貴族の遊びは絢爛たるパーティーで!〜天才執事と武闘派令嬢が挑む最も高貴な頭脳戦〜
楓原 こうた【書籍6シリーズ発売中】
プロローグとプロポーズ
「お嬢、ついに俺はなれました……お嬢の専属執事に!」
とある屋敷の一室にて。
一人の少年が新調したての燕尾服を身に纏い、瞳を輝かせながら一人の少女に向かって嬉しそうに拳を握っていた。
「といっても、所詮は子爵だし? そんなにお金は出してあげられないけどね~」
桃色と白を基調としたファンシーな室内には可愛らしい小物と家具が並んでおり、部屋の奥には少し大きめなベッドが一つ置かれている。
そんなベッドに腰を下ろしながら、少女は艶やかな金髪を扇状に広げて少年の言葉を「興味ありません」と聞き流していた。
そして———
「お嬢、大好きです! 俺と結婚してください!」
「ふにゃ!?」
唐突に
「な、なななな何を言ってるのかな!? えっ、今普通に
「しましたよ、何言ってるんですか?」
「私の! 方が! 何言ってるか聞きたかったよ!!!」
慌てて体を起こす「お嬢」と少年に呼ばれる少女。
武勲を挙げたことによって貴族になった騎士一家に生まれた令嬢───カルラ・チェカルディ。
飾る言葉などいくらでも見つかってしまうような端麗で美しい顔が朱色に染まっていた。
「お嬢に拾われてから約七年—――お嬢に相応しい男となるべく、一生懸命行きたくもない他の貴族に仕える執事に弟子入りをして……ようやく、相応しい男になって来たんです」
「うん、だから!?」
「だから
「意味が! もうっ! 分かんないんだよ!!!」
カルラがベッドの上を思い切り叩く。
孤児であり、カルラとは違って平民。
カルラに拾われ、主従以上の関係を求め、カルラが主従以上の信頼を置いている少年───サク。
サクは首を傾げるが、カルラが「座って!」と言ったことによりゆっくりと腰を下ろす。
そして、カルラは自らサクの膝の上に頭を乗せて寝ころび始めた。
「あのね? 一応私達の家ってそこまで高い爵位はないし、武勲を挙げて貴族になったもんだから別に平民と結婚はしてもいいけどね? そりゃ、気持ちは嬉しいんだけど……」
「だったら問題ないのでは?」
「私の気持ちの問題があるじゃん! サクくんは、しばらく見ない間に人の気持ちも考えないお馬鹿ちゃんになっちゃったのかな!?」
「そんなわけないっす。お嬢のことしか考えてないっす」
「んにゃ!?」
カルラはもう一度顔を真っ赤にさせる。
そんなカルラを見て、サクは優しく頭を撫でた。
「にしても懐かしいですね……お嬢とこうして一緒にいるの」
「……サクくんがいきなり「お嬢の専属執事になるんだ!」って言いださなかったらずっと一緒にいたよ」
「いや、拾ってもらった恩は返したかったですし、お嬢に好かれたかったから……」
「執事になることと私が好きになることに関係はないと思うんだけど……そこはいかがお考えだったのですかね、私のサクくんは」
「執事になれば紳士的な男になれると思って。ほら、女の子って紳士的な男が好きじゃないっすか」
「ちょー偏見」
「はぁ……別に執事も必要なかったのに執事になっちゃったのはそういうことなんだね。っていうか、そもそも私は別に紳士的な人が好きなわけじゃないよ?」
「!!!???」
サクの顔が驚愕に染まる。
「そ、そんな……ッ! お嬢と会えない時間を我慢してまで執事になったのに。それが無駄だった、だと……ッ!?」
「む、無駄ってわけじゃなかったけど……まぁ、好みじゃないのはないのは事実だね」
サク、ショックで瞳から涙を浮かべる。
そんなサクの顔を見たカルラは苦笑いを浮かべてサクの涙を拭った。
「私、頭がいい人が好きなんだ~。ほら、お父さん達もそうだけど私って基本的に『武』ばっかり極めてきたじゃん? だから逆にそういう人はやっぱり目を惹かれちゃうんだよね~」
「……具体的には?」
「んー、そうだなー……」
カルラは顎に手を当てる。
そして—――
「”
「
初めて聞いた単語に首を傾げるサク。
「あれ? 執事のお勉強してる時に教わらなかったの?」
「ずっと礼儀作法と貴族社会と仕事について学んでましたからね」
そんなサクを見て、カルラは自慢げに胸を張って説明を始めた。
そのせいで無駄に強調された程よい胸をサクがガン見してしまったのは内緒である。
「
サクは貴族のパーティーには参加したことがない。
何せ、カルラやチェカルディ家の相手ならマナーなどを気にしなくてもいいかもしれないが、教養も身についていない状態で他貴族が集まる場所に行かせては何か粗相を起こしてしまうかもしれないからだ。
故に、サクが知らなくても無理のない話だった。
「へぇー、そういうのがあるんっすね」
「余興だけど、馬鹿にしちゃいけないんだよ? なんせ簡単なゲームを作ったら主催者の、散々な結果を残せば参加者の頭の悪さが露見しちゃうからね! でも勝てば褒美はもらえるし、盛り上がるからって他の貴族からパーティーに誘われたりする。そうしたら色んな人と顔を繋げられる!」
なるほど、と。サクは頷く。
そりゃ名誉と優秀さと血筋を重んじる貴族にとっては馬鹿にできない話だ。
「たとえばどんなゲームをするんです?」
「んー……この前やったのはトランプを使ったやつだったかな? でも、途中から殴ったり魔法が「バーン!」ってなったりしてた!」
「…………」
サクはカルラが負けた理由を垣間見た気がした。
(なるほど……お嬢はすでに馬鹿が露見してしまってるんだな)
失礼かつ的確なことを考える執事であった。
「ごほんっ! ま、まぁ……俺がその
「むふん! 可能性はあるよね! ま、まぁ……元からサクくんは嫌いじゃないんだけど」
頬を赤らめて最後の部分だけボソボソと呟くカルラ。
だが、そんなカルラの言葉など―――始めの言葉を聞いて心に火がついたサクには届かなかった。
「よしっ! じゃあ、俺はその
「あははは……嬉しいんだけど、恥ずかしい気持ちの方が強いなぁ」
一人盛り上がるサクを見て、カルラは頬を赤らめながら苦笑いを浮かべる。
「まぁ、専属執事になったしある程度教養も身につけてきたサクくんはこれから私とパーティーに参加するだろうし、ここで一つちゃんと
「お願いします、お嬢!」
「うにゅ! 任せたまえ執事くん! というわけで、
~
一つ、
二つ、ゲームは主催者が招待した者及び同伴者のみ参加することができる。
三つ、主催者は必ず
四つ、ゲーム内容には必ず『勝利条件』を設けること。
五つ、主催者は必ずゲームの勝者に『褒美』を与えなければならない。
六つ、ゲームの結果は絶対遵守される。
七つ、
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