」

「……エリー様はもっとこのことについて、良く知っているのだろうね」

「ふふ、それはそうでしょうね……。レインくんは、エリー様のことが本当に好きなのね……。ちょっと嫉妬してしまうわね。影武者としては……」

「あ……。ごめんなさい。でも、アンさんのことも好きです」

「いまさら、取り繕っても、何も出ないわよ」

「ともあれ、旅に出れるんですね……。それは、嬉しいです」

「愛の逃避行みたいで、ドキドキしちゃう?悪くないよね!レイン君」

ちょっと空気がやわらかくなった。

「……そうですね。アンさんと一緒に旅に出るってことですよね……。楽しみです」

「あ……、旅の最中も、毎日キスして、イチャつこうね!……キミの義務だからね!」

「……え、は、はい」

「実のところ、キミには早くブラックシードという麻薬漬けになってもらわないとね、この薬は能力を高めるし、キミは私にそれで私に逆らえなくなるわけだから……ね?」

「……はい。でも、アンさんとそういうことするのはキライじゃないです!」

「ふふ、カワイイね。レイン君は」

ボクとアンさんは、一緒に旅支度をした。

……あまり、ゆっくりはできないらしい……。

アンさんに行き先についてきいたが……。

「そのうち教えてあげる……ね」

とはぐらかされてしまった。








































































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