第9話 仲良く喋る友達 だと思う

 放課後。

「でさ、最近おいしそうな飲み物が出て……」

「えー、じゃあ今日飲みいこうよ!」

 蓮人はいつも通り、リュックサックに筆記用具などをしまっていると、玲華の楽しそうな声が耳に響いた。

「……なんだ?」

 玲華の席を見てみると、そこにはもう一人の少女が玲華と楽しそうに会話をしていた。

 ……見たことはない。恐らく、他のクラスの子だろう。

「蓮人くん、蓮人くんってば」

 そんな会話を見ていると、制服の袖がクイッと引っ張られた。

「り、リリー、どうした?」

 そちらを見ると、金髪碧眼少女、リリー・グレイが蓮人のことを見上げていた。

「この学校のこと、教えて欲しいな」

「あ、ああ。良いけど……」

 どうやら学校案内を頼もうとしていたらしい。

 女の子二人きりで学校内を歩くというのは恥ずかしいことだが……リリーがそう頼んでいることだから断るわけにはいない。

「じ、じゃあ……とりあえずいこ——」

 蓮人は決心したように、リリーの手をそっと握り立ち上がらせようと——

「あ、蓮人。今から新作のドリンク飲みに行こうと思ってたんだけど、行かなーい?リリーちゃんもどう?」

「え……ッ」

 知らぬ間に蓮人の背後には玲華が、なぜか満面の笑みで立っており、先ほどまで話していた少女も一緒だった。

 蓮人は振り返ると慌てて握っていた手を放し、少し焦りながら言葉を続ける。

「え、ええと……実はちょっと用事があってさ。だから、ごめん。今日は行けないよ」

「うん。私もちょっと用事かあって行けないかな」

「えー、残念……。あ、紹介し忘れてたけど、こっちの子は紫原澪しはらみおって言って、私の中学の時からの友達」

「はーい、紫原澪って言います。少しだけ話は聞いているよ、蓮人さんっ。以外にかっこいいじゃーん?」

「よ、余計なお世話です……っ」

 バカにしているのかなんなのかは分からないが、ちょっとイラつくような口調だった。

「ごめんね、この子ちょっと頭おバカなのー」

「だ、誰がおバカさんだって!?玲華の方がバカでしょー!?」

「ちがいますぅ、こう見えて成績は良い方ですぅー!」

「ぐぬぬ……う、運動神経なら私の方が上だもんっ!」

 なぜか小学生低学年のような喧嘩をし始めてしまった二人。

「…………」

「…………」

 そして、互いに静かに顔を見合わせる。

「……はぁ」

 この問題は二人にあるものであり、蓮人が間を割って入った所で何の意味もない。

「ふふっ……」

 蓮人の後ろでそれを静かに見ていたリリーは、少し楽し気に笑っていた。




 

 





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