第2話 ホリドライブ!!
やっしゃ〜〜〜〜〜〜!
とうとうこの日がやってきた!半年待って待って待って待ち待ち侘びた!
ホリドのライブ!
そしてこの日のために、私はおろし立てのワンピース(一樹くんカラー)そしておニューの靴!そしてイタバ!
顔面は今年で一番上手くいかせてよし!私は超絶美少女!
今日は何があってもマイナスな気持ちにはならない!
その心がけでやってきました会場。
満員のライブ会場。それぞれの推し五色メンバー色のペンライトが暗闇に色の花を咲かせている。花に囲われるようにホリドのメンバーがパフォーマンスをしている。五曲ほど終わったあたりでフリートークにはいる。
「みんな〜!!盛り上がってる〜?皆の弟のいっくんこと、一樹くんだよ〜!!」
「「「きゃー!」」」という歓声と共に元気に一樹くんが大きく走り回ってファンサする。
「ほら、一樹、転ぶぞ」
「あ〜マー君またお母さんやってる〜」
「誰がお母さんだ!」
コントのような会話に会場が盛り上がる。
「おかあサーんお水取ってー」
「自分で取れよ…はい」
「ふふ〜ありがとぉ〜」
と会場の巨大モニターに映し出されるのはメンバー同士の微笑ましい日常会話。他のメンバーもフリートークとしてファン達にファンサしたり、他と絡んだりしている。その中で一樹くんは話していないメンバーが居ると直ぐにそちらに行き、後ろから抱き着いてモニターのカメラに二人でピースする。不意に一樹くんが裏からスマホを取り出して、メンバー達を撮り始める。
ホリドのリーダーが
「お!一樹、また写真撮ってんのか?」
「うん!後でこの写真みんなに見せるね〜」
「はい、じゃあそろそろ次の曲に行きましょうか」
「え〜、まだお姉さん?おねぇいちゃん?達とお話してたーい」
「わがまま言わない!」
「ふぁーい」
と無防備な返事をしてダンスの立ち位置に着く。曲が始まった途端、先程のふわふわした優しい雰囲気が消え曲のカッコ良さが最大限に引き出ていた。
このギャップが一樹くんの魅力だ。
そして一番凄いのはキャラである事を隠していない。可愛い弟キャラが実は1番しっかりしている。その設定をきっと一樹くんは計算している。ギャップという同性異性問わず魅了する方法を最大限に使って計算してる。だから、尚更すごいと思う。
(〜〜〜〜!!やっぱりカッコイイ!知ってるけど!)
ライブに来る度にカッコ良さを上塗りしていく。それが本当に凄いと思う。
ー
ホリドのライブ終わり、全てを出し切った私は退場列にならんで会場を出る順番を待っていた。しよしよな私は退場列の川に従いながら外廊下を一周したあたりで余韻の波が襲ってきた。
(でも流石ホリド。退場列がファンの人数と多すぎてほぼ距離ゼロ)
緩やかだった流れが4階席まで退場したせいで濁流溶かしていた。後ろから二、三度押され横から別々の人が倒れかけてきた。ようやく、会場の外に出たとしても人の濁流は続く。
(くっ,写真が撮れないっ!)
カメラとペンライトを構える隙もなく、波に押されあっけなく離れていった。
(あ〜!写真!)
濁流が少し納まった所で広場に投げ出される。
「ようやく抜けた!」
気が抜けたせいで自分の足が限界である事に気付いた。ふくらはぎが痙攣して、つま先と踵の感覚が痛み以外を受け付けない。皮が剥けて靴の感触が直に肉に来ている感覚に冷や汗が一筋流れる。
(駅まで…歩けるかな?コレ…)
自分のスマホを開いて帰り道のスクリーンショットを開く。
(駅まで徒歩30分…いっそもう最寄り駅から行くか?いやでも、そうすると余計歩きそうだしな…)
自分のカバンの中から絆創膏が入っている缶を一番上にして
(貼れるタイミングで貼ればいっか…よし!このまま行こう!その辺で貼れるところあるでしょ!)
最後のひと踏ん張りと足を踏み出した瞬間、靴が擦れて皮が剥けた所に針で指したような痛みが走る。
「〜〜〜ッ!!ふぅ〜うっし!」
自分に気合いを入れ直して歩き始める。
そこまで高さは無いとはいえ、ヒールで指先が握りつぶされたように痛み、歯を食いしばって歩くのがやっとだった。心臓がなるたびに小さな針で刺されたような痒さと痛みが走る。ペネストリアンデッキを歩きながらまた痛みが走る。足の甲の皮もめくれはじめていた。
いや、色々言ったけど、マジで足が痛い。
じくじく痛い。ぎゅうぎゅう痛い。ズキズキ痛い。
(もう歩きたくない!!)
早々に心が折れそう…
絆創膏が貼れたらもうちょっとは頑張れる…かも
階段を降りようとした時、誰かのカバンか何かが当たり、足がふらつく。痛む足では踏ん張ることも出来ず、流されるままに体が浮かんだ。
(あ、やば…)
死を覚悟した時後ろから腰に腕を回され一気に引き戻される。
「ぶっね……」
低い男の声が私の肩あたりでして私はとっさにお礼を言う。
「あ、ありがとうございます」
「…別に。下ろすぞ」
「はい…」
ゆっくりと階段の上に下ろされ、後ろを振り向く。
が、その人はキャップを拾い上げる為に腰をかがめた直後だった。
「あの、ありがとうございます」
ん?この背中、知ってるぞ?すんごく、冷たいやつ奴な気が…
「お礼とか言ってる暇があるならさっさと退けよ邪魔だし」
ん???このクソ冷たい声、腹立たしい口調は!
キャップを拾い上げ顔が現れる。知り合いいや、絶対にここで会うとは思っていない人物…
「な、なんで居んの!宇野零夜!!で、合ってるよね?」
と私は怖いから残心を確認する。黒いパーカーにジージャン。ジーパンというあまりにラフなスタイルを着こなし、自分の顔を隠すためのように黒いキャップを持っている。
「合ってる。自信が無いならフルネームで呼ぶな。満月彩…だったか?」
「そうだよ!ってやり返すな!」
「フッやってきたのそっちだろ」
「わ、わざとじゃないし!」
「あ?わざとじゃ無かったら失礼な事していいのかよ。チッこれだからオタクは謎理論が多いんだよ…」
「それは…違う、けど…でも、オタク全体言われたくない!」
「あっそ。んじゃ…」
宇野がたちさそうとした時、
「あの、すみません」
くだらない言い争いをして迷惑なったかな?と横を見ると、ファンの女性がキラキラした目で零夜を見ていた。
(まさか…)
「一樹くんですか?」
「あ?」
(ですよねぇー!分かるよ気持ち!でも残念!クソ性格悪いよ〜!こいつ!)
「一樹くんですよね?」
苛立った宇野にもう一度ファンの女性は聞く。「チッ」と宇野は大きく舌打ちし、顔を隠すようにキャップを深く被る。
「違います。一樹がここに居るわけないだろ。馬鹿なのか?アンタ」
「え?でも…」
「アイツと俺は関係ありませんから。勝手に繋げて盛り上がるのやめてもらえませんか?迷惑」
冷たい言葉にドライアイスのような冷たい瞳で女性を睨みつけた。宇野の手は強く握られていて、本当に苛立っていた。女性は一瞬怖がるそぶりを見せ、ムッと眉を寄せて
「しょうがないでしょ?アンタが似てたんだから!男性一人で居ること少ないし!」
「はぁ…」
これ以上言わせたら確実にやばいことになる。
「えっとえっと!こ、こいつ!か、彼女います!そ、それで一緒に来たんですよー!えっと…それで…えー」
うまい言葉が出てこない。めっちゃデタラメなことを言いながら何かいい言い訳がないかを模索していると、小声で冷たい声が囁かれる。
「何言ってんだよお前」
私も小声で返す。
「合わせてよ!」
「何でだよ」
「怒ってる人に冷静にツッコミ入れたらより怒るに決まってんじゃん!」
「ああ、なるほど。」
「分かった⁈じゃあ…」
ここまで小声。
宇野はいきなり私の腰に腕を回して、私を引き寄せた。
「コイツが俺の彼女です」
「「は?」」
「じゃあ、これで話は終わりですね。それじゃ…」
そう言って零夜は私の腕を引いて歩き始める。
はにゃー。
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