第2話

 星降祭では、今年も家にいよう。

 星を一個も拾うこともなく。

 例え星を拾ったとしても、私は空へと投げ返すのだ。


 私は出店の連なる坂道から遠ざかるように、裏道を通った。沈む気持ちで帰宅した。浮かない気持ちで歩いていると、誰かに呼び止められ後ろを振り向く。


「ねえ、君は星降祭には参加しないんだね。なんで? 多分、悲しい出来事があったんだろうけど、せっかくの星降祭なんだし。祝えるときに祝っておかないと」

 真面目そうな青年だった。

 ここは裏道で、光源は間隔を置いた電灯の明かりのみ。

 こんなところに星なんて。


 ところが、青年は両手一杯にキラキラと光る星を持っていた。


「私、帰るわ!」


 私は猛ダッシュして家路についた。


「待って!!」


 後ろから、さっきの青年からの悲痛な声が聞こえた。


 家に帰ると、うちの両親も星降祭には参加しないで、テレビを観ていた。二人とも何も言わないが、あの日から気持ちは私と同じなのだろう。


 私は二階へと上がると、ふと、窓の外を覗いた。

「君に全部あげるよ! なんだか凄く辛そうだから!」

 さっきの青年はそう叫び。はにかみんで両手一杯の星を玄関先に置いた。そして、手を振って、そのまま帰ってしまった。


 私は呆れて、物も言えない。

 明日には星降祭は終わるから、その時に空に向かって全て星を投げ返そうと思った。


 その日は、色々と憤る感情で頭が一杯だったけど、不思議とぐっすりと眠れた。


 朝の7時に目覚まし時計はセットされていた。

 けたたましいアラームの音で起き出すと、私は隣を見て驚いた。


 隣のベットに姉が眠っていたからだ。


 何年も空いたままのベッド。

 姉が死んだ日には、そのベッドの中で一日中。


「姉さん! お願い! 帰って来て!」


 と泣きながら叫んでいた日を思い出す。

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