第19話 玲華・妖精

 初めての<ベスティア>との戦いから数日後。五月六日(土)。午前十時ごろ。

「うぅん……」

 日暮蓮人は、今日は休みということもあり、ぐっすりと夢の中に入っていた。


「んー……って!あ、あんた起きるの早くない!?」

「えっ?そんなことないと思うけど……」

 ピジーが目を覚ますと、目の前には自分の顔を覗き込んでいるフェアリーが映り込んだ。

「まったく、あっちの世界と変わってないねぇ」

 クスクスと笑いながらそう言うフェアリー。

「べ、別にいいじゃん!……それで、蓮人は起きてきたの?」

「ううん、まだ寝てるよ」

「ふーん、なら添い寝してあげたらいいんじゃない?」

「はぁ!?」

 ピジーがそう言った瞬間、顔を真っ赤にして再びベッドに飛び乗り布団を被った。

「き、急に何言ってんの!?ば、バカじゃないっ!?」

「だって、いっつも蓮人のこと思ってるじゃーん?」

「ち、違う!アレは、そんなんじゃなくて……っ!」

「ふーん?」

 わたわたとしている様子が、布団越しからでも伝わってくる。その様子を楽しんでいるかのように笑みを浮かべるピジー。

「と、とにかく!その話はもうおしまいだよ!」

「あーあ、せっかく楽しもうと思ったのに」

「……いいから!」

 布団をガバッ!と取り、赤面の中話を続ける。

「そ、それより!リリーさんの安全を確かめないとでしょ?」

「あ、そうそう。忘れてた」

 ピジーはそう言ってピョンっとベッドから降りると、カーテンを開ける。

 眩しいくらいの日の光が、ピジー、フェアリーに当たる。

 少し雲はあるようだが、ほとんど快晴の天気だった。



「——ふぅ」

 ようやく起きてきた蓮人は、リビングに行くなり冷蔵庫からお茶を取り出すと、ソファに座り込みそれを飲んだ。

 数秒後。

「蓮人ー!あんた、のんきに飲んでる場合じゃないんだけどぉぉぉ!?」

「うわっ!?び、ビックリさせんなよ……」

 背後から大きな声で名前を呼ばれ、ビクリと肩を震わせた。

 そちらを見ると、そこには肩で息をしているピジーの姿が。

「ど、どうした?」

「どうしたも何も……あんた、リリーがどこにいるか知ってる?」

 こちらにずかずかと歩いてくると、そんなことを聞きにきた。

「うーん……いや、分かんないなぁ」

「……はぁ」

 蓮人がそう言うと、ピジーはガクリと肩を落とした。

「あ、でも」

 そこで、蓮人はある人物を思い出した。

「?」

 ピジーはその言葉に、顔を上げる。

「玲華だったら知ってるかも」

「玲華?誰それ」

「ああ、俺の幼馴染の立花玲華。成績優秀なうえに、容姿端麗。それに——」

「どうでもいいんだけど」

「……はい」

「で?その人だったらリリーの居場所が分かるって?」

「だと思うけど……」

 玲華とはあまり連絡は取りあっていないため、本当に知っているかどうかは分からない。

 だけど、なんとなく知ってそうな気がする。それは幼馴染だから?小さい時からの付き合いだから?……分からない。

「じゃあその人に来てもらうように連絡したら?」

「ああ、そうだね」

 ピジーに言われ、スマホの電話機能を開き、玲華に電話をかけた。



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