第3章 第39話 〜幼神は義母さんと幼少期の頃を振り返る〜

 そして、ダンジョンから帰ってきてすっかり夜となって……グランさんやルミンやレティシアなどのみんなが寝静まったその瞬間……俺は分身に切り替えて、現実の世界に帰る。


 更に、帰ってきた途端……分身を連れてトイレに避難し、義母さんが起きる前に、分身と切りかえて……トイレから出てくる。


 その瞬間……クロが起きて、俺の元に来てスリスリしていた。


 やっぱり、気づいていたんだな。流石はクロだ……。侮れん……。


「んーー。信長くん……。起きてたのね……。」


 早朝 5時なのに、起きる義母さん。俺は言う……。


「もう少し、寝ててもいいですよ。 朝ごはんは俺が作りますし。」


 そう言うと……「ふふっ……」と笑っていた。


「…………?? 何を笑ってるんです?」


 そう言うと、義母さんは……とんでもない事を言う。


「いいえ……。幼少期の信長くんとはまるで別人ね。"異世界に行って帰ってきた"みたいだったわ。」


 その瞬間……ビクッと反応してしまった。

 バレた……か? と思った。


「まぁ、冗談よ!! ねぇ、信長くん……昔の話をしようか!!」


 冗談だったか……驚いた……。まぁ、せっかくだし、付き合ってみるか。


「いいですよ。料理しながらですけど……。」


「いいのよ、それで……。」


 そして、俺の昔の話をする義母さん。


「信長くんって……本当に幼少期から天才で……小学一年生なのに、大学の三年生までの勉強が一通りできて、ビックリしたわ。」


 そう……俺のこの世では特殊な力である所謂 「ギフテッド」と呼ぶ。その中でも俺は、勉強や武器や戦闘の知識……体の作りが一般人とはまるで異次元レベルに違っていた。俺のIQは300だ。だが……。それを俺はあまり、扱いきれてなかった。


 そう……IQ300なのだが、デメリットはある。それは過集中型のIQ300だからだ。好きな事だけは発揮し、嫌いなものはIQが0か1になる。そんなデメリットだった。勿論、嫌いなものでも勉強はしっかりと受け、ずっと100点を叩き出したことはある。IQが0にも関わらず……だ。つまり、集中は出来なくても体が覚えている。そんなようなもんだ。


 それのせいで、父や義兄、義妹、学生の時の友達からも避けられて生きてきた。


 それを義母さんは心を痛めながらも生きてきた。

 だって、実の息子や娘が気に入った義理の息子を拒絶しているのだ。そういう反応になってもおかしくは無い……。


「そして、信長くんはそれに嫌気をさして……VRMMOに走ってのめり込んだ矢先に……デスゲームに入っちゃったの覚えてる?」


「はい……覚えてますよ……。」


 そう、高校生時代に俺はデスゲーム事件に携わった側に入る。……と言うより、俺はデスゲームの被害者だった。


 そのゲームの名は……「Project Fantasia Online」 通称 PFOだ。


 その世界はオープンワールドでファンタジー型のダンジョン探索オンラインRPGだった。


 その世界は、運営の設定ミスとバグにより……ログアウトが出来ず、死ねばリアルの世界でも死ぬ……そんな世界に10万人と言う規模の犠牲者が出た。


 その中で生き残ったのは……たったの4万人。

 ━━━━━━つまり、6万人が亡くなっていた。

 その世界に入った途端……俺と言う人格が壊れた。戦闘狂となってしまった。軽い戦闘なら血が騒がないのだが……。死に関連する戦闘となると……かけ狂うような口調、笑い方、戦い方、人格となる……。まるで、俺が二人居るような……例えで言うならば、正しく"二重人格"みたいな感覚に陥る。


 その二重人格とギフテッドのお陰で……ラスボスをクリアし、リアルの世界に生還したのが……約5年という年月が経過した……正しく、今日の日付 12月14日と言う日だった。


 その後のリハビリとかが大変だったのを覚えていた。


 まぁ、転生後もVRMMOの時の俺が何度か出てきていたことは覚えている……。


「ねぇ……信長くん……。」


 料理している俺の背中に義母さんは……ギュッと抱きしめながら言う。


「お願い……私から、離れないで……。私を1人にしないで……。」


 そう言われた俺は……複雑な感情を隠しながら……そっと、黙って頷くのだった……。

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